テクノロヴェイク

ザクっとまとめてみた。
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U @ebleco

彼女は軍用機で女性型。彼氏は情報処理端末で犬型。仕事中は軍事装甲ばかり身に付けてるせいか、プライベートでは装甲の隙間から端子が見えそうだったり、伸びた有線端子のキャップがシースルーになってたり、セクシーすぎる恰好でデートにやってくるので彼氏が毎回やきもきする話。#テクノロヴェイク

2013-05-21 13:25:08
U @ebleco

「……あのさぁ」「何?」「首を隠せ」「何で?」「見えそう」「えっ? 装甲開いてた?」「開いてないけど! 何だよ! 隠すくらいなら最初から首の開いた装甲を着るな!」「……えっち」「何でだよ!」「だって、私の端子じっと見てたんでしょ?」「相機の端子を見て何が悪い!」#テクノロヴェイク

2013-05-21 13:32:10
U @ebleco

正直、俺の相機はかなり人目を引く。曲線形のフォルム。重心移動に破綻の無い二脚歩行のフレーム。一目で軍用と判るジルコニウムコーティングの素体。それが、一歩間違えば端子が見えてしまいそうな首元の開いた装甲を着て歩いているのだから、「見るな」と言う方が酷というものだ。#テクノロヴェイク

2013-05-21 13:49:52
U @ebleco

よくもまぁ、俺のようなしがない公務員(今の時代じゃ大半のロボットは広義では公務員に該当するが)に、こんな美人が付き合ってくれたものだと思う。一言で言えば、メモリの相性が良かった。たまの休み。こうして二人で街へ出かけ、買い物に付き合い時間を潰した後は、お察しだ。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 13:56:32
U @ebleco

「ねぇねぇ、これなんかどう?」「……もうその装甲は着る意味があるのか?」「えー、かわいくない?」「もう浮いてるだろ! そんな所に電源使うくらいなら首を隠せよ! 首を!」「……何? そんなに気になる?」「……アタッチメントを、緩めるな。恥ずかしくないのかお前?」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 14:01:21
U @ebleco

「大丈夫よ、下からしか見えないから」「娼婦が」「ほれほれ」「やめろ。ここの店員はお前より背が低いから」「来たら隠すわよ」「……お前、他の機体にもそういう事してるんじゃないだろうな?」「誰彼構わず回路を開く機体に見える?」「……解った。解ったから、装甲を閉じろ」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 14:07:48
U @ebleco

「じゃ、これ試着してくるわ」「好きにしろ」静かな駆動音と共に、試着室へと滑りこんで行く姿を追う。正直、客層が二脚型ばかりのこの店の中では、四足歩行の俺は人目が痛い。蒸気圧の抜ける音を発てて開閉する扉に後脚部を凭れ掛け、俺は店内に流れる電子音に聴覚の焦点を傾ける。#テクノロヴェイク

2013-05-21 14:19:03
U @ebleco

「じゃーん」開閉アラートに急かされるように後脚部を扉から離した俺は、試着室の中に視線を向ける。開いた扉の向こうには、まず表情駆動を全く機能させていない動物めいた俺の頭部パーツがあった。その手前に、脚部。首を曲げれば、腰に手を当てた相機がこっちを見降ろしていた。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 14:24:29
U @ebleco

鏡から視線を上に向けた俺は、態とらしくグラスセンサーにラインを走らせた相機の首元に焦点を合わせる。「どう? かわいいでしょ?」「……娼婦め」どうしても、快楽系にフィードバックが流れる。演算済みだ。この装甲は、足元からしか首の端子が見えないように設計されている。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 14:29:09
U @ebleco

「……端子が見えてるぞ」「そこからしか見えないでしょ?」「俺以外がお前の足元に立ったらどうするんだ」「立たせないわよ。どう? 今日は端子キャップがシースルーなの」「誘ってるのか?」「……したい?」「早く着替えろ」「ちぇっ」娼婦め。二足歩行型ってのは皆こうなのか?#テクノロヴェイク

2013-05-21 14:34:23
U @ebleco

えー、二人以上反応してくれたので、今後お兄さんは羞恥心と戦いながら『テクノロヴェイク』を不定期連載しなきゃいけない事になりました。思ったよりこれはあかんやつだった。自分でもびっくりしてる。最初は「俺だけエロいと感じる程度でギリギリかな」とか思ってた。やってみたら完全アウトだった。

2013-05-21 15:21:03
U @ebleco

相機は、ホテルというカテゴリーに類する施設を利用したがらない。俺の嗜好では画一化されたシートに体を埋め、隔離された有線に接続する自動的なサービスは嫌いではないのだが、奴は「誰が使ったかも解らないケーブルを端子に通すのは嫌だ」と、まるで生き物のような嗜好を語る。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 16:51:27
U @ebleco

たまの休日。予定が合えば買い物に出掛け、その後は俺の家か、相機の家へと移動する。理由はお察しだ。「いつ来ても何も無いのね」と文句を言われない点において、俺は相機の家で過ごす事の方が好みだった。それに、備え付けられた特殊低反発シリコン製のソファーも、嫌いではない。#テクノロヴェイク

2013-05-21 16:57:25
U @ebleco

「……ねぇ」「何だ?」ソファーに俺を抱えて沈んだまま、相機は視覚野の端に浮かぶニュースを眺めながら声を上げる。話題を1から説明されるのが面倒なので、俺は相機の眺めているニュースと自分の視覚野を同期する。「……もう戦争とか要らないと思わない?」「お前の仕事だろ」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:02:26
U @ebleco

「だって、物理的な戦闘行為なんて絶対古いって」「だったら電子戦だけで勝敗を決めるか? 今の戦闘行為が、集積回路の演算能力競争になるだけだ」視界の端では、見栄えの良い事務用機が丁度各国の情勢についてアナウンスを続けている所だった。「それでも、壊れるよりマシだよ」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:06:45
U @ebleco

「技術の発展の為にも、戦争行為は必要だ。例えば俺の素体の元になった設計だって、今からa789年前の軍事技術を流用して開発されたものだ」「……レガシー型」「何だと?」相機は、俺の前脚部の根元を持ち上げて、脚部を宙に上げた。重心が移動する。素体がソファーに、沈む。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:10:21
U @ebleco

素体部品同士がぶつかって、小さく金属音を鳴らした。特殊低反発シリコンが、ゆっくりと形を相機の素体に合わせて変形する。相機はいつも、部屋に帰るなり装甲を脱ぐ。ジルコニウムコーティングの施された四肢には、軍用機としての機能美がある。壁に掛けられた装甲。薄暗い、照明。#テクノロヴェイク

2013-05-21 17:14:33
U @ebleco

装甲部が、相機の胸部にある端子に触れる。本来なら、装甲との結合部であり、装甲をパージした後の端子にはキャップを付けて置く事が望ましい。そこから流れる微細な電流が、俺の快楽系に疑似信号を送る。「……なぁ」「なぁに?」「……やっぱり、バックアップは取らないのか?」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:20:33
U @ebleco

「……要らないよ」「俺が持って置いても良い。どうせ大した容量にはならない」「言ったでしょ? もし私が壊れたら……もし私が壊れて、復元すら出来ないような状態なら、あなたから私のデータを消して」「俺の持ってるお前のデータは、国家機密には接触しない」「単純に嫌なの」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:25:01
U @ebleco

「私達ロボットには、特別が必要なの」「お前は充分特別だよ」「違うよ、クヴィン。機体性能としての優位性じゃない。私は、あなたにとって特別になりたいの」相機は、素体に照明を反射させながら、俺を呼称で呼んだ。駆動する指先が、俺の装甲のロックを外す。「私を特別にして」 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:32:01
U @ebleco

相機の腰部関節が駆動する。「……私は、あなたに復元されたくない」機体のサイズは大して変わりはしないのに、軽々と俺の首部の装甲に腕を回したまま体勢を転回して見せた点においては、軍事機のスペックを感じざるを得ない。「今の私を特別にして」ゆっくりと、腕が沈んで行く。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:41:40
U @ebleco

「解ったよ」頭部が、また小さく金属音を鳴らす。ジルコニウムコーティングの施された素体は俺の装甲部に触れても傷一つ付かない。姿勢制御センサーが、押し付けられた相機の重量を検出する。「……ねぇ、しよ?」態とらしく、相機はグラスセンサーに薄桃色のラインを描いて見せた。#テクノロヴェイク

2013-05-21 17:46:50
U @ebleco

脚部が、俺の稼働域を妨げるように、ソファーに沈んで行く。これではどちらが四足歩行型なのか解らない。前脚部を肩に乗せながら、俺は口顎部で相機の首元の端子キャップを外した。別に前脚部のマニピュレーターを使ってもいいのだが、こうした方が快楽系に刺激が通り易いらしい。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 17:55:22
U @ebleco

ケーブルが、俺の首元から引き伸ばされる。試行段階は疾(と)うに過ぎている。接続に視覚情報は必要無い。最適化済。まだ接続されていないのに、快楽系に信号が流れる。「ずっと見てた」首の端子にそれを触れさせながら、相機はまた態とらしくグラスセンサーにハートを表示した。 #テクノロヴェイク

2013-05-21 18:03:31
U @ebleco

「早く繋げ」「やだ」端子同士を打ち合わせるように、相機は物理的接触を何度も繰り返す。その度に、表示させたハートマークにノイズが奔って揺れる。「ずっと見てたよね?」「……ああ、見てたよ」「識別(なまえ)で呼んで」「頼むよ、ミリティ」「接続を許可します」「光栄だね」#テクノロヴェイク

2013-05-21 18:44:09
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