こがばあ様81歳ツイート「戦争体験part3~喪失」

我慢の日々が全く虚しいものであったと知ったとき、すぐに希望が湧くだろうか・・・渾身の戦争体験part3!
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こがばあ @kosato80

戦争のことを書き終わらなくては認知症になるわけにもゆかぬ、と、風邪頭でぼーっと、いや真剣に考えているうちに年末に書いた二回目から大分たった。三回目を書き始めます。今回は【喪失】をテーマにします。

2013-02-12 16:14:53
こがばあ @kosato80

【喪失】①戦争で得るもの、喪失感。自分は命があるのでこのようにして書いていられる。しかし、膨大な数の死者は、命を捨てて何を得られたのだろうか。「お国のために」という枕詞はつくものの、それは生きている者が、生きている自分の疚しさを覆うことができないから。その位惜しい命が失われた。

2013-02-12 16:23:02
こがばあ @kosato80

【喪失】②喪失は命だけではない。生き延びるためには人格・良心などどこへやら。大人の世界でも預けた品物をめぐって、減っているいやそんなことはない、の争いを見聞きした。私自身配給の卵を一個盗み食いして叱られ祖父のせいにしたり疎開先で隣家の庭先に干してある梅干を掠めたことも。

2013-02-12 16:37:42
こがばあ @kosato80

【喪失】③物資が無くなりかけた頃、小学校で鉱物の標本やゴム鞠などが各クラスに数個ずつ配られその度に籤引をした。ゴム鞠が一個行方不明。皆が机やランドセルの中を調べあった。隠していた子を誰も非難もいじめもしなかった。子どもなりに自分だったかも、と思えたのだ。でもその子は後に自殺した

2013-02-12 16:51:31
こがばあ @kosato80

【喪失】④近所づきあいの気持も歪められていった。監視する側される側が事と次第で入れ替わり、落ち着いていられない雰囲気が子どもにも伝わった。「贅沢は敵だ」の標語のもと奥さんたちの着物が地味になっていった。隣組の班長の注意を避けて。闇物資が手に入っても従来のようにおすそ分け等なし。

2013-02-12 17:00:23
こがばあ @kosato80

【喪失】⑤隣組には婦人会から色々指令が下る。隣町?の立て込んでいる家を壊しに行けなど。焼夷弾による延焼を防ぐための間引き作業。本当に空襲が激しくなって分かるのだが焼夷弾は舐めるようにある物すべてを焼き尽くすので実際は何の役にも立たなかった。がそれでどれほど多くの家が失われたか。

2013-02-12 17:09:57
こがばあ @kosato80

【喪失】⑥私の生家は壊されなかったが4月13日の大空襲で焼けた。終戦後一人で行ってみたら柱時計の文字盤が転がっていてゼンマイがゆるんでいた。父の一万冊くらいの蔵書、祖母の茶道具、母の着物…勿論すべて灰。土地は借地だったので契約更新成らず手放し当座の食糧と消えた。長い戦後の始まり

2013-02-12 17:21:17
こがばあ @kosato80

【喪失】⑦生家が無くなったことは私達きょうだいには諦めの付くことだった。しかし、そのことに関しては母は正常な心を失った。東京に残った父一人を「家を守れなかった」と、ことある毎に50年近く責め続けたのだ。私達はその度に「全部焼け野原になったのに一人の力では無理なこと」と言うのみ。

2013-02-12 17:39:03
こがばあ @kosato80

【喪失】⑧一つの家族にも周囲に数人の戦死者が居り、部分的にでも心を病む者が出る。「希望」ということがかすかに感じられるようになったのは戦後数年もたってからだったのではないか。戦時中には命を初めとして人間にとって価値あるものごとすべてを喪失し続けたが「希望」もその中の一つだった。

2013-02-12 18:09:42
こがばあ @kosato80

【喪失】⑨8月15日の敗戦の日、それまでに植えつけられた価値観が崩れた。14歳の少女が今までかすかに信じていた「勝つまで」は飢えも暑さ寒さ暗さ命の危険もすべて我慢、の日々が全く虚しいものであったと知ったとき、すぐに希望が湧くだろうか。日常生活の喪失も数年は尾を引いた。

2013-02-12 18:21:59
こがばあ @kosato80

【喪失】⑩前回も書いたが、終戦後世界の国々から溢れるように入ってきた芸術―音楽・絵画・演劇・映画の数々に触れて生きる意味や目標を持ち始めたのが17,8歳の頃。それが希望を齎し、失われていた心身の健康も取り戻すきっかけになった。戦争を好んで始めるのは一部の人。苦しむのは他のみんな

2013-02-12 18:33:14
こがばあ @kosato80

戦争をめぐる思いはまだ当分語りつくすことはできませんが、今回はここまでといたします。あくまで、私自身の個人的な感覚からの感想です。切り口をどこにするか、しばらくまた整理してみます。お読み頂きありがとうございました。

2013-02-12 18:37:45