Twitterサイバーパンカー

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「さて、ランチ後の軽いダイブとしゃれこもう」。俺はデータグローブをはめ直し、おもむろに「さくらんぼ小学校」の検索を開始した。

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@makula さくらんぼ小学校の大虐殺をテーマにした蛭子さんの絵を飾ってるカフェでカフェワーク＆パワーランチするのがグリーの社風ではてなを辞めた伊藤さんが「すごいところに来てしまった」と言ったとか言わないとかいう話です。

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ホロデッキに手配師のにやけ面が浮かび上がる。「よおキイス。昼飯は？」「宇宙食のピザを流し込んだとこ」「んじゃ仕事だ。こっちのTLでバズってるんだが、〈闇プログラマー〉のことを？」「知らんが、5分あれば専門家になれるさ」薄く笑い、俺はデータグローブをはめ直した。

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ヤマガタ・オルガテック製データグローブから煙が立ち上る。ホロデッキの手配師がわめき立てる。「キイス！ 5分で専門家じゃなかったか？ 〈闇プログラマー〉はバズりどおしだ！」「失敬、ネグロポンテ時間で5Beatってこと」「いずれにせよ時間がかかりすぎだ！」「ログが冗長なんだ…」

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長大なログと中国人の名簿、幾つかのIPアドレスを手配師に渡し、俺は接続を切った。データグローブをはずし、振り返る。「デコイをRTで拡散した。バズは収束しつつある。だが今回のやらかし、らしくないんじゃないか？」〈闇のプログラマー〉こと依頼人は無邪気に笑った。「スタッフのやらかしさ」

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安シャンパンの宿酔いを醒ますため、俺は半日ほどテクノブレイクについて哲学的な思索に耽った。だからホロデッキから手配師が叫んでいるのにしばらく気づかなかった。「…キイス！ 脆弱性が…XS…ont-size:…999px…eover="$.ge…Sc…'ht」手配師の顔が虹色に歪む。

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ログには他にも十数件、クライアントからの通信があった。どいつも虹色で、RTは意味不明。そろそろパレードの季節か？ それとも…俺はデータグローブをはめ、残りのシャンパンで唇を湿らす。今夜のダイブは慎重に…俺は子猫を撫でるような繊細さで、Twitter.comにジャック・インした。

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天鵞絨のような柔らかさでそのリンクに触れた刹那、データグローブが火花とともに爆ぜる。残りローンが24ヶ月、しかし安全には代えられない。念のため防壁を仕込んでおいて良かった。溜息をつくと、情報屋からのホットラインが入る。「見てるか旦那、虹色だ」

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「ああ、たった今、手袋をお釈迦にした」「そりゃ災難。ネタいるかい？」「聞かせろよ。お代は後だ」「ローンが残ってたのか？ まあいいや。俺の見立てじゃ、極東の島が震源だ。木星から3人の王子が降りてきて、電脳あいどるを4人ほど手籠めにした」「何？」

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「ヤツらカンカンさ。おまけにここ数日、尖閣諸島沖で緊張が高まっている」「…半日寝てたが、お前さんのネタがハズレなのはわかるぜ」「昨日までの特捜の検事が今日は犯罪者さ。今時フロッピーディスクじゃマクガフィンにも…ont-size:…999px…eover="$.ge…Sc…'ht」

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情報屋からのホットラインが切れる。俺はもう一度溜息をつき、黒こげになったデータグローブをはずした。これは俺の手に余るヤマだ。今夜は気が抜けたシャンパンを嘗めながら、もう少しテクノブレイクについて思索を深めるとしよう。

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〈闇プログラマー〉がまたやらかしたらしいが、とっくに終息していたのか……俺は装着しかけたデータグローブを放り投げた。

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乾いたチーズサンドを水で流し込む冴えた朝食。ベッドでは昨日ジャンク屋で拾ってきたセクサロイドが規則的すぎる寝息を立てている。時折、寝息の他にキュンキュンという音が聞こえるのは、HDDがデフラグしているのか。新しいデータグローブについての俺のレクチャーを記録しているのだろう。

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酸性雨が降る音を聞きながら、もう一度〈彼女〉のいるベッドへ戻ろうかと考えていると、ホロデッキに手配師のにやけ面が浮かぶ。「よおキィス。おっと、お邪魔だったか」「まあな」「そのアジア人風の横顔はオリエントインダストリィのビンテージものか。データグローブは最新、お楽しみはお古、と」

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癪に障って、俺は反論する。「このモデルは可愛げがある。なにせ卵料理が食えない」「オムライスとか？　何故？」「フォークト＝カンプフTRCまわりに抜けがある。砂漠で亀をひっくり返すってアレ。感情反応が一部過剰で、卵を割ることに罪悪感を示す」「そりゃあ天使のような女だな」

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「混ぜっ返すなよ。あの子は生まれてこない雛を想って泣く。今日日貴重な女だ」「“あの子”ときたか。いずれにせよ食う必要のない機械だ。ただのスクリプトエラー。キィス、お前さんずいぶんとヤキが回ったんじゃないか？」「機械だ。だが名付けた。チーだ。東洋の言葉で“7”、ラッキーナンバーさ」

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「ふむ。重症のようだな。でかいクライアントからの案件があったんだが、他の奴に回すことにする」「話だけでも聞かせろよ」「受けない奴にゃ秘密だ。まあ極東のシナガワ案件とだけ」「ああ、7700万のお漏らしか。確かに今の俺の手に余る」「弱気だな。まあ、お古に飽きたら連絡くれ」

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手配師はログアウトし、俺はクローゼットの奥にしまい込んだガイ・フォークスの仮面に思いを馳せる。過ぎ去りしボンファイアの日々。アラブ、中国、そして……。V。復讐の、勝利の、そして暴力の。だが全ての物事は変わっていく。人も、俺も。

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移り気で、今や電脳ネットを自由に駆けるだけの運動速度も持たない停止しかけの個人に、新品のデータグローブはもう不必要なのか。俺はベルベットにくるまったチーが立てる規則的な寝息に耳を澄ます。“お古”のvaginaを想う。ベッドに潜り込む。V。そうだ。今俺が記すべきVはこれだ。「＞＜」