ザイバツ・ヤング・チーム #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:ロード・オブ・ザイバツを失ったザイバツ・シャドーギルドは、ダークニンジャを頂点とする闇のニンジャ組織へと変貌を遂げていた。キョジツテンカンの障壁の中に浮かぶキョート城から地上へ、ザイバツ・ニンジャはクエスト使命を帯びて降り立ち、秘匿された神話断片を捜し求めるのだ)

2013-02-28 19:25:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(クアースとドモボーイは功を焦るニュービー・ニンジャであり、今回重要なニンジャクエストに任じられた。目指すはマツオ・バショーの墨壺だ。お目付役として彼らより更に若いディミヌエンドをつけられた事が面白くない彼らは嫌がらせを試みるも、カラテで黙らされる)

2013-02-28 19:28:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(内に不協和音をはらみながらも、彼ら三人はネオサイタマ郊外と中国地方の境に位置するカネモチの城を圏内に捉える。クアースは他の二人よりも目立ったイサオシを得る事を夢見、メンポのヒモを強く結ぶ心持ちである)

2013-02-28 19:37:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」張り出したパイン枝にバイオスズメめいて並び立った三者は、舗装道路を塞ぐものものしい城門を見やった。「UAVを飛ばすね」ディミヌエンドは懐から平たい八角形の物体を取り出した。シュルシュルと音を立て、格納されていたプロペラが飛び出す。 1

2013-02-28 19:53:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒヨヨヨヨヨ……」異音を発し、中心部のLEDを瞬かせながら、小型UAV(無人機)はヘリコプターめいて空を飛んだ。ディミヌエンドは携帯端末を開いた。無線LANによってUAVカメラの映像がリアルタイムで送られて来るハイ・テックなUNIXシステムである。 2

2013-02-28 20:05:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おやおや、操作できんのか?」ドモボーイが言った。「私は洞窟に住んでいた未開部族じゃないわ」ディミヌエンドは答えた。「訓練も受けているしね。貴方たちはどうだか知らないけど」「ヘッ!」「……なにか妙だな」クアースは端末に映し出された俯瞰映像を見ながら呟く。 3

2013-02-28 20:18:35
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「妙?」「中庭に人っ子一人いないだろ」「……」UAVは上空を旋回した。バクフ城のミニチュアじみた建築物。金のシャチホコ。カネがかかっている。確かに、ヤグラや城壁には機銃を構えた兵士の姿無く、中庭に装甲車の影もない。「無警戒か?」「確かに腑に落ちねえな」ドモボーイは画面を睨んだ。4

2013-02-28 20:25:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カネモチってのはよォ……疑心暗鬼のかたまりだぜ。しかも、お宝溜め込んでやがるんだろ、ここのやつは」ドモボーイは言った。「何で無警戒なんだァ?俺は、なんでもブッ殺してやるつもりだったんだぜ!」「油断は出来ないね」ディミヌエンドは画面をなぞった。「奥側の城壁から攻めよう」 5

2013-02-28 20:33:48
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「てめェはどうだ。黙ってやがるがよ」「異議無しだ」クアースは呟いた。鎖骨がピリピリする。ニンジャとなって以来、予兆めいた感覚が、サイバネティクス接合箇所の疼きという形であらわれる。「気が進まねえのか?例の第六感かよ」「……さあな。わからん。だが、あまり良い感じはしない」 6

2013-02-28 20:39:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まあいいさ。さっさと行こうぜ。時間切れで死ぬのはゴメンだ。カッコ悪いったらねえからな」ドモボーイは手首を差し上げた。ディミヌエンドは頷き、枝から枝へ飛び移った。二者も間髪入れずそれへ続く。末端であっても彼らはニンジャ。ミッション地点を目前に、その目は冷酷な戦士のそれである。 7

2013-02-28 20:46:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヒヨヨヨ……」UAVはキリモミ回転しながら垂直降下し、ヤグラの陰で地上モードに移行した。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」そのすぐ側へ、塀を乗り越え、ヤグラを伝い、三人が立て続けに着地した。「実際いねぇな」ドモボーイが腕関節を伸ばしながら中庭を見渡す。「気に食わねえ」8

2013-02-28 20:54:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

四つの車輪で自走する地上モードUAVが、バクフ城を模した建築物の周囲を高速で走行する。ディミヌエンドの手元の端末はそのカメラ映像情報をもとに三次元的ワイヤーフレーム図を構築していった。チチチ。正門の他に裏口めいた侵入口がある。「馬鹿正直に正面から行く事は無い」クアースは呟く。9

2013-02-28 21:01:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「イヤーッ!」ドモボーイが壁と同色の扉をこじ開ける。腰を屈めねば通れない入り口。隠し扉めいて目立たない。UAVのセンサー性能と彼らのニンジャ洞察力とが導いた侵入口だ。三人は視線をかわし、しめやかに城の中へ入り込む。走りながら、ディミヌエンドは得物の短剣と曲刀を引き抜く。10

2013-02-28 21:11:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

狭い通路をマグライトの明かりを頼りに進みながら、三者は無言。いまだネズミ一匹現れない。「まずUNIXだが……」クアースが言った。デッキをハッキングして、城内の地図を得たい。「城のサーバー室ってのは大抵地下だ」ドモボーイが言った。親指で前方を示す。上り下りの階段だ。 11

2013-02-28 21:22:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前は下だ、クアース=サン」ドモボーイが言った。クアースは顔をしかめた。「一応最後まで聴いておく」「で、俺とディミヌエンド=サンが上だな」「……」「ア?何かおかしな事でも考えてやがんのか?お前はハッキング適性が一番ある。城は下より上に広い。だから上が二人だ。これが合理性だ」12

2013-02-28 22:12:29
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クアースはディミヌエンドを見た。「リーダーが決めるのが筋だ」「……」ディミヌエンドはやや思考し、頷いた「そうね。クアース=サンはUNIXをハッキングして、各自の端末にデータを送る。私たちは上」「だな!リーダーの命を優先!俺が盾に……」「上で更に二手に別れて、上階をクリアする」13

2013-02-28 22:23:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺は異論無しですね」クアースが肩をすくめた。「合理的だ。な、ドモボーイ=サンよ」「ア?何だ?文句なんてねえよ。じゃあそれで行こうぜ」ドモボーイが率先して階段に進む「早く行こうぜ。時間もねえんだ」クアースは鼻を鳴らした。「気を散らすなよ、お前」「とっとと行け!」とドモボーイ。14

2013-02-28 22:29:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クアースは二人と別れ、地下階に進む。ドモボーイは全くのバカだ。リーダーのディミヌエンドを籠絡してこれ見よがしに優位に立つ、彼の狙いはそんな所だろう。敵地において緊張感を濁らせる程の対抗意識が不快だ。だがディミヌエンドはそんなバカになびく女ではない。短く接した中で分かる……。15

2013-02-28 22:38:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地下階の曲がり角を何度か曲がると、前方右手に薄い明かりを漏らす戸口が現れた。クアースは鎖骨に触れ、それからスリケンを手にした。彼のニンジャ聴力は部屋の中から聴こえて来る低い唸りを捉える。馴染みのあるUNIX冷却ファンの音だ。ドモボーイの見立てはアタリか。不快な事だが……。 16

2013-02-28 22:51:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ブルズアイだ。LED薄明かりの中、クアースはUNIXルームをクリアリングした。「!」彼はカラテ警戒した。UNIX机の下に、脚!迷彩服を着たヤクザ兵の死体である!反射的に彼は背後を、それから天井を再度確かめた。フイイイ……冷却ファンの音だけが室内を満たしている。 17

2013-02-28 23:09:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クアースは自分の鼓動の速まりを感じる。ニンジャアドレナリンが血中を駆け巡り、ニューロンを騒がせる。大丈夫だ……少なくとも部屋の周囲に敵は無い。クアースは素早くUNIXを操作し、右耳の後ろのLANコネクタを用いてデッキと直結した。兎と蛙の戯画アニメーション待ち時間がもどかしい!18

2013-02-28 23:13:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モシモシ、モシモシ」シークタイム中にIRCチャネルを呼び出し、別行動の二人にノーティスを送る。「モシモシ、モシモシ」「ドーモ」ディミヌエンドが反応した。「首尾は?」「今ハッキングを試みている。それはいい。嫌な予感が当たった。何かおかしい」「何?」「死体だ。この城の兵士の」19

2013-02-28 23:18:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それはつまり……」「ああ、おそらくは先客……それとも、何だって?」クアースは己の目を疑った。マグライトがはっきりと照らし出した死体は……ナムアミダブツ!半ばミイラ化しているではないか!「どうした!」ドモボーイの問いにクアースは答えようとする。「いつの死体……」ザリザリザリ 20

2013-02-28 23:23:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SHIT!まだかよ!」クアースはデッキの決定キーを繰り返しヒットした。ザリザリザリ「何だこりゃ……」ザリザリザリ「てめェら!」「イヤーッ!」ザリザリザリ「おい、こいつら」ザリザリザリ「ドモボーイ=サン!ディミヌエンド=サン!オイ!」ザリザリザリ「まだか!」キャバァーン! 21

2013-02-28 23:27:48