西住殿の戦車講話#5 「装甲と砲弾の歴史Ⅲ」

西住殿による装甲と砲弾の歴史第三回。 今回は徹甲弾の歴史であります。 大戦後からの火力インフレといいますか、貫通力の急激な向上は恐ろしいですよね…
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西住みほ @Miho_Nishizumi

徹甲弾の歴史いってみようかな……

2013-01-11 21:45:12
西住みほ @Miho_Nishizumi

装甲と砲弾の歴史その3。徹甲弾の歴史です。

2013-01-11 21:54:20
西住みほ @Miho_Nishizumi

例によって大したことはつぶやかないので過度な期待はしないでくださいね。

2013-01-11 21:54:40
西住みほ @Miho_Nishizumi

徹甲弾とは、砲弾の運動エネルギーにより装甲を貫徹することを目的とした砲弾です。大きな質量の金属でできた砲弾を高速で飛ばすことで砲弾に大きな運動エネルギーを与え、これによって装甲を変形・破壊・貫徹させます。

2013-01-11 21:55:37
西住みほ @Miho_Nishizumi

ごく初期の徹甲弾は単なる先細りの金属の塊でした。このようなタイプの徹甲弾をAP弾(Armor Piercing)と呼びます。AP弾には装甲との衝突で変形しないよう、硬度の高い鋼鉄が使用されていました

2013-01-11 21:56:44
西住みほ @Miho_Nishizumi

AP弾にはごく少量の炸薬を内蔵したものも存在します。

2013-01-11 21:57:35
西住みほ @Miho_Nishizumi

AP弾は金属の塊を高速で叩きつけ、その運動エネルギーで装甲を破壊するものでしたが、表面硬化処理をした装甲が登場すると、正面から当たったときには弾体が破損・変形し、浅い角度で命中すると滑って跳弾を起こすという問題が発生しました。

2013-01-11 21:58:33
西住みほ @Miho_Nishizumi

これに対応するためにAP弾の先端に柔らかい鋼鉄のキャップ(被帽)をかぶせ、着弾時にこの被帽が装甲に貼り付くようにした徹甲弾が開発されました。これをAPC弾(Armor Piercing Capped 被帽付徹甲弾)と呼びます。

2013-01-11 21:59:49
西住みほ @Miho_Nishizumi

AP弾やAPC弾は、その形状から空気抵抗が大きく、遠距離の射撃では砲弾の速度が下がり、結果として貫徹能力が下がります。その対策として、AP弾やAPC弾に空気抵抗を減らすためのキャップ(被帽)をかぶせた砲弾が開発されました。

2013-01-11 22:01:24
西住みほ @Miho_Nishizumi

AP弾に空気抵抗を減らすための被帽をつけたものをAPBC弾(Armor Piercing Ballistic Capped)APC弾に被帽をかぶせた物をAPCBC弾(Armor Piercing Capped Ballistic Capped 低抵抗被帽付徹甲弾)と呼びます。

2013-01-11 22:03:30
西住みほ @Miho_Nishizumi

さて、ここまで出てきた徹甲弾は、装甲を運動エネルギーで貫徹することを目的に開発され、主砲の口径と弾丸の直径が同じです。76mmの徹甲弾なら砲弾の直径も76mm。ですが、ここからすこし話が変わってきます。

2013-01-11 22:05:20
西住みほ @Miho_Nishizumi

砲弾の浸徹理論上、同じ運動エネルギーを持った砲弾は、その直径が小さいほど装甲の抵抗が少なくなり、浸徹する長さは長くなります。つまり、同じ質量と速度を持つ砲弾ならば、砲弾の直径を小さく、長さを長く取れば、浸徹する長さを大きくできることになります。

2013-01-11 22:06:52
西住みほ @Miho_Nishizumi

砲弾の直径Dに対する砲弾の長さLの比をL/D比と呼びます。同じ運動エネルギーを持った砲弾なら、このL/D比が大きくなればなるほど装甲を浸徹する能力が高くなるのです。

2013-01-11 22:09:44
西住みほ @Miho_Nishizumi

ただし、L/D比が6を超えると弾丸の飛翔中の安定性が悪くなります。さらに、砲弾を長くすればそれだけ質量が大きくなり、初速をあげることが困難になります。この問題を解決するために開発されたのが硬弾芯徹甲弾(APCR Armor Piercing Composite Rigid)です。

2013-01-11 22:12:11
夕凪㌠ @Yuunagi_DAMEYA

@Miho_Nishizumi 同じ力で突つくなら鉛筆の尻の方で突つくよりも尖った先で突つく方が痛いのと一緒ですね。

2013-01-11 22:14:17
西住みほ @Miho_Nishizumi

硬弾芯徹甲弾は、重金属(タングステンカーバイトなど)で作ったL/D比の大きな弾芯の外側を、比重の軽い軽合金の外殻で覆ったものです。これにより、砲弾の初速は維持しつつ、弾芯のL/D比を大きく取ルことが出来るようになりました。これにより、装甲の浸徹力が上がりました。

2013-01-11 22:15:23
西住みほ @Miho_Nishizumi

硬弾芯徹甲弾はアメリカでは高速徹甲弾(HVAP Hyper Velocity Armor Piercing)と呼ばれていました。

2013-01-11 22:16:49
西住みほ @Miho_Nishizumi

L/D比を大きく取るためのもう一つの方法は、弾体(弾芯)に装弾筒(Sabot)を取り付ける方法です。これをAPDS(Armor Piercing Discaeding Sabot)と呼びます。

2013-01-11 22:19:04
西住みほ @Miho_Nishizumi

APDSの考え方は硬弾芯徹甲弾と同様のコンセプトなのですが、弾芯の周囲に空気抵抗で分離する装弾筒をつけることで初速をあげるという考えでした。ただし、L/D比が大きくなると飛翔中の安定性が悪くなるため、L/D比は最大6程度でした。

2013-01-11 22:21:12
西住みほ @Miho_Nishizumi

@Type00R 文献によってHighとHyperの両方が見られるようです。

2013-01-11 22:22:08
西住みほ @Miho_Nishizumi

L/D比をあげてやれば、装甲に命中したときに弾体が破壊されてしまわない限り、装甲浸徹能力が上がります。ですが、通常の砲のようにライフリングによって砲弾を回転させて安定させる方法では、L/D比が6を超えると安定性が逆に悪くなります。

2013-01-11 22:24:26
西住みほ @Miho_Nishizumi

そこで考えられたのがAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)です。タングステンや劣化ウランなどの重金属製の弾芯に、空気抵抗によって外れる装弾筒をつけているところまではAPDSと同様ですが、決定的に違うところがあります。L/D比の大きさです。

2013-01-11 22:26:40
西住みほ @Miho_Nishizumi

APFSDSの弾芯のL/D比は、大きい物では30近いものがあります。L/D比6以上では安定性が良くないはずですよね? それを解決するためにとった方法が「弾芯をダーツの矢のような形にして、尾部に安定用の翼をつける」というものでした。ライフリングによる回転を捨てたのです。

2013-01-11 22:28:31