ゆとりを失ったゆとり世代

ゆとり世代の学力低下は逆説的だが「勉強しすぎた」からだ。学校不信に陥り、塾通いで余暇の時間を失った子供たちは遊びから学ぶ機会を失った。遊びは学力の重要な基礎。これを失ったことがゆとり世代の学力を奪った可能性がある。
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shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり世代は学校で教えてもらっていないから学力が低い、ということがまことしやかに信じられている。私にはこの話が信じがたい。ゆとり世代は塾通いが激増し、それまでの世代以上に内容も量もしっかり勉強しているからだ。

2013-04-22 19:58:57
shinshinohara @ShinShinohara

通塾率は全国平均にならすと次の程度の増加だが、http://t.co/MfK9MX8Pcr 大都市だと70%を越えている。http://t.co/jR4SSWeIKo 田舎は塾に通えない環境もあるためで、都市部の通塾率はゆとり世代でかなり上昇している。

2013-04-22 20:06:39
shinshinohara @ShinShinohara

塾では、学校では習わなかった円周率などを教えていた。つまりゆとり世代は塾に通うことで、それまでの世代と同じ質・量の学習内容を学んでいたのである。学習内容が減ったからゆとり世代は学力が低下した、というのは、まやかしだといってよい。

2013-04-22 20:08:39
shinshinohara @ShinShinohara

しかしゆとり世代とそれまでの世代で決定的に違うことがある。学習時間の異様な長さと遊ぶ時間の少なさだ。ゆとり世代は学校が終わると塾に通い、夜10時くらいまで拘束された。その分、遊びの時間を失った。ゆとり教育は結果として学習内容を減らすことにならず、遊びだけを減らしてしまったのだ。

2013-04-22 20:11:43
shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり教育は本来、学習内容を減らすことで遊びの時間、家族とともに過ごす時間を増やし、「文字の学習」以外の学習を増やすことを目的とした。ところが皮肉なことに、塾通いが盛んになることで学習内容は結果として減らず、遊びの時間だけ減った。狙いが完全に裏目に出たのだ。

2013-04-22 20:13:52
shinshinohara @ShinShinohara

この原因は親世代の強迫観念にある。「円周率を3と学ぶようでは、受験戦争を勝ち抜けないのでは?」と不安になり、これまで通りの学習内容を学ぶには塾に行くしかない、と考えたのだ。だが、この強迫観念には大きな誤解がある。受験テストで円周率が3.14のまま出るに違いない、という誤解だ。

2013-04-22 20:18:47
shinshinohara @ShinShinohara

私立はともかく、公立の高校・大学は授業で習った内容だけで受験用のテスト問題を組む。だから円周率を3と授業で習ったのなら、受験でも3として出題する。なのに親は「受験では3.14で出題するに違いない」と勘違いした。3.14で学ばなければ受験に勝てない、と誤解したのだ。

2013-04-22 20:21:40
shinshinohara @ShinShinohara

この誤解を塾産業は利用した。「我々は円周率を3.14で教えます」といえば、親は勝手に「受験は3.14のまま出題するんだ、じゃあ学校だけでは不十分、塾に行かなければ」と解釈する。塾の先生は、公立の試験で授業以外の内容が出題されることはない、ということを知っていて、黙っていたのだ。

2013-04-22 20:24:26
shinshinohara @ShinShinohara

「受験のテスト問題はゆとり教育以前の内容で作られる」という誤解が不安を生み、学校への不信につながり、塾通いを異様に増やす結果となった。この結果、ゆとり教育の目的である家族のふれあいの時間、遊びの時間を増やすという狙いは、完全に裏目に出た。

2013-04-22 20:26:45
shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり世代は、金銭的に余裕があり、近隣に塾のある都市部の家庭だと、たいがい塾通いすることになった。この結果、ゆとり世代は遊ぶ時間を決定的に失ってしまい、文字の学習(座学)ばかりする結果となった。これが学力と意欲をこの世代から奪う最大の原因になったように私には思えてならない。

2013-04-22 20:28:44
shinshinohara @ShinShinohara

なぜ遊ぶ時間を失うと学力が低下するのか?たとえば理科で燃焼という現象を学ぶとき、燃えるものと酸素、熱が必要だと教えられる。文字だけの学習だと、これがなかなか覚えられない。しかしたき火をしたことのある子なら、十分な空気(酸素)と熱がなければ燃焼は続かないことを体験的に知っている。

2013-04-22 20:31:12
shinshinohara @ShinShinohara

薪を組む際、互い違いに木を重ねることで空気の通り道を確保しないと、炎が消えてしまう。ある程度の量、熱い灰が溜まらないと、炎が消えやすい。こうしたことはたき火をしたことのある子供なら体験的に知っている。だから理科で習ったときに理屈が分かって深く納得でき、記憶しやすいのだ。

2013-04-22 20:33:51
shinshinohara @ShinShinohara

理科や数学では濃度の問題が出る。これは料理をやっている子には理解しやすい。ケーキを2人分から3人分に増やすにはそれぞれの材料を1.5倍ずつ増やさなければならない。実際に小麦粉や砂糖を計り取ったことのある子は、濃度の話は納得しやすい。

2013-04-22 20:36:06
shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり教育は本来、家庭で過ごす時間を増やすことで、遊びの中や家の手伝いの作業から、学力の基礎を身につけてほしい、という狙いをもっていた。しかし残念ながら、親の多くは学力のなんたるかを知らず、文字の学習を増やすことが学力向上につながる、と誤解した。

2013-04-22 20:38:04
shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり教育の失敗は「受験改革」を忘れていたことだ。親は受験テストがこれまでの世代が受けたのと同じ学習内容で問題が作られると誤解した。その誤解を文科省は放置してしまった。これでは親が不安がるのも無理はない。学校の授業が受験対策を放棄したかのように受け取られてしまったのだ。

2013-04-22 20:42:47
shinshinohara @ShinShinohara

文科省はもう一つの改革を怠っている。親世代の意識改革だ。学力とは受験戦争を勝ち抜くためのもの、というのが親世代の事実上の意識。生活体験からの学力は大切かもしれないが、それでは受験戦争を勝ち抜けないじゃないか、という意識のままだった。文科省はこの点でも改革を怠った。

2013-04-22 20:46:37
shinshinohara @ShinShinohara

学力を高めるには、遊び、座学、休息の3つのバランスが必要だ。遊びは座学の基礎となり、休息は学習内容の定着に必要だ(長期記憶は睡眠時に形成されると言われる)。しかしゆとり世代は不幸なことに、座学、座学、座学。ひたすら座学。遊びと休息を失って、学力を低下させる羽目になった。

2013-04-22 20:49:04
shinshinohara @ShinShinohara

真に学力を高めたいなら、遊び、座学、休息の3つのバランスを確保すること。そして、受験に関し親がむやみに不安にならないよう、学習内容と受験内容は一致するということ、学校で習う内容をしっかりやれば受験にも対応できることを周知徹底することだ。そうすれば無理な塾通いは減るだろう。

2013-04-22 20:51:51
shinshinohara @ShinShinohara

真に必要な学力とは「与えられた材料でやりくりする力」だと言える。「この道具がないから仕事ができません」というのでは、社会で役に立たない。社会では金も人材もないのが当たり前。ない中をどうやりくりするかが、仕事の能力だ。ただ記憶するだけのこれまでの学習法はこの能力が育たない。

2013-04-22 20:55:42
shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり世代の不幸は、遊びを奪われてコミュニケーション能力を育てられなかったのに、就職でコミュニケーション能力を問われることになったことだ。

2013-04-22 21:05:13
shinshinohara @ShinShinohara

ゆとり教育の時代には河合隼雄氏が「生きる力」を訴えた。この方向性は今も重要だと思う。そのためには遊び、学び、休息のバランスが必要だ。友達と遊ぶことでコミュニケーション能力と工夫する力を、学びで知識を、休息で力の定着を。単なる詰め込みに戻らず、反省に立った教育改革を望みたい。

2013-04-22 22:57:00