青いひと=病理医ヤンデル(Dr_yandel)さんの真面目な「診断学」

(っ'ャ'c) フォローはしてません、すみません(だってTLが真っ青になるんですもん)
43
病理医ヤンデル @Dr_yandel

切り出しとは、手術で採った臓器(胃、大腸、肝臓、甲状腺、乳腺、膵臓、子宮、膀胱などなんでも)を肉眼観察し、病変部位を見つけてその性状を記録し、さらに適切な場所を選んで専用のトリミングナイフで「切って」、プレパラート作成部位を決定する作業のことです。病理の要です。

2013-01-11 13:41:40
病理医ヤンデル @Dr_yandel

病理診断は「病気の細胞を顕微鏡で診て診断をつける」ことばかりがクローズアップされがちですが、実際には採ってきた臓器をじっくりと肉眼観察し、手術前におなかの外から見ていた時のCT, MRI, エコー、内視鏡像などとの整合性を評価する意味でこの肉眼診断は非常に大切です。

2013-01-11 13:42:58
病理医ヤンデル @Dr_yandel

さらに、肉眼診断の段階で見逃された病変については「プレパラートを作る事ができない」わけですから、病理学的な肉眼診断はかなり重要な作業です。手袋とマスクをつけ、ホルマリン換気をした専用の部屋でがっちり作業しますので、さすがのヤンデルも切り出し中にはツイートできません。(糸冬)

2013-01-11 13:44:12

ふーんと見てたら、突然講義開始。。。

病理医ヤンデル @Dr_yandel

患者さんがお医者さんに望むことってのは「病気を治療してくれ」なのね。だから、多くの医者の卵たちも、入学時には「一人でも多くの患者さんを治す」的なことを言ってるわけ。

2013-01-11 14:08:18
病理医ヤンデル @Dr_yandel

それはそれでいいんだけど、医者の仕事は(もちろん科によるが)半分以上は「診断」に費やされるんですわ。「治療」する前の段階がすごく長い。

2013-01-11 14:08:55
病理医ヤンデル @Dr_yandel

たとえば、胃に悪いものができたとしましょう。胃カメラを口から突っ込んでいって見える「悪そうなもの」ってのは、氷山の一角に過ぎません。だって、悪いものってのはとにかく、「どんどん体内に侵入していく」傾向を持つからね。表面に見えている部分よりも、見えない潜っている部分が問題なの。

2013-01-11 14:09:54
病理医ヤンデル @Dr_yandel

じゃあそれを適切に「診断」するというのはどういうことか。ここで、「理想の診断学」の話をお教えしましょう。生きてる患者さんにザ・ワールド!とやって、時間をとめてばらばらにして、病気をまじまじと見て、体内に戻してすべて元通りにして、「そして時は動き出す」とやればいい。

2013-01-11 14:10:56
病理医ヤンデル @Dr_yandel

そう、理想の診断学というのは、「直接手にとって見て調べる」ことなんです。でも、これって「治療前」にやるのは大変難しい。というか、「採ったらそれもう治療じゃん!採らずに見るってどうやるの!」の世界。

2013-01-11 14:11:47
病理医ヤンデル @Dr_yandel

では、「適切な治療を選択するために、なるべく患者さんに負担をかけないで、病気を見通して診断をキメる」にはいったいどうすればいいのか。それは一言で言うと、「氷山の一角を見て氷山全体を類推する」という理論を使うということになります。

2013-01-11 14:12:43

流石のたとえ話(をい

病理医ヤンデル @Dr_yandel

たとえばね。タオルケットの下に全裸の美女があおむけで、あたままですっぽり入っているとするでしょう。すると、表面からそれを見たときに、なだらかな盛り上がり、やわらかい曲線、ちょっと押してみるとあふんって言う、など、別にタオルケットとらなくても「あっ女だ!女がおる!」ってわかる。

2013-01-11 14:13:57
病理医ヤンデル @Dr_yandel

で、タオルケットの下に、女装した照英みたいなのがはいっているとしますよ。確かに盛り上がりはあるんだけどいまいちごつごつしている。表面から見てもなんだか妙にボリュームがある。押してみると「アッ」とか言ってる。これは女じゃない、照英だ、となります。

2013-01-11 14:14:49

…戻ってきた。

病理医ヤンデル @Dr_yandel

これらの「感覚的な予測」を、しっかりとした統計とストーリーのある類推論理で説明できるようになる、というのが「診断学を学ぶ」ということです。これは、癌などの「カタマリ系の病気」に限らない。限られた情報から適切な診断にたどり着くというのは、「ドクターG」でも有名ですよね。

2013-01-11 14:16:05
病理医ヤンデル @Dr_yandel

本日は「氷山の一角を見ることで病変の全体を予測する世界」についてお話ししております。これは診断学の基本の一つなんですね。多くの医者が日常どこかでやっていることです。また、多くの診療放射線技師やエコー技師なども同じ事をやっております。

2013-01-11 14:17:26
病理医ヤンデル @Dr_yandel

医者は多かれ少なかれ、この「診断学」をある程度習熟しています。では病理医はどうか。病理医は、その仕事の95%以上を「形態診断学」という診断学の王道に費やす、診断学専門家。形態診断オタクであります。この世界は本当におもしろくて、奥が深くて、そしてきりがない。

2013-01-11 14:18:36
病理医ヤンデル @Dr_yandel

だから、病理医は、治療をしない……というか、できないのですよ。形態診断学の最後の砦である病理医は、ほぼ全ての臓器の摘出検体に対して診断学を適応する勉強と実践をしなければいけない。さすがに外来や病棟管理、治療学まで実施できる人は少ないのですね。本日のお話は以上です。(糸冬)

2013-01-11 14:19:32

おわーらないぃー♪

病理医ヤンデル @Dr_yandel

先ほどの「布団の中にいるのは篠崎愛か照英か」という話ですが、これは病理でよく見る「カタマリ系の病気(固形腫瘍)」だけに適応できるわけではありません。たとえば、「胸痛、発汗、振戦」と言った「症状」。これは氷山の一角に相当するものと考えられます。

2013-01-11 14:29:41
病理医ヤンデル @Dr_yandel

「今までに経験した事のないような頭痛で病院に来た患者さん」に、医者が「今までで一番強い頭痛薬をあげるよ!」とやったらこれはもうどうしようもないわけです。

2013-01-11 14:30:44
病理医ヤンデル @Dr_yandel

患者さんに潜む病気の「氷山の一角」であるところの「頭痛」が、どのような頭痛なのかを評価し、血液生化学所見や理学所見などと併せて、たとえばこの症状は「くも膜下出血」という血管破綻性の病気によるものであると「診断」する。これもまた「布団の上から照英を見抜く」ことと似ています。

2013-01-11 14:31:26
病理医ヤンデル @Dr_yandel

診断学のうち、医の王道とされる「内科」系の診断は、実は病理とは少し離れたところにあります。高血圧、糖尿病、高脂血症などのメタボリックがらみは、診断に病理検体を必要としませんのでね。これが、「医学生が診断学と言われてもすぐには病理を思いつかない」理由です。

2013-01-11 14:32:41
病理医ヤンデル @Dr_yandel

この先を語ることで「病理を宣伝」することも可能なのですが、本日は「診断学は氷山の一角である」あるいは「照英と篠崎愛の区別もつかないやつは医者をやる資格がない」ということだけをお伝えしたいのでこの辺で失礼いたします。(糸冬)

2013-01-11 14:33:30