オレゴン大学の実験からみる井庭研

大学の卒業研究に直結してくる所なのでまとめました。完全に自分用です。
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井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

アレグザンダーの『オレゴン大学の実験』には、「マスタープラン」に代わる「診断」の原理が論じられている。昨年から井庭研で取り組み始めた診断システムとの関係を考えてみたい。

2013-01-09 21:44:13
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

何かをつくるとき、マスタープラン、つまり基本計画をつくるのが一般的だが、そのようなマスタープランでは、ひとつの「全体」というものを創造できない、とアレグザンダーは言う。部分を集めた総体性(totality)を生み出すことはできても、全体性(whole)は創造できないという。

2013-01-09 21:49:36
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

全体性は有機的秩序としてのみ形成可能であり、有機的秩序は漸進的成長によって生み出される。アレグザンダーは有機的秩序を「部分の要求と全体の要求との間に完璧なる均衡が存在する場合に達成されるような秩序である」、漸進的成長とは「ごく小さな歩調で前進していくような成長」であると定義する。

2013-01-09 21:54:46
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

同書でアレグザンダーは「有機的秩序の原理」を提案する。「計画と施工は、全体を個別的な行為から徐々に生み出してゆくようなプロセスによって誘導されること。この目的を満たすため、コミュニティはいかなる形式の物理的マスタープランも採用しないこと。・・・」

2013-01-09 21:58:22
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

マスタープランのかわりに、「固定された未来のマップからではなく共有のパターン・ランゲージからコミュニティがその秩序を得ることを可能にする」プロセスを採用することを提案する。

2013-01-09 21:59:55
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

漸進的成長のプロセスにおいては、パターン・ランゲージが「設計を指導していく」。パターンとは、「その環境に繰り返し出現する可能性のある課題を表し、この課題の出現する背後の状況を記し、さらにこの課題を解決するのに必要なすべての建設や計画の一般的特質を提供するものである」とされる。

2013-01-09 22:02:53
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

アレグザンダーが提案するのは「自然界で解決される方法ときわめて類似した方法で課題を解決してゆく」方法である。つまり「有機体が統一的な全体を創造するため、漸進的プロセスをうまく導いてゆく」方法を採用しようというのだ。

2013-01-09 22:08:11
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

その方法というのが、「診断と部分的な治癒というプロセスで解決が施される」ということなのだ。「有機体は、その生命の始源から、一貫して自らの内的状態を監視し続けている」のであり、自らを「診断」し続けているということになる。

2013-01-09 22:10:25
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

そして、「その診断に応じて、有機体は、このような状態を治癒するための成長のプロセスを動かし始める」のだ。この診断と成長は、初期の形成段階でも、成熟した後の維持においても言うことができる。それが「診断」と「治癒」(補修)のプロセスだ。

2013-01-09 22:12:43
古川園 智樹(ふるかわぞの ともき) @zono_ilab

井庭先生が説明している部分は、非常に重要。 RT @takashiiba: アレグザンダーの『オレゴン大学の実験』には、「マスタープラン」に代わる「診断」の原理が論じられている。昨年から井庭研で取り組み始めた診断システムとの関係を考えてみたい。

2013-01-09 22:14:11
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

アレグザンダーの提案は、この診断と修復をパターン・ランゲージを用いて行なうということだ。対象を「パターンごとに診断することが可能となる」のである。そして、対象における「そのパターンの健康状態」を表すマップを描くことができるという。

2013-01-09 22:16:11
taichi.isaku @Fuzz139

ちょうど今朝読んだ本のまとめを先生がつぶやいてくれている。診断システムとのつながりが見えそうでまだ見えていないから色々と整理できて助かります。 (クリストファー・アレグザンダー『オレゴン大学の実験』)

2013-01-09 22:19:18
taichi.isaku @Fuzz139

不思議なのはアレグザンダーの使う表現が、日本語版のほうがしっくり来る部分が多いこと。

2013-01-09 22:20:26
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

ひとつのパターンによる診断結果をまとめた「パターン・マップ」をまとめた「合成マップ」(composite map)をつくれば、「有機体における監視プロセスと同じく、この合成マップで環境の成長と補修を誘導することができる」のである。

2013-01-09 22:21:05
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

「合成マップは、どこが比較的健康な状態であるか教えてくれる」とともに、「どの場所が簡単な修正を必要としているのか教える」。ほかにも「どこでパターンが新たに必要とされているか」も教えてくれる。つまり、生成的(generative)なのである。

2013-01-09 22:23:18
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

この診断マップはマスタープランとは異なる。「マスタープランは未来において何が正しいかを示すが、診断はいま現在において何が誤っているのかを示す」。つまり、マスタープランでは現在・現状が描かれず、ある目指すべき方向性が、いわば外から示されるのであるが、診断マップは現状を基点とする。

2013-01-09 22:25:59
Koji Yamazaki @kojipole

@takashiiba この合成マップの話が伊庭研的パターンと合致していない所が今の悩みです。起点が減税という所はまさになのですが。。。

2013-01-09 22:28:01
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

そのため、どのように治癒・修復するのかは、自分で考えていく必要があるのであり、つまりは、自由に創造する余地があるということである。診断マップは「人びとの想像力に刺激を与え、現在の細部の欠陥をすべて修復するように物事を変えてゆく方法を発明するようにと、人びとに挑んでくる」のだ。

2013-01-09 22:28:47
古川園 智樹(ふるかわぞの ともき) @zono_ilab

アレグザンダーの考えていることは、建築を例に出している。したがって、別の分野での応用を考えている場合は、まずアレグザンダーの考えをパラフレーズするのがいいのだろう。

2013-01-09 22:29:24
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

さて、ここからアレグザンダーの本から少し離れて、井庭研で昨年から取り組み始めた診断システムの話との関係を考えてみたい。昨年11月のORF(オープン・リサーチ・フォーラム)で、Generative Beauty Patternsを用いた診断システムの展示を行った。

2013-01-09 22:31:05
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

まず、そもそもなぜ、Generative Beauty Patternsという「いきいきと美しく生きる」ためのパターン・ランゲージなるものをつくったのかという話から始めよう。それは、どこかから調達したマスタープランでは「いきいきと美しく生きる」ことは実現できないと考えるからだ。

2013-01-09 22:33:09
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

「いきいきと美しく生きる」ということの全体性は、有機的秩序としてのみ形成可能であり、それは漸進的成長によって生み出される。つまり、どんなテクニックや方法も、いまの自分に合わないのであれば、全体性の成長には寄与しない。そうではなく、いまの自分を基点としなければならない。

2013-01-09 22:36:31
井庭 崇(いば たかし) @takashiiba

その漸進的成長による有機的秩序の実現のために、「理想的にはこうあるべき」という "固定された未来のマップからではなくパターン・ランゲージから自分でその秩序を得る" プロセスを支援する。これが、Generative Beauty Patternsが行なおうとしていること。

2013-01-09 22:38:53