ツチグモスレイヤー

河城にとり @KawashiroNitori

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（これまでのあらすじ）ネオゲンソウキョウのヨウカイ・マウンテン。以前の清流は見る影もなく、ツチグモが垂れ流す重金属混じりのネバついた排水が渓流を覆っている。水を拠り所とするカッパにとって、このドス黒く淀んだ川はサンズ・リバーに等しい。(1/24)

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カッパの栄養源であるバイオキューカンバーが川の汚染で全滅し、餓死者が前年比3万パーセントを記録。カッパの一人、カワシロ・ニトリもキューカンバーを補給できず、マグロめいた目で死線をさまよっていた。そのとき！カッパのボス、ネネコ・カッパのソウルが突如ニトリに憑依した！(2/24)

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温かい力が全身に巡り、体の自由を取り戻していることにニトリは気付いた。禍々しい書体で彫金された「胡」「瓜」のメンポと豊満なバスト。全てのツチグモを殺す者、ツチグモスレイヤーだ！目に殺気をたぎらせ、ニトリは因縁の潜む洞窟へと向かった。「ツチグモ殺すべし」(3/24)

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カッパは温厚で盟友だと思っている読者諸氏もいるだろう。しかし、先の異変でツチグモの声を聞いたニトリが「テメッコラー！ ギッタンギタンにスッゾコラー！」と罵声を浴びせていたことは記憶に新しい。カッパは実際凶暴で残忍なヨウカイであると東方求聞口授にも書かれている。(4/24)

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「漆黒」「地獄的な」「案外深い」 恐怖を煽る看板が洞窟内に並ぶ。ニトリはそれを一瞥し、慣れた手つきでIRCを叩いた。『モブカッパ＝サン。サポート重点』しかし応答がない。頭上の岩壁が信号波を減衰させているのだ。ニトリは忌々しげな表情を浮かべ、天井付近まで飛んだ。(5/24)

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再びIRCを操作しようとした刹那、縦穴から天狗めいた速度でニトリめがけて飛来する物体あり！オケ・ヨウカイのアンブッシュだ！「イヤーッ！」ニトリはケモノめいた動体視力と反射神経でこれを回避！ワザマエ！カリカリというグレイズ音が洞窟内にコダマする！(6/24)

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オケの淵から冷徹な視線がニトリを射抜く。その姿は細い手脚、平坦な胸。「ドーモ、はじめまして。カワシロ・ニトリです」ニトリは奥ゆかしくオジギした。数瞬の間をおいて、IRCにメッセージが流れる。『ドーモ、ニトリ＝サン。キスメです』この恐るべきオケは語る口を持たない。(7/24)

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「イヤーッ！」ニトリの手からおびただしい量の水が噴き出る！カッパのポロロッカ・ジツだ！これに対してキスメは、おおなんと！『イヤーッ！』水撃をオケで受け止める！スペルカード・ジツは不要！オケは水を汲み、水はオケに汲まれる。水よりもオケの方が優位であることは間違いない。(8/24)

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「イヤーッ！」『イ、イヤーッ！』「イヤーッ！」『グワーッ！？』しかし見よ！ヤバイ級のカッパ、ネネコ・カッパのソウルを宿すニトリは、みじんも衰えぬテッポウ水を浴びせ続け、ついにオケの優位を覆した！ゴウランガ！「覆水ボンに返らず」哲学剣士、コンパク・ヨウムの格言である。(9/24)

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オケを壊され奥へ逃げるキスメをニトリが追う。しかしこれはキスメの巧妙なトラップだ。「ザッケンナコラー！」「ザッケンナコラー！」「ザッケンナコラー！」羽を生やした群体が突如岩陰から躍り出る！全員が同じ顔、同じ姿、同じ動きでニトリへ殺到！クローンフェアリーだ！(10/24)

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ニトリは両手を上げた。「イヤーッ！」砲弾めいた水塊が容赦なくクローンフェアリーに襲い掛かる！「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アバーッ！」ダンマクを受けたクローンフェアリーは次々とネギトロめいた死体になり、やがて全滅した。(11/24)

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「やはりヨタモノのフェアリーでは相手にならんね」暗闇の奥から明るい声が響く。膨らんだ下腹部、まだら模様の服、豊満なバストからは地底のアイドルめいたアトモスフィアが感じられる。ニトリの目に険しい色が浮かんだ。この声の正体こそ、全てのカッパの仇敵、ツチグモなのだ！(12/24)

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「ドーモ、はじめまして。カワシロ・ニトリです」「ドーモ、ニトリ＝サン。クロダニ・ヤマメです」(13/24)

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「イヤーッ！」禍々しく光るダンマクがヤマメの周囲にトグロを巻き、いっせいに弾ける！圧倒的なダンマク密度を誇る、ヤマメのフィルドミアズマ・ジツ！「イヤーッ！」ニトリはダンマクを十分引きつけ、網目を縫うがごとく最小限の動きでこれを回避！タツジン！(14/24)

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ダンマクをもってダンマクを制す。「イヤーッ！」ニトリは目にも止まらぬ速さでダンマクを投げ、ヤマメのダンマクを相殺した！カッパの乾燥シリコダマ・ジツ！辺りに地獄めいた臓腑の臭いが立ち込める。このジツのためにどれだけの人間が犠牲になったのか疑問に思う読者も多いだろう。(15/24)

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しかし、ニトリは相殺するだけで精一杯だった。フィルドミアズマ・ジツのダンマク密度は実際スゴイ。「イヤーッ！」「イヤーッ！」お気付きだろうか？人間不在の地底ではシリコダマを補充できないが、ヤマメのダンマクは無尽蔵なのだ。このままではジリー・プアー（徐々に不利）！(16/24)

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焦るニトリの脳裏にネネコ・カッパの声が響く。（百個のシリコダマで倒せぬ相手だからといって、一個の力に頼ってはならぬ。一千個のシリコダマを投げるのだ！）「ハイ！」ニトリの腕が残像めいた動きを見せ、飛び交うシリコダマが10倍に増える！「イイイイヤァァァァァ！！」(17/24)

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地底を埋め尽くすほどのシリコダマに圧され、フィルドミアズマ・ジツの壁がついに崩れた！ピチューン！ヤマメの顔、腹、豊満な胸、至る所にシリコダマが叩きこまれる！「サヨナラ！」ヤマメは爆発四散した。「インガオホー」ニトリは溢れる高揚感をかみ殺し、ザンシンを続けた。(18/24)

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パチ、パチ、パチ。突如として背後からハクシュが響き渡る。ナムサン！ツチグモの仲間が残っていたのか？「いや、久々に良いダンマク・イクサを見せてもらったよ」ニトリは背後を振り返り、声の主を静かに認識した。そして、「ヒュイイイイイイイ！？」(19/24)

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ニトリには覚えがある。星を描いた角、酒盃を支える腕、囚人めいた手枷、そして豊満なバストをもつその姿を。おおブッダ！ 彼女こそ語られる怪力乱神、ヨウカイ・マウンテンを牛耳っていたオニそのものである！ コワイ！(20/24)

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「ドーモ、ニトリ＝サン。ホシグマ・ユウギです」「ドーモ、ユウギ＝サン。カワシロ・ニトリです」 旧支配者に対する本能的恐怖がニトリのニューロンを駆け巡る！「ヒュイィィ…」 窒息したマグロのように口をパクパクさせながら、ニトリはしめやかに失禁した。(21/24)

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「そこまで怖がらなくてもいい、ニトリ＝サン」「アッハイ」「ひとつダンマクで力くらべといこうじゃないか」「アッハイ」「どうした、こないのか」「アッハイ」動いて死ぬか、座して死を待つか。ソーマト・リコールに溺れるニトリに残された手は一つだけだった。(22/24)

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「Wasshoi！」ニトリは吼え、地面を蹴る！ユウギはその姿を目で追うが、「おん？」 滞空しているはずのニトリは忽然と消えていた。これこそカッパのヒサツ・ワザ、ステルス・ジツである！ 僅かに残ったニトリの生存本能が、活路を求めて体を動かしたのだ。(23/24)

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「オタッシャデー！」脱兎重点！ニトリはスカートの前を湿らせながら、恐るべきカッパ脚力で駆け出した。オニが徘徊するマッポー的な地底でネギトロにされるわけにはいかないのだ。全てのツチグモを殺戮し、復讐を遂げるそのときまでは！今はただ、走れ、ツチグモスレイヤー、走れ！(24/24)