ヴィルヘルム・ライヒという偉大な狂人について8時間徹夜でツイート

稲葉渉という廃墟写真家が、2枚の謎な機械の写真を通して、8時間飲まず食わずで徹夜でツイートした記録。でも5分もあれば読めます多分。 ヴィルヘルム・ライヒという心理学者の数奇な人生と、彼の発明したマッドサイエンス「オルゴン理論」の意味のわかんなさ、そして後にポップカルチャーに対して与えた影響、スチームパンクな謎の写真の驚くべき正体などなどについて、何かに取り憑かれたかのように、マジで一人で延々語ってます。 あと、途中で「クラウドバスター(正式名称」と「オルゴンバスター(まちがい」が混ざってますが、「クラウドバスターが正解です。」 続きを読む
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稲葉渉 @inabawataru

ここまで来るとオカルトであることが理解できると思うが、ビリーバーたちが切り札にする言葉がある。「アインシュタインに見せた」という話だ。これは実話で、オルゴンの存在が世界を揺るがすと確信したライヒがアインシュタインに手紙を出し、アインシュタインが実際に会ったという実話がある。

2013-06-05 09:22:10
稲葉渉 @inabawataru

アインシュタインとライヒは、同じナチに迫害されたユダヤ人科学者という共通点もあったし、それまでの実績もあり、なんとライヒの「オルゴンの有無で容器の温度が変る」という実験を助手が一週間かけてちゃんと追試した。結果は当然の気のせい。アインシュタインは慇懃なお手紙を返した。大人やなあ。

2013-06-05 09:31:14
稲葉渉 @inabawataru

当然の結果に対して、ビリーバーは色々難癖をつけて「世紀の発見をアインシュタインが封殺した!イルミナ(以下略」の反応だが、それは別によろしい。以後ライヒは死ぬまでオルゴンの研究を続けるのだが、アインシュタインにダメ出しされても続ける根性というのは褒めてもいいのではないか。

2013-06-05 09:34:16
稲葉渉 @inabawataru

さて先ほど「オルゴン・オラナー・デッドリーオルゴン」という、どっかの携帯ゲームのモンスターみたいな形態に中二病的進化すると説明したオルゴンだが、やはりデッドリーオルゴンはライヒの精神を攻撃しに来るのだ。ありもしない黒い雲をデッドリーオルゴンの塊と認識し、それを倒す技術を開発する。

2013-06-05 09:41:19
稲葉渉 @inabawataru

「その技術」は、ライヒの死の数年前に真価を見出される。ライヒは54年、UFOを発見するのだ。そしてとうとう科学的な考証など完全にすっとばした直感」によって、「デッドリーオルゴンは宇宙人が兵器として利用してるのや!」と理解し、「クラウドバスターでUFO撃墜や!」と言い出す。

2013-06-05 09:52:39
稲葉渉 @inabawataru

そしてこれが、人類を侵略する宇宙人から救う「クラウドバスター」や!!! http://t.co/cEMH4EiILT

2013-06-05 09:53:57
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稲葉渉 @inabawataru

そしてこれが、「オルゴンエネルギーの概念図」や!! http://t.co/KYg4fz2Dsc

2013-06-05 09:54:48
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稲葉渉 @inabawataru

http://t.co/KYg4fz2Dsc これが  http://t.co/cEMH4EiILT  「大勝利や!!!」

2013-06-05 09:56:42
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稲葉渉 @inabawataru

原理としては「オルゴンでデッドリーオルゴンを中和する事で、デッドリーオルゴンを動力とするUFOを撃墜するのや!」ということらしい。ちなみにこれは鉄パイプでできていて、映らない下部はくねくねして流水でアースしている。それがどうしてオルゴンを放射するかは説明してもわからんからいい!

2013-06-05 10:00:30
稲葉渉 @inabawataru

本来、「乱交しまくりで世界平和という橋下機長的ユートピア建設のために平和利用されるべき性欲のカタマリ物質」とも言えるオルゴンだが、最終的に兵器利用されてしまうのはなんて悲しいんだ!!くそう宇宙人め!!俺もコーナンで鉄パイプ買って黒雲を破壊したい!!みんなもやろうぜ!!

2013-06-05 10:03:55
稲葉渉 @inabawataru

地球防衛軍の結成をTwitterつぶやいたが、このクラウドバスター的超能力を持つと主張した男がいる。「エスパー伊藤」だ。今でこそ余興芸人として立場を確立したが、かつてはマジエスパー成分をキャラに内包しており、超能力刈り男の大槻教授を前に、実際に「雲を消した」事があるのだ。

2013-06-05 10:07:44
稲葉渉 @inabawataru

厚顔にも超能力特番に超能力者として登場したエスパー伊藤は、大槻教授の前で実際に小さい雲に両手を当て、雲を完全に消した。大槻教授もそれを認めたが、気象学者でもないという科学者らしい立場で調べると、「小さい雲なんか勝手に消える」という結論を導き出したのを覚えている。

2013-06-05 10:10:17
稲葉渉 @inabawataru

エスパー伊藤とライヒ、大槻教授とアインシュタイン。時空を超えた「疑似科学と科学の代理戦争」は、当然のように科学の勝利に終わったわけだが、クラウドバスターは「気象兵器」としても利用出来ると本気で考えていたようで、「雨を止めた!」という主張は、ライヒの生命に関わった。

2013-06-05 10:14:34
稲葉渉 @inabawataru

ライヒは56年に「獄死」するのだ。

2013-06-05 10:15:41
稲葉渉 @inabawataru

ライヒは、オルゴンバスターによる兵器利用を提唱したが、それは防衛や気象操作で世界から飢饉をなくすというもので、根底には「誰かを助けたい」という強い気持ちがあった。その証拠に、オルゴンエネルギーを平和利用する計画もあった。ORANUR計画という、放射能除去プロジェクトだった。

2013-06-05 10:22:22
稲葉渉 @inabawataru

そして失意のうちに獄死するきっかけとなる、オルゴン医療の研究がある。追放されたとは言え、現在まで形を変えて続く「ライヒ派」独自の精神分析の流れを組む治療理論に、オルゴン理論を合体させた「生物学的オルゴン療法」と、オルゴンを利用した装置を使った「物理学的オルゴン療法」だ。

2013-06-05 10:35:02
稲葉渉 @inabawataru

イヤな感じが比較的しない生物学的オルゴン療法ってのは、実はこれもまた評価されるべきライヒの成果であって、ボディーワーク、つまり運動や行動を取り入れた心理療法の一種と言っていい。現在の療法にも影響を与えているし、ぶっちゃけ未だにオルゴン言ってる人たちも存在してて、やはり功罪はある。

2013-06-05 10:40:26
稲葉渉 @inabawataru

嫌な感じしかしない「物理学的オルゴン療法」は、まさにオカルトだった。オルゴンを蓄積することができ、「人が中に入れば性障害が治る治療器具」が、その主な正体だった。

2013-06-05 10:54:03
稲葉渉 @inabawataru

これが「ガンだってEDだって治す、オルゴン・アキュムレーター」や!!! http://t.co/W6b2pTkxun

2013-06-05 10:57:35
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稲葉渉 @inabawataru

小型の便器にしか見えないオルゴン・アキュムレーターの販売は、さすがにガン治療を謳ってしまった以上法にひっかかった。FDA・食品医薬品局がライヒを逮捕し、オルゴン治療器は販売禁止になった。しかも赤狩りやってたような時代なので、ついでにライヒの全部の著作も販売禁止になった。

2013-06-05 11:03:08
稲葉渉 @inabawataru

こんなもん焚書やないか!との論争もあったが、ミッキーマウスも魔女狩りの快楽におぼれていた時代では、そういった事がまかり通った。ナチに公然と反抗した運動家のユダヤ人の経歴を持つ「アカ」どころか、セックスで世界平和という思想の「ピンク」だったライヒの、オルゴン以前の書まで禁止された。

2013-06-05 11:07:18
稲葉渉 @inabawataru

しかし、ライヒはこの件で直接刑務所に入れられて獄死したわけではない。ライヒはナチとすら戦ったユダヤ人なので、政府の販売禁止を無視し、そのことを法廷侮辱罪として再逮捕され、結局収監されて獄中にて死亡したのだ。

2013-06-05 11:10:28
稲葉渉 @inabawataru

母の浮気と、それを密告したことによる父と母の自殺によって一生抱えたトラウマ。トラウマの治療を行う最新の学問である精神分析理論を打ち立てたフロイトとの出会いと蜜月、そして追放。社会運動の挫折。戦争、追放。ユダヤ人。そしてマッドサイエンスへの傾倒どこ触っても物語になる男だ。

2013-06-05 11:16:30
稲葉渉 @inabawataru

しかも彼は、今でこそ両手で称賛されていないにせよ、社会運動において、そして精神医学において、重要な発見をしたし、後の理論のための重要な種を撒いた。性理論は60年台にほじくり返されて、反戦フリーセックスなどの「文化まで大きな影響を与えたのは事実だ。

2013-06-05 11:22:46
稲葉渉 @inabawataru

オルゴン」は確かに、当時も、そして現代の科学においても疑似科学として扱われるが、彼の残したものを拾い集め、再構築して仕分けてみれば、彼の残したものは非常に大きい。もちろんオカルトに対するものもだが、ナチに一発食らわせたロックな人生の足あとを辿ると、なんか憎めない気はしてくる。

2013-06-05 11:28:22