一ノ瀬正樹さんの『放射能問題に立ち向かう哲学』

Hideyuki Hirakawaさん@hirakawah のツイートをまとめました。
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Hideyuki Hirakawa @hirakawah

一ノ瀬正樹さんの『放射能問題に立ち向かう哲学』 http://t.co/aNgOE7UN が届いてたので、ざっと目を通してみた。問題の考え方として、「それだ!」とひざを叩く指摘が数多い。

2013-01-25 00:05:17
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)たとえば放射能リスクの問題を「不の感覚(不条理、不快、不安、不信)」と「リスクの客観的評価」の対立として捉えるあたりは、おいらの「不安の背後の四つの不(不確実性、不可逆性、不信、不満)」ともつながる話。とくに「不条理感」を挙げてるところは実に的確だと思う。

2013-01-25 00:05:48
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ちなみに共著本の『リスクコミュニケーション論』http://t.co/0tifeFnz では、4つではなく不確実性・不信・不満の「3つの不」にしていたが、その後「被害の取り返しのつかなさ」も大きいなということで4つにしたのだった。今後は不条理も入れて5つにしようかと思う。

2013-01-25 00:06:11
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)それから終わりの方で「矛盾の実在」という観念を打ち出しているのも「なるほど!」と思ったところ。これは低線量被曝のリスクは危険だということも安全だということも、互いに矛盾しつつも双方が正しく、互いを「間違い」と攻めあっても詮無いという事態を表わすもの。

2013-01-25 00:07:24
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ちなみに自分は、一ノ瀬さんが矛盾の実在と言い表している危険/安全の両立と不可相互否定性のことは、別の見方で考えている。

2013-01-25 00:07:42
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ポイントは危険/安全、リスクを受忍するか否かの判断は、非常に文脈依存的で多次元的な総合判断であり、しかも複数あ判断基準(ものさし)のセットは人によっても異なるがゆえに、個々の判断の是非を普遍的に裁定する視座はないという見方である。

2013-01-25 00:07:51
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)つまり疾病発生確率という科学的リスクの評価は(生物学的な個体差の範囲内で)誰にでも普遍的に成り立つとしても、危険/安全の判断は、たとえば移住/居住の両面それぞれの身体的・精神的・経済的・その他生活上のメリットとデメリット比較考量や諦念、割り切りなど、複合的なものだということ。

2013-01-25 00:08:14
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そして、それぞれの観点(次元)での判断も、人や状況によってまちまちであり、正否や優劣を、個々の状況から離れて普遍的に裁定することはできない(程度の問題としてある程度はできるかもしれなくても)。正しさや優劣の基準自体が異なっている。

2013-01-25 00:08:22
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そもそも低線量被ばくのリスクは確率的であり、どの判断をしても当たり外れがあるし、それを予め予測することもできない。危険/安全、移住/居住の判断は、しばしばそういう不確実性・不可予測性まで呑みこんだうえでの結論となる。

2013-01-25 00:08:29
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)そんなわけで危険/安全の判断は、いわば異なるパラダイムor公理系での共役不可能な判断であり、両者間にあるべきは、普遍的・一般的な正否の決着ではなく、どちらもそれぞれの状況で当事者が考え抜き納得できた結論であるなら、それぞれに正しいものとして尊重しあう寛容さだということになる。

2013-01-25 00:09:34
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)まぁ、結局は同じこと言ってるようなもんなのだけど、一ノ瀬さんの「矛盾の実在」を自分だったらどう考えるかと思った次第。細かく見ると社会的リスク論の観点からはツッコみたくなる点も散見されるのだが、改めてじっくり読みたい一冊。特に道徳的ディレンマの議論は深く吟味したい問題提起。

2013-01-25 00:13:27
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)ちなみに一ノ瀬さんの論のツッコミどころとして気になったことの一つは、移住と居住の選択をめぐる非対称性(移住・避難に対する公的支援が少ない)と、それに伴う当事者のストレス等の問題が抜け落ちていること。まぁ、まだ目を通してないところでは論じてるのかもしれんが。

2013-01-25 00:26:22
Hideyuki Hirakawa @hirakawah

続)たとえば176頁で避難した人としなかつた人とで死亡者数の比較調査(コホート研究)をしてみれば、というくだりで「避難するかしないかの自律性はほぼ完ぺきに確保されている」から「人体実験」には当たらないと書いているのだけど、現実、選択の自律性、実現されてるとは言えないと思うんだが。

2013-01-25 00:29:33