重信康先生の語る『TRPGのデータ作成における“落とし込み”と“取捨選択”』

ビーストバインド・トリニティ、ゾンビサバイバルなどでおなじみの重信康先生の語る、TRPGのデータデザイン・"落とし込み"と"取捨選択"について
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重信康(公開用) @k_shigenobu

ここ二ヶ月で出た新作ロボットものTRPG三種類すべてに、スナイパー機のサンプルキャラが共通して用意されてるのが面白い。クルツ、ヨーコ、ロックオン、ミシェル、真希波などの活躍はもちろん、FPSをはじめとする協力型ゲームにおける狙撃手の貢献イメージが浸透した影響もありそうですね。

2013-05-15 12:46:23
重信康(公開用) @k_shigenobu

ロボットものに限らず、ゲームの駒、パーティの一員として見た時にスナイパーは非常に面白い役割で(活躍や見せ場を個性化・差別化しやすい、戦術に幅を出せる、狙撃は攻撃以外にも敵の妨害や味方の進路確保などの多彩な表現が可能など)、今後もさらなる発展が見込める題材だと思います。

2013-05-15 12:54:15
重信康(公開用) @k_shigenobu

個人的には、パーティプレイの面白さ、連携の実感を得やすい所もスナイパーの利点かと思います。多くの場合スナイパーは強みと表裏一体の弱点も多く、前戦を構築してくれる仲間がいてこそ輝き、また仲間をアシストし輝かせる存在だからこそ、TRPGにおける協力プレイとも相性がよいのではないかと。

2013-05-15 13:05:34

重信康(公開用) @k_shigenobu

先日、ロボットものTRPGの狙撃メカに関する話題に思いの外反応があったので、そこから発展して『TRPGのデータ作成における“落とし込み”と“取捨選択”』の話をちょっとしようかと思います。長文連続ご容赦下さい。

2013-05-18 23:42:17
重信康(公開用) @k_shigenobu

最初にお断りを。以下はあくまで自分の個人的ノウハウの開陳であり「こうしないといけない」「これが唯一の正解だ」「これは万能の手法である」「そうでないゲームは間違っている」などという意図は毛頭ありません。あくまで参考程度にどうぞ。また、自分が完璧に実践できているわけでもありませんw

2013-05-18 23:43:50

重信康(公開用) @k_shigenobu

さて、たとえば「狙撃」というファクターを特技やスキルの類として表現する時、どのようなデータに“落とし込む”のか? すぐ思いつくのは「長射程/高命中率の射撃攻撃を繰り出す(あるいはその準備行動をする)」等でしょうが、ここで一旦立ち止まって考えてみましょう。本当にそれでいいのか?と。

2013-05-18 23:46:10
重信康(公開用) @k_shigenobu

漫画や映画、電源ゲーム、小説やアニメなどのスナイパーキャラを思い浮かべてみてください。彼らの活躍シーンは、ただ遠くのものを正確に撃つ、というだけではないはずです。足下を狙い移動を阻害する、武器を撃ち使用不能にする、仲間が動くための隙を作り出す、攻撃を銃弾でそらすetc。

2013-05-18 23:48:16
小太刀右京/Ukyou Kodachi @u_kodachi

@k_shigenobu 子供の頃読んだこち亀で(60~80巻あたり)、逃げる犯人を両さんが追う、犯人車に乗り込む、そこでエンジンキーをボルボ西郷が狙撃、犯人車から飛び出すとそこに両さんが、というシークエンスがあって、いたく感動したものです

2013-05-18 23:49:44
重信康(公開用) @k_shigenobu

@u_kodachi 狙撃キャラの見せ場が「状況や戦場そのもののコントロールと多様な手練手管による直接的・間接的な妨害/支援」であることは少なくないですね。よって非常に表現幅が広いです。

2013-05-18 23:52:56
重信康(公開用) @k_shigenobu

「できること/メリット」ではなく「できないこと/デメリット」からの視点も重要です。長射程射撃武器限定、移動した直後には狙撃不可、狙いに時間がかかり前後に隙が生じる、超接近距離からに対しては使えない、極度の集中を要しコストが大きい等々。それこそが“らしさ”であることは多々あります。

2013-05-18 23:51:29
重信康(公開用) @k_shigenobu

また「相手を催眠にかける」という能力なり魔法ならどうか? 何らかの状態異常を与えるのか、一定範囲の命令を実行させるのか(その範囲は彼我のレベルや達成値に左右されるのか、無制限なのか、GM判断なのか)、達成値操作か、敵集団の完全無力化か、自傷させてダメージを与える攻撃なのか。

2013-05-18 23:55:27
重信康(公開用) @k_shigenobu

そして、こうした「自分の中にあるイメージ」をPCを通して表現したがるのがプレイヤーのサガです。「このゲーム、●●みたいなことはできないの?」と聞かれたことのあるGMは少なくないと思います。何をどれだけ、どのような表現で用意するのか? その“取捨選択”こそがデータ製作の肝です。

2013-05-18 23:59:44
重信康(公開用) @k_shigenobu

もちろん、思いついた要素の何もかもを網羅し投入することは事実上不可能です。商業作品なら紙面の制約があり、仮にそれを度外視できたとしても、過剰なデータは逆に個々の差別化やバランス取りを困難にするでしょうし、読み手が把握できる情報量にも限界があります。ゆえに取捨選択は必定です。

2013-05-19 00:01:57

重信康(公開用) @k_shigenobu

では何を基準に選定すればいいのか? ここで重要になってくるのがゲーム全体のコンセプトです。対象とするユーザー層、そのゲームにおける一般的なセッションの構造、想定プレイ時間、どんな立場のPCでどんなシナリオを遊んでもらうつもりなのか、何を表現したい・させたいゲームなのかetc。

2013-05-19 00:03:37
重信康(公開用) @k_shigenobu

「戦闘がメインのゲームなので、戦闘時に活用できる効果を優先して採択する」「初心者でも取り回しやすいものを目指すため、曖昧・難解な処理は避ける」「ミリタリーテイストを強調したいので、スナイパーが多彩な能力で多方面に活躍できるように狙撃関係の表現を優先的に充実させる」

2013-05-19 00:05:27
重信康(公開用) @k_shigenobu

または「心を持たない機械生命体と戦うゲームなので、催眠能力は最初から用意しない」「いやこのゲームのPCは機械にすら精神操作をかけられる超人なので、それを理解させるためにも必要だ」「精神支配はヒーローの技にあらず、NPC専用のみ」といったレベルでの取捨選択もコンセプトが左右します。

2013-05-19 00:08:00
重信康(公開用) @k_shigenobu

コンセプトと仕様は、ゲームを取り巻く外部の要因に立脚するものもありえます。「Aという既存ゲームのユーザーに興味を持ってもらうことを主眼とした企画なので、Aと似た仕様を意図的に多く入れてエントリーのハードルを下げる」「逆にAとの差別化を狙うのでむしろ共通項は減らす」といったふうに。

2013-05-19 00:10:58
小太刀右京/Ukyou Kodachi @u_kodachi

@k_shigenobu 前者は天下繚乱とアルシャードffの関係ですやね。あれは大ラグナロクが始まったので、「じゃあアインヘリアル的なものを入れよう」で30レベルまでキャップが解放されたりしたんで

2013-05-19 00:13:20
重信康(公開用) @k_shigenobu

@u_kodachi 天下繚乱はまさにそうした前提がありましたもんね。コンセプトがしっかり決まっているのでデータメイカーとしてはやりやすい仕事であったといえます。

2013-05-19 00:14:42
重信康(公開用) @k_shigenobu

こうして多角的に検討した結果、最初に考えていた仕様に立ち戻ったり、一番シンプルでよくある表現に落ち着くことも十分考えられます。ですがそれは、ただなんとなくでそうしたのとは少なからず違った価値を持つはずです。そうした思考と決断の積み重ねこそが全体の完成度を高めていくのですから。

2013-05-19 00:13:51
重信康(公開用) @k_shigenobu

逆に言えば、コンセプトが決まらなければ「ただなんとなくでそうする」しかなく、クオリティの低下を招きます。そしてあなたがもしデータ仕様の決定に迷うようなら、それはあなたの中でそのゲームのコンセプトが明瞭に決められていない(or他スタッフとの間で統一見解がとれていない)のです。

2013-05-19 00:15:54
重信康(公開用) @k_shigenobu

そしてこの「作り手に迷いがあるかどうか」はゲームを遊ぶユーザーにも自然と伝わるものなのです。それが最終的に「このゲーム、●●はないの/できないの?」と言われた時に「ないね……なんでだろう?」となるのか「ないよ、きっとこういう理由でね」となるのかを分けることは十分あり得ます。

2013-05-19 00:18:48