バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト ＃９

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「誰だ！」ガンダルヴァは闘技園に接する宮殿の屋上を指差す。そこには肩の左右に一人ずつ女を抱えた赤黒のニンジャの姿があった。薄物姿の女の一方はキナコ。一方はナンシー・リーだ。ナンシーが頷くと、彼は彼女をカワラ上に降ろす。ナンシーは朦朧としたままのキナコを支えた。◆

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◆ガンダルヴァは逆光に目を凝らした。「邪教め！どこの代理戦士だ！入島許可はありや！？幻覚だ！」アコライトに対する困惑、それに畳み掛けるがごときブラフの破綻の衝撃ゆえに、投げかけた言葉はどこか妙であった。赤黒のニンジャは闘技の場を見渡し、ガンダルヴァを見た。◆

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◆「幻覚ではない。貴様の戯れ言と違ってな」赤黒のニンジャは言い放つ「事ここへ至る話、彼女の口から十分に聞かせてもらった。……私を知っておるか？」「誰だ！」赤黒のニンジャは逆光の中、オジギした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」死刑宣告めいて、その目が煮え滾る。「貴様を殺す」◆

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「バトルクエスト・クレンチ・ユア・フィスト」 #9

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「ニンジャスレイヤーだと……」「ニンジャスレイヤー……？」「殺す？ニンジャを……？」闇カネモチの疑念と困惑の言葉がさざなみめいて拡がる。「曲者め！」ガンダルヴァは驚く程の大音声を放ち、それをかき消した。「許されざる涜神行為！射殺せよ！」護衛戦士達が一斉にライフルを構える！ 1

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「イヤーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！」だが、ニンジャスレイヤーへ銃口を向ける護衛戦士から順に脳天にスリケンを受け、バタバタと倒れてゆくではないか。「ウオーッ！」震えながら更に一人の護衛戦士が銃を構える！「イヤーッ！」「グワーッ！」即スリケン死！ 2

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「イヤーッ！」さらに一枚のスリケンが放たれる！「イヤーッ！」ガンダルヴァは人差し指と中指を立て、眉間に向けて飛来したスリケンを挟み止めた。「ヌウーッ……」その瞼がひくひくと震えた。彼は尚も私兵に促す。「殺せ！」更に闇カネモチ席を見る。「ニンジャ戦士よ！誰かある！出でませい！」 3

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闇カネモチの間に牽制と警戒のアトモスフィアが満ちる。突然の乱入者を恐れる者らも勿論ある。またそれと同時に、互いに牽制しあう視線のぶつかり合いも起こっていた。トラブル打開の名乗りをいの一番にあげ、ガンダルヴァの覚え目出たければ、この場のパワーバランスに何らかの影響も生じるだろう。4

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「やれ！グレイヤー＝サン！」「ハーッ！」口火を切ったのはジョンソンだった。座席から回転ジャンプしてファイティングポーズをとったのはメタル繊維ニンジャ装束姿のニンジャだ。護衛戦士が一人また一人とスリケンで殺される中、屈強なそのニンジャは回転ジャンプを繰り返しながら屋根を目指した。5

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「イヤーッ！イヤーッ！イヤーッ！」ニンジャスレイヤーがスリケンを投げつけ、一人また一人と護衛戦士を殺害してゆく。ナンシーはキナコを庇うように退いた。ガンダルヴァが身を翻す。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せた。「イヤーッ！」彼の目の前に、ジョンソンの代理ニンジャが着地！ 6

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「ドーモ、ニンジャスレイヤー＝サン。グレイヤーです」「ドーモ、グレイヤー＝サン。ニンジャスレイヤーです」両ニンジャはオジギする。ガンダルヴァは一人、祭壇めいた高所から飛び降り、中庭を駆けてゆく。オーバーウェルムは？彼の視線はアコライトに注がれていた。一触即発の緊張状態だ。 7

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「ハッハー！俺の最強ニンジャの恐ろしさ、わかっておろう！」ジョンソンは両手でサムズアップし、闇カネモチ達を眺め渡した。「一番乗りで決めさせてもらう！タッチダウンだぜ！こういう時こそ、雇い主のスポーツ的なセンスがイニシアティブに繋がるのだ、……あン？どうした？」 8

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既に席から立ち上がり、大股に歩きながら中庭を離れんとする集団が二つあり。ひとつは頭部に大きな傷跡をもった若い闇カネモチ、ファジムタの一団。もうひとつは眼光鋭き女オヤブン、ネコリのヤクザクランだ。「ジバヌチ＝サン。せいぜい死に損ねたらまた会おうな」ネコリは無感情に言った。 9

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「ワッツ？」ジョンソンは退場する二集団を不思議そうに見やり、残った闇カネモチ達と視線を交わす。「奴ら撤収か？ハッハー！要は胆力を競う場だぞ、この会合は！あの程度の乱入者に恐れを為して逃げ帰る？臆病すぎるな！」話を振られた者は頷きかけた。「違いない、違い……おい見ろ」10

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「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは蹴り上げる！グレイヤーのガードは間に合わず、顎にジゴクめいた蹴りを受けた。「グワーッ！」浮き上がったグレイヤーを赤黒い風が捉える。蹴ったばかりのニンジャスレイヤーの跳躍！「イヤーッ！」グレイヤーの顔面を掴み、屋根に叩きつける！タッチダウン！ 11

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「サヨナラ！」頭部を屋根瓦の中にうずめたグレイアーが叫んだ。彼の爆発四散と共に再び跳躍したニンジャスレイヤーは、空中でスリケンを複数投擲、アサルトライフルを掃射する護衛戦士を殺しながら中庭へ着地した。「ワッツ？」ジョンソンが瞬きした。「アイエエエエ！」逃げる闇カネモチ達！ 12

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「何だ！あいつは！」「ボス！ヤバイカラテだ！逃げるべきだ！」「俺はやれますぜ！」「逃げろ！」口々に罵り合いながら、闇カネモチとニンジャ代理戦士達は蜘蛛の子を散らすように散開してゆく！オーバーウェルムはそれらを忌々しげに横目で見る。ニンジャスレイヤーがそちらを一瞥した。 13

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「アコライト＝サン」ニンジャスレイヤーが呼んだ。アコライトは彼の目を見返し、頷いた。オーバーウェルムがゴキリと首を鳴らし、言った。「狂人の真似をすれば実際狂人と言うが、あの教祖にも困ったものよ。貴様らを殺し、善後策を考えるとするか」「貴方の相手は私です」アコライトは言った。14

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「ウオオーッ！」ジョンソンがリボルバーをニンジャスレイヤーへ向け、割って入ろうとした。「グワーッ！」銃を持つ手が吹き飛んだ。ニンジャスレイヤーが瞬時に投げ返したスリケンだ。「アーッ！」地面をのたうつジョンソン！そしてニンジャスレイヤーはガンダルヴァを追い、既に走り出している！15

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中庭のシュラバ・インシデントを尻目に、屋上から梯子を伝って滑り降りたナンシーとキナコは、混乱した護衛戦士が行き交う合間を縫い、宮殿敷地外を目指して走り出す。手を引かれて従うキナコの足取りに徐々に確かさが戻って来る。「私……」キナコが呟く。ナンシーは振り返る。「後ね、それは」16

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」再びアコライトとオーバーウェルムのカラテがぶつかり合う！「イヤーッ！」「イヤーッ！」しなやかなアコライトの掌打をオーバーウェルムはいなし、斜めにチョップを打ち下ろす。アコライトは身を沈めながら回転し、滑らかな下段回し蹴りを繰り出す。「イヤーッ！」17

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「イヤーッ！」オーバーウェルムは水面蹴りを飛び越え、強烈な空中ミドルキックを繰り出す。「イヤーッ！」蹴りの回転からアコライトは右手を旋回させ、この致命的飛び蹴りを横から打って反らす。そして中段回し蹴りを繰り出す！「イヤーッ！」「イヤーッ！」オーバーウェルムは側転回避！ 18

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「ひとつ言っておく。貴様の呼び込んだあのニンジャ！」オーバーウェルムはカラテを構え直した。「考え無しに追っていきおったが！奴はガンダルヴァ＝サンのフーリンカザンによって、惨たらしく死ぬ定め。頭ひとつ残ればチョージョーであろう」「……」アコライトは真っすぐに見た。「来なさい！」19

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「そうだ、オーバーウェルム＝サン！」闘技部隊の下、ただ一人椅子に残ったジバヌチがセンスで指した。「今更ゴチャゴチャとくだらぬ繰り言を抜かすな。見ろ、これを！エエッ！祭りの終わりよ！奇麗さっぱりだ！国破れて山河有り！」老人は立ち上がり、両手を広げた。「やれッ！」20

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「ジジイ！言われんでもーッ！」オーバーウェルムはアコライトに踏み込む！そして恐るべき右ストレートを放つ！「イヤーッ！」アコライトの幻惑的足さばき！側面に回り込む！だが、オーバーウェルムの右ストレートはブラフ！瞬時にその腕が引き戻され、アコライトの心臓めがけ、掌打を繰り出す！ 21