細馬宏通、佐藤直樹、岸野雄一によって交わされた知覚についてのツイートまとめ

2013年1月5日から6日にかけて、細馬宏通、佐藤直樹、岸野雄一の三者によって交わされた知覚についてのツイートのまとめです。この会話がきっかけとなり、4月12日に美学校両国教室でトークが開催されることとなりました。詳細は下記の通りとなります。 「美術と音楽のあいだに ―眼を開いて聴く/耳を澄ませて視る―」 出演:岸野雄一、佐藤直樹、細馬宏通 続きを読む
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細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

十数年前、心理学会で下條信輔さんが、記憶は知覚によって歪むというより、そもそも記憶は知覚によって随時更新されるいわば「弱い知覚」なのだ、といった話をしていた。あれ以来、記憶=弱い知覚、というアイディアは頭にこびりついている。注意のナヴィゲーションは、その更新過程に関わるだろう。

2013-01-05 17:06:38
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@kaerusan 記憶=弱い知覚説すごく面白いんですけど、その場合、どの機関によって何が知覚されているんでしょう。知覚というのはある特定の受容器によって外的情報を取り込むものだと思っていたのですが、そこからして、違っているんでしょうか?

2013-01-05 18:52:14
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@kaerusan 機関ではなく器官でした。いやむしろ機関なのか?

2013-01-05 18:53:30
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@naokisatoasyl おおざっぱに書くと、感覚器(たとえば網膜)で、外界の情報(たとえば光の明暗、さまざまな波長)をとらえるレベルは「感覚」と呼んでいて、それが脳の各部である程度まとまったもの(たとえば「対象」)として捉えられる段階を「知覚」と呼んでます。

2013-01-05 19:09:48
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@naokisatoasyl でもって、知覚の一例。たとえば視覚だと、まず網膜の「感覚」情報は後頭葉の視覚野と呼ばれるところに入って、そこから、それが何かを班別する径路(側頭葉)とどこかかを班別する径路(頭頂葉)に分かれて…えーと…『つぎはぎだらけの脳と心』などいかがでしょう。

2013-01-05 19:15:40
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@naokisatoasyl 感覚情報(たとえば複雑な網膜像のパタン)を、おおよそ編集し(輪郭と色と形はこんな感じ)、いくつかの前提(対象が二つある。二つは同じもの。)のもとに、ある結論(二つは大きさが違うのでなく遠近にある)として安定させるのが、知覚のはたらきのひとつ。

2013-01-05 19:30:42
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@kaerusan @kaerusan なるほど〜。すごくわかりやすいです。てことは記憶を知覚するには「まとまったもの」がどこかにストックされていることが前提になるのでしょうか。それとも「まとまったもの」かどうかはむしろ事後的に成立するということになるんでしょうか。

2013-01-05 19:36:42
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@naokisatoasyl 思い出すこと(記憶の想起)は、単に頭の中にストックされている何かを取り出すのじゃなく、目の前にはない過去の環境を作り出す、すごく能動的で編集がいろいろまじりやすい行為だと思います。

2013-01-05 19:52:20
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@kaerusan「起きてから夢を反芻すること」と「記憶を想起すること」はどう重なりどう異なるのかが気になっています。人はよく夢の話をしますが、その「元」というのは、いったいどこにあるのか?というようなことなのですが。

2013-01-05 19:57:41
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@kaerusan「記憶の想起」がいかに能動的な編集行為だとしても「一次情報」があるわけですよね。では「夢の想起」における「一次情報」とは何だろう?と。

2013-01-05 20:03:06
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@naokisatoasyl たぶん、ある知覚がなされることで、神経細胞間で興奮の伝わる度合いが変化して、それがある程度保持される、というあたりが、記憶の「一時情報」なんじゃないかと思います。問題は、その一時情報を、夢ではどうやって使っているのか、ということなんですが。

2013-01-05 20:05:43
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@naokisatoasyl ともあれ、ツイートにはあまりに荷が重い話題なので、佐藤さんにはぜひ「つぎはぎだらけの脳と心」をお勧めします。睡眠と夢の話もけっこう分量を割いて書いてありますし。

2013-01-05 20:06:38
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@kaerusan 読んでみます。長々とおつきあいいただきありがとうございました。

2013-01-05 20:07:27
岸野雄一 @KishinoYUICHI

@kaerusan @naokisatoasyl 脳におけるCPUが随時HDを書き換えにいくイメージですね。新皮質の前頭葉前部に一時的に保存(バッファー)しておくワーキングスペースを持っています。音楽や映画に接している時、反復要素を抽出したりする作業はここで行われています。

2013-01-05 20:20:22
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

反復要素の抽出が楽になり過ぎるとよくないですね。視覚表現ではそれを強く感じます。@KishinoYUICHI @kaerusan 脳におけるCPUが随時HDを書き換えにいくイメージ…新皮質の前頭葉前部に一時的に保存…音楽や映画に接している時、反復要素を抽出したりする作業はここで…

2013-01-05 20:25:18
岸野雄一 @KishinoYUICHI

@naokisatoasyl @kaerusan もの凄い演算速度で「いま起こっている事はひとつ前の繰り返しか?」ということを自動的に検証しているわけです。海馬が非情動的情報を、小脳扁桃が情動的情報を参照するのですが、楽をしない為には海馬を鍛えろ、しかしどうやって?ですね。

2013-01-05 20:33:15
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

@KishinoYUICHI @kaerusan 反復の快楽というものもあってそれをあっさり否定してしまう「アート」や「クリエイション」の信奉というものもすごくつまらないわけですが。今は「無限にできてしまう」ことを前にした時の態度が問われているように思えます。

2013-01-05 20:33:52
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

はい。まさに。@KishinoYUICHI @kaerusan もの凄い演算速度で「いま起こっている事はひとつ前の繰り返しか?」ということを自動的に検証している…海馬が非情動的情報を、小脳扁桃が情動的情報を参照するのですが、楽をしない為には海馬を鍛えろ、しかしどうやって?ですね。

2013-01-05 20:36:20
岸野雄一 @KishinoYUICHI

@naokisatoasyl @kaerusan 脳における情報処理を快情動に向かわせない為には、報酬系を抑制するという手があります。腹側被蓋野を経由させないという方法です。それまで反復していた要素をあえて抜いてしまったり、予見という別ベクトルに向かわせたりですね。

2013-01-05 20:54:55
岸野雄一 @KishinoYUICHI

@naokisatoasyl @kaerusan この辺の話しは、以前に細馬さんと「NU(エヌユー)」という雑誌で話した事を取っ掛かりに、集中的に調べ上げた経緯があるので(「音楽を聞く時、脳では何が起こっているのか?」)、どっかで話しましょう。すんません、うどん食ってきます。

2013-01-05 21:00:13
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

面白いですね〜。@KishinoYUICHI @kaerusan 脳における情報処理を快情動に向かわせない為には、報酬系を抑制するという手があります。腹側被蓋野を経由させないという方法です。それまで反復していた要素をあえて抜いてしまったり、予見という別ベクトルに向かわせたり…

2013-01-05 22:04:31
佐藤 直樹 @naokisatoasyl

美学校に音楽コースも出来た事ですしこのテーマはぜひクロスさせたいですね。続きをやりましょう。@KishinoYUICHI @kaerusan …細馬さんと「NU(エヌユー)」という雑誌で話した事を取っ掛かりに、集中的に調べ上げた経緯…音楽を聞く時、脳では何が起こっているのか?…

2013-01-05 22:08:59
細馬宏通(『フキダシ論』) @kaerusan

@KishinoYUICHI @naokisatoasyl (あるタイプの)情動系をおさえる機構の進化と言語の進化との間には、たぶん強い関係があるような気がしてます。たぶん、情動を乗せていく声となるべく乗せない声の区別が生まれて、歌と声が分化していったんでないかと。

2013-01-05 23:03:17