バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト #3

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:南東の洋上には、闇社会の人間からセッタイ・アイズルと称される島がある。廃墟の中に聳え立つネオヘレニズム建築の宮殿は、闇取引、闇ケジメの舞台、かつ、退廃的な性快楽の殿堂でもあった。宮殿の主の名はガンダルヴァ。欲望達成に手段を選ばぬ邪悪なニンジャであり、無限性欲の徒だ)

2013-01-07 22:06:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(今、この危険な陰謀の地に、闇カネモチのカラテ代理戦士として雇われ、入島した者あり。片腕のボンジャン・テンプル修行僧にして、ニンジャ……アコライトである。彼の目的は、テンプルのそばの村に暮らしていた村娘を、この邪悪な島から救い出す事であった。)

2013-01-07 22:19:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(この島では闇取引、性接待とあわせ、闇カネモチの威信をかけた代理カラテ・エキジビションが開かれる。アコライトは自らのカラテの非凡をジバヌチ老人に示し、入島権を掴み取った。その美貌がゆえに家族を惨殺され、この地に拉致された村娘キナコを、なんとしてもジゴクから救い出さねばならぬ)

2013-01-07 22:31:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(アコライトには懸念がある。失われた左腕ではない。弟子達に身柄を任せ残して来た、アンタッチャブル凶悪ニンジャ、デスドレインだ。神秘の山ハンセイボウ・マウンテンに封じられてなお危険なデスドレインの邪悪言動は彼を深く傷つけ、毒す。一心にトレーニングに打ち込む彼を、オイランが訪れる)

2013-01-07 22:41:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「……」再びドアがノックされた。アコライトは目を閉じ、深呼吸し、目を開いた。「ドーゾ」ドアが開き、アナスタシアがしめやかに入室した。◆

2013-01-07 22:45:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「先程はドーモ」「ご用件は何ですか」アコライトは穏やかに尋ねた。当然、彼が呼んだものではない。アナスタシアは短く笑うと、片膝をついた。白く艶かしい太腿がのぞく。「さあ、なにかしら」 1

2013-01-07 22:47:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何かの手違いでは?」アコライトは困ったように笑った。「お引き取りいただくしか……」「でも、ジバヌチ=サンが私を手配したのよ。私を追い返せば、彼の名誉が貶められてしまいます」コーカソイド美女は面白そうに言った。「ダメよ」「ジバヌチ=サンが?」「そう」 2

2013-01-07 22:52:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコライトは肩を竦めた。「どういうおつもりなのか」「ウブなボンズ様に、見識を広めていただきたいのじゃなくって?」「からかいが過ぎますね、あの方は」「……」アナスタシアはアコライトの目をじっと見た。ボンズは観念し、彼女を招き入れた。「では、チャを淹れましょう」 3

2013-01-07 23:01:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴方がやるんじゃ立場が逆よ」アナスタシアはアコライトを遮り、手際良くチャを淹れた。二人は窓際のタタミ上で正座で向かい合った。この部屋からは海が良く見える。「このままこうして、申し付けられた時間が来たらお帰りなさい」アコライトは言った。「それでジバヌチ=サンも納得するでしょう」4

2013-01-07 23:10:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それじゃジバヌチ=サンには、ここで何があったか、有る事無い事言ってもいい?」「……」アコライトは苦笑した。アナスタシアは言った。「私も貴方には興味があったの。なぜカラテ・エキジビションに?ボンズ様」「……カネです。テンプルの運営資金を稼ぎます。勝っても負けてもギャラは出ます」5

2013-01-07 23:18:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「負けても?」アナスタシアは眉根を寄せた。「生命保険でもかけているの?」「そういう事ですか」アコライトは合点した。「とにかく、勝ちますよ」「ねえ」アナスタシアは身を乗り出し、アコライトの左肩に触れた。カフタン装束の袖が垂れている。「これで、雇われた……余程の使い手なのね?」 6

2013-01-07 23:31:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「貴方がどこまでやれるか、個人的にも楽しみにするわ。貴方、きっとすごく浮くと思う。チャンピオン達の中で」「私自身そう思います」「カネのため……ね」アナスタシアは微笑した。「そういう事にしておきましょう。この島には色んな人が来るわ。色んな事情をもって」「そうでしょうね」7

2013-01-07 23:46:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か訊きたい事はある?」不意にアナスタシアが言った。アコライトは少しのあいだ沈思黙考し、やがて訊いた。「貴方がたはこの宮殿内で日頃から暮らしておられるのですか」「ええ」アナスタシアは頷いた。「まさか廃墟に寝泊まりって事は無いわ。ガンダルヴァ=サンのハレムがある。オオクがね」 8

2013-01-07 23:57:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オオク」アコライトの表情が一瞬、険しさを帯びた。「貴方はどのようにしてこの島へ?」「私?」アナスタシアは答えた「彼はオオクの女達を、権力と暴力で集める。私もその一人、でも……彼から信頼を得ている……だから多少の自由が与えられている。大抵は……そうね……貴金属のように扱われる」9

2013-01-08 00:22:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼女は続けた。「貴金属には貴金属の喜びがあるのかもしれない。心を捨てれば、幸せになれる。そう思わされる。あるいは、そう思おうとする」「……」「でも、心を捨てる事ができる人間なんて、本当にいるのかしらね」アナスタシアはアコライトの目を覗き込んだ。彼女の心中は測り難い。 10

2013-01-08 00:44:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……貴方はエキジビションの初日を勝たないといけないわ。まずは、勝つこと」アナスタシアは言った。アコライトは頷いた。「ええ。当然その為に来たのです」「私に見せてね。貴方の強さを」「……ええ」アコライトは困惑に眉根を寄せながら、再度頷いた。アナスタシアの表情には切実さがあった。11

2013-01-08 00:53:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エーラッシェー!」威勢良いスシ・ワードが飛び交い、円形カウンターを囲む闇カネモチ達の皿の上に、イタマエの手から放たれて宙を飛んだオーガニック・スシがリズミカルに着地してゆく。演台の上では大蛇や蛸と絡むオイラン男女の淫靡なパフォーマンスが行われ、オコト生演奏の調べも卑猥だ。 13

2013-01-08 10:37:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

既に闇カネモチ達はあらかた入島を終え、この歓迎セレモニーの夕べにこぞって参加している。弁護士じみた小儀礼な身なりの男から、刀傷まみれで眼帯をした凄まじい醜貌の者、あるいは眼力だけで気の弱い者を殺せるであろう女オヤブン、あるいは枯れ木めいた老人……悪人の顔ぶれは多彩であった。 14

2013-01-08 10:42:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「えらくキョロキョロしておるな。興味津々か?ボンズ殿」ジバヌチがアコライトに声をかけた。テーブル横を通り過ぎるオイランに盃を差し出し、酌をさせた。貫頭衣じみた給仕オイランの衣装は横からみればほぼ裸と言ってよい。「ときに、セッタイはお気に召したか?どうだった?エエッ?」 15

2013-01-08 11:04:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おかげさまで楽しい時を過ごしました」アコライトはジバヌチを見た。ジバヌチは笑った。「ハッ!その様子じゃあ、相変わらず潔癖ぶったのだろ!」「実際、気が紛れました」アコライトの偽らざる心境であった。「……まあ良いわい」ジバヌチは鼻を鳴らし、盃を一息に飲み干した。 16

2013-01-08 11:08:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヨォー!」「イヨォ!」ドンコドンコドンドン……タイキスト(タイコ演奏者)達が口々に鬨の声をあげ、力強いビートを打ち鳴らす。闇カネモチ達は談笑を止め、注目した。そして銅鑼が鳴らされた。ドジャーン! 17

2013-01-08 11:16:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

奥のベールをくぐって現れ、登壇したのは、金糸と蒼石で飾り立てたニンジャ装束に身を包んだニンジャであった。闇カネモチ達は拍手で彼を迎えた。中には突然泣き出した者もいる。「御太師様!」「慈愛者様!」ジバヌチの説明が思い起こされる。闇カネモチ達の中にも少なからず信者がいるのだ。18

2013-01-08 11:27:55
1 ・・ 4 次へ