ヨーロッパの原子力発電事情 -ゼブラさんより

メモ
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Flying Zebra @f_zebra

フランスの原子力発電の「成績」について。毎年この時期にEDF(フランスの独占電力会社)の決算発表があるので、その中で運転する原子力プラントの運転実績についても発表される。2012年の平均設備利用率は過去10年で2番目の低さとなった。

2013-02-25 20:56:54
Flying Zebra @f_zebra

EDFでは1991年から蒸気発生器などの主要機器の交換を計画的に進めており、2012年の計画外停止は過去10年で最低となっている。ただし、大型機器の更新は長期の運転停止を伴うため、計画停止の日程が全体の設備利用率を引き下げる結果となった。

2013-02-25 20:57:02
Flying Zebra @f_zebra

なお、ほとんどの国で原子力発電所は出力一定で運転されているが、フランスでは以前から負荷追従方式で運転している。そのため、設備利用率は稼働率よりも低くなる。更に、最近増えている再生可能エネルギーは優先的に接続され、その間は原子炉は出力を絞るか停止している。

2013-02-25 20:57:11
Flying Zebra @f_zebra

再生可能エネルギーの発電量は夏場に増えて冬場は減る傾向があり、その意味では原子炉のパフォーマンスを見るには冬場の稼働率または設備利用率を見ればよい。稼働率では、冬場はだいたい9割を超えている。

2013-02-25 20:57:21
Flying Zebra @f_zebra

ヨーロッパは発電容量も送電網や変電施設などの電力系統の容量もまだ余裕があるので、不安定な再生可能エネルギーを接続しても安定供給は確保できるし、価格競争の余地もある。系統に余裕がない時に再生可能エネルギーが容量を独占してしまうと、全体の送電容量が逼迫してしまう。

2013-02-25 20:57:31
Flying Zebra @f_zebra

産業や国民生活を犠牲にする事なく、持続可能な形で再生可能エネルギーの利用を拡大していくためには、安定したベースロード電源と十分な容量の電力系統が不可欠だ。今の日本には、残念ながらどちらもない。というか、政治的になくされている。まあ、今さら言っても仕方ないのだが。

2013-02-25 20:57:42
Flying Zebra @f_zebra

東芝がフィンランドで原子力発電所建設計画の優先交渉権を獲得したというニュースhttp://t.co/Et1nbroZ0m に関連して、フィンランドの電力・原子力事情について若干補足。

2013-02-26 12:27:27
Flying Zebra @f_zebra

寒冷地のフィンランドは国民1人あたりの一次エネルギー消費量は世界でもトップクラスだが、エネルギー資源には恵まれていない。国名(Suomi:千の湖)の通り水資源には恵まれるものの、ノルウェーやスウェーデンと違い比較的なだらかな地形のため水力資源は一次エネルギーの3~5%に留まる。

2013-02-26 12:27:51
Flying Zebra @f_zebra

エネルギー自給率を高めるため1977年から原子力を導入、現在は電力の3割弱を原子力で賄っている。近隣北欧諸国やロシア、エストニアとは古くから電力の融通(主に輸入)をしている。温室効果ガス排出量削減も独自の高い目標を掲げ、そのためにもベースロード電源の増強には積極的だ。

2013-02-26 12:28:37
Flying Zebra @f_zebra

フィンランドは中小約120社の電気事業者が乱立しているが、大手3社で設備容量のほぼ半分を寡占している。現在原子力発電所を運転しているのはオルキルオトを所有するTVOとロシア製VVERのロヴィーサ発電所を所有するFortum(旧IVO)の2社。

2013-02-26 12:29:17

コメント欄にてゼブラさんから訂正(コメント欄容量のほうが長いので、ツイートから移動では後半が切れてしまいました。)

一つ勘違い。オルキルオトの1、2号機はスウェーデンABB-Atom製のBWRでした。ABBの原子力部門はその後イギリスの燃料会社(BNFL)に買収され、現在はウェスティングハウスに統合されています。アレバ製は建設中の3号機だけでした。

Flying Zebra @f_zebra

もう1社のPVOは卸売電力会社で、自社では発電設備を所有していない。今回東芝が優先交渉権を獲得したのは2007年設立の新しい会社フェノボイマ(Fennovoima)で、バルト海に面した北部のピュハヨキ(Pyhäjoki)に原子炉を建設する計画だ。

2013-02-26 12:29:50
Flying Zebra @f_zebra

北欧電力市場は主力電源である水力発電の発電量に大きく依存する。降水量が豊富だと安価な電力が市場に出回るため単価が下がり、自国の火力発電より輸入の方が安くなる。逆に降水量が少ないと、自給率が高くなる。

2013-02-26 12:30:32
Flying Zebra @f_zebra

欧州域内では全域で単一電力市場を形成する動きがあり、北欧電力市場と欧州大陸、バルト諸国の市場は統合された運用が2008年から開始されている。フィンランドの電力価格はEU域内平均の1/3程度で、電力輸出ビジネスでも優位性が予想されている。

2013-02-26 12:31:05
Flying Zebra @f_zebra

フェノボイマのハンヒキビ(Hanhikivi)発電所プロジェクトでは、出力160万kWの大型炉という条件でアレバのEPRと東芝のABWRが最終候補に残っていた。EPRは現在国内でオルキルオト3号機が建設中だ。東芝は、受注すれば傘下のウェスティングハウス以外で初の海外案件となる。

2013-02-26 12:31:42
Flying Zebra @f_zebra

筆頭株主のドイツE.Onがこのプロジェクトから撤退したことから、出力を130万kWに落として計画変更となる可能性もある。アレバは既にこの出力で提案し、ロシアのロスアトムもVVERを提案している。東芝はこの場合でも提案する予定とのこと。

2013-02-26 12:32:59
Flying Zebra @f_zebra

現在フィンランドで運転中、建設中の原子炉は全て加圧水型(ロスアトム製VVER、アレバ製PWR及びEPR)だ。東芝が受注することになれば、初の沸騰水型となる。もっとも、フィンランドは昔から何でも西側のものと東側のものをごっちゃに使いこなしているので、あまり気にしていないようだ。

2013-02-26 12:34:22