竹熊健太郎氏が語る日本の出版界の実情

日本の出版社の電子書籍へのかじ取りが何となく重い理由の一面が分かった気がした。(自由編集に変えました。失礼)
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

ムライ作『鳥の眼』はPCで読む前提で描かれた漫画です。ページ概念がない、縦スクロールで延々と読むこのような形式の漫画は、韓国WEBTOONでは支配的です。韓国は紙出版が日本ほど発展してないので、これがむしろ普通なのです。http://t.co/cleLagSmlz #電脳マヴォ

2013-03-07 00:34:02
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]縦スクロール型WEB漫画はページ概念がないので、単行本として出版しようとすると、全体にわたってコマを再構成してページを作るという、ほぼ描きなおしに近い作業になります。これが日本でスクロール型、flashを使った漫画+アニメ連動型WEB漫画がまったく流行らない理由です。

2013-03-07 00:41:37
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]日本でキンドルなどの読書端末が売れなかったり、出版社が電子出版業者に自社本を提供したがらないのは、電子書籍が普及することによって、紙の本が売れなくなることを恐れているから。つまり、電子書籍は紙の本のような利益は生まないと出版界の人間は信じていて、それは、たぶん真実です。

2013-03-07 00:49:09
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]極めて深刻で厄介な問題について、私は書いています。これは、話を進めていくと、日本の社会が現在罹っている極めて治癒困難な病気の話をするはめになるでしょう。とにかく明快で誰もが納得する答えはありません。電子出版を本気で推進しようとしたら、

2013-03-07 01:00:38
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]それはつまり、今働いている出版社の人間の、4分の3位をリストラすることになるのではないでしょうか。電子出版は少数の人員で十分できます。そんな事をしたら大変な社会問題になります。マスコミ人間は版元の社長や政治家を失脚させることもできる、アンタッチャブルな存在なのです。

2013-03-07 01:11:37
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]要は「第四の権力」と言われるマスコミの中心を占める大手出版社が悉く漫画単行本で社員の生活を支えている事実、それが問題の本質なのです。サブカルチャーである漫画が、カルチャーの中心たる出版社社員の生活を支えている皮肉な現象があり、出版社は漫画も紙の本も止められないのです。

2013-03-07 01:20:20
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]漫画に対してこの形容は使いたくなかったですが、日本の出版社にとっての漫画単行本は、麻薬みたいなものです。当たると効果は大きいが、副作用も大きい。考えても見てください。1冊の少年漫画が、100万冊も200万冊も売れるという事実からして、異常現象といっていいです。

2013-03-07 01:26:59
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]ではなく番号で繋げるべきでした。長くなりました。日本の出版界を覆っている「ベストセラー狙いのギャンブル体質」は、もはや取り返しがつかない地点に来ているのでは、と私は危惧しています。それは日本の取次と関係があります。外国の本の流通で同様の制度があるのか、私は存じませんが、

2013-03-07 01:33:47
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]日本の取次は書店からの売上金が回収する以前に、版元に対して売上金を前渡しする制度がありおます。これが出版をギャンブルに変えている元凶だと私は思う。つまり版元が本を1万部印刷して取次に納品したら、取次は、売り上げが確定する以前に、1万部の売上金を、版元に入金するのです。

2013-03-07 01:40:39
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

なぜ売れたかどうか確定していない本の売上金を前渡しするのかと言うと、そうしないと版元は次の出版の資金繰りに苦労します。そこで、取次が売り上げを前渡しすることで、スムーズな出版活動を支援することがこの制度の目的です。1万部刷った本が1万部売れれば、この制度は問題がありません。

2013-03-07 01:44:45
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]問題になるのは、1万部刷って5千部しか売れなかった場合です。この場合は5千部分の売上金がそのまま版元の取次に対する借金になります。それでは困るので、版元は借金返済期限が来る前に、また新刊を作って、取次から借金を重ねるのです。これが出版界の「取次多重債務」の実際です。

2013-03-07 01:49:06
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]一流の大学を出た秀才が揃っている日本の出版社で、そんな小学生でもダメだとわかる幼稚な窮状になぜ陥ってしまったのか。この事実に気がついて、私は言葉を失いました。本当に、借金返済のための借金をするという理由で、出版社は紙の本を出し続けなければならないのです。

2013-03-07 01:54:46
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]いいかげん長いのでそろそろ。結局は国民の預貯金総額が1200兆あるという理由で、国民からの借金である国債を乱発する政治状況と変わらない状況が、出版界でも起きているわけです。「身内同士の借金感覚」というやつです。たとえ感覚はマヒしていても、借金は借金です。

2013-03-07 01:59:57
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]久しぶりに連ツイした。これやるとフォロワーが増えたり減ったり慌ただしいんですよね。どなたかまとめてください。一般には知られてないこと書いてますので。書籍の卸問屋である取次会社が実は金融機能があって、大手中小大部分の版元が借金漬けになっているなんて知らない人が多いでしょう。

2013-03-07 02:08:15
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]負けが込んできたのでサラ金で借金してギャンブルを続ける。ダメ人間の王道ですね。出版界も始めは調子良かったんです。負けても次当たれば返済してお釣りが残ったから。「お釣り」が残らなくなったのが1996年。前年600万部代だった少年ジャンプが300万部代に激減した年です。

2013-03-07 02:15:08
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]1997年から今年まで、漫画雑誌の売れ行きは右肩下がりで回復しておりません。単行本の総売り上げは横ばいですが、この17年間で点数はほぼ倍になっているのです。新刊を出しても借金は増える一方。これを病気と言わずして何と云うのか。 http://t.co/p029ogw0oX

2013-03-07 02:31:01
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]よくよく考えてみれば、出版も最初はこんなではなかったのです。どこで歯車が狂ったかと言うと、やはり80年代末のバブル経済とその崩壊だったと思います。本当に、そこから一気にこの国の調子がおかしくなったのです。潜伏していた病気が発病したのです。

2013-03-07 02:38:18
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]漫画が出版界にとって「麻薬」と物騒な表現を使ったのは、かなり正確な比喩のつもりです。つまり麻薬とは、始めは少量でも快感がありますが、中毒すると段々効かなくなる。それで量が増えて行って最後は心身も生活も破壊されるわけです。漫画は日本では娯楽の中心の地位を築いてます。

2013-03-07 02:45:07
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]これは凄い事だと思います。漫画は全ての国で子供の娯楽の中心ですが、日本では首相まで選挙で漫画好きを公言する。それだけ漫画表現の幅と厚みが増している、大学教育に値する文化になっているわけです。ところが日本漫画は、作家編集ファン一丸となり戦後60年以上盛り上げ続けた結果、

2013-03-07 02:55:29
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前]とてつもない大衆娯楽表現に成長してしまいました。日本漫画は今では映画・演劇・ゲーム、凡てのコンテンツの「母」と呼ばれています。ビジネスで使われるキャラクター絵も、もとは漫画から生まれたキャラであることが多い。日本社会の「娯楽の王」は漫画であり、今後も変わらないでしょう。

2013-03-07 03:05:04
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

[承前」もう2時間以上書いてる。いいかげん明日があるので寝たいです。まあ要するに、面白さのエキスを煮詰めてできているのが日本の漫画です。しかし娯楽とは刺激をエスカレートさせねばならぬ宿命があります。強い奴のインフレ。娯楽の強度をあげ続けると、ある段階から毒性を帯び始めるのです。

2013-03-07 03:10:29

そしてフォロワーからの感想・リプ・質疑応答などを抜粋。何の返答なのか発見できなかったのもあり(鍵アカ?)、あしからず。

トミドン @Tomidon8

@kentaro666 出版不況も電子書籍が振るわないのも、ネットで皆が垂流す情報のほうが面白いからだと思うなぁw

2013-03-07 01:18:57
kentarotakahashi @kentarotakahash

『エリス』はテキスト校正者一人、表紙の装丁に一人。あとは全部、僕がやってます。誌面にするのは、全ページ、僕一人の作業。 QT @kentaro666 それはつまり、今働いている出版社の人間の4分の3位をリストラすることになるのではないでしょうか。電子出版は少数の人員で十分できます

2013-03-07 01:41:27