オレの妹がカリフなわけがない!#26

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カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「オレの妹がカリフなわけがない!」#26

2013-06-13 03:05:51
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「君たちは結婚します」 ノックをして研究室に入ったオレとメクに向かって白岩先生はいきなり宣言した。 「なっ、なにを言い出すんですか、突然!! って言うか、こいつが誰か知ってるんですか?初めて連れてきたのに」 「いったい何ものだね」 「知らんのかい!」 思わず叫ぶオレ。1

2013-06-13 03:17:45
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「こいつが誰かも知らないで、なぜいきなり結婚という話に?! やっぱり、それも先生が《時の徴を読み解く者》だから分かる、とか言うのですか?」 「半分正しく、半分間違っていますね」白岩先生はいつものように焦点の合わない目で虚空を見つめて歌うように話し出した。2

2013-06-13 03:20:58
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「先ずは百%確実な推論です。DIA、FSB、SISに至る私の情報網をもってしても、この地上に垂葉君が声をかけて付いて来るヒト科の生き物は一人もいませんでした。 その状況が一転したのには、一つしか理由は考えられません。突発性の狂気、《恋愛》にその娘が取り憑かれたということです。」3

2013-06-13 03:41:42
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「二百%違う!! 私とこいつはただの幼なじみです! 」 今度はメグが叫ぶ。 「幼なじみには百%恋人フラグが立つということはラノベを読み込んでいれば自明な事実です」 「それ事実じゃなくて創作です、ていうか、あんた現役の高校教師なんだから、ラノベじゃなくて実体験から物を見て下さい」4

2013-06-13 03:52:43
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「人間は文字を発明したことで、狭隘な個人の体験の束縛から逃れ、時と場所を超えた普遍的事実へ到達する回路を手に入れたのです」 「この先生大丈夫?」 このヒトと議論する愚を一瞬で悟ったメクはオレに小声で囁いた。 「いや、知識に偏りはあるけど愛紗にイスラームを教えたのはこいつだから」5

2013-06-13 04:14:42
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

オレたちの会話を気にもとめず先生は続けた。 「狂気に憑かれた女性からの求愛を拒む主体性など垂葉君にはありません。君たちがリア充関係であることは理性の証明するところです。しかしリア充関係から結婚には論理の飛躍があります。その洞察は《時の徴を読み解く者》にのみ与えられるのです」6

2013-06-13 04:33:57
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

そもそも話の前提が百%まちがっているが、オレたちの関係について話をするためにここに来たんじゃない。 メクと目配せで同意した。幼なじみならではの以心伝心だ。 オレたちのリア充関係話をスルーして、オレは尋ねた。 「先生。どうか天馬家に伝わるカリフ伝承について話を聞かせて下さい」7

2013-06-13 06:25:20
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「アラビア語文法の動詞派生形の基本変化すらまだマスターしていない君にカリフ伝承の話をしても理解など出来ません。理解できないことは問題ではないのです。問題なのは理解できないことすら理解できず、誤解して理解したと思い込むことです。君にはカリフ伝承を語るべき時はまだ訪れていません」8

2013-06-13 04:54:29
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「しかし天馬家のことはお話しましょう。夢眠君は君に何を話しましたか」 オレは父が語った天馬家の歴史の言い伝え、そしてそれが作り話であること、カリフ制など時代錯誤な過去の遺物であること、などを先生に話した。 「なるほど、夢眠君らしい浅はかな考えですね。昔から全く進歩がない」9

2013-06-13 05:03:13
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「先生は昔から父を知っているのですか?」 「夢眠君は東大イスラム学科の2期下の後輩です」 「えぇ~父もイスラム学科卒なんですか?!」 「そうです。私と慈覇道君は同級、夢眠君2級下で皆この君府学院で真筆先生からアラビア語の手ほどきを受け私と夢眠君はイスラム学科に進学したのです」10

2013-06-13 05:33:00
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「しかし夢眠君は出来が悪く、イスラームを理解するには知性も霊性も欠けていました。だから彼は当時のイスラム学科の主任教官だった凡庸なオリエンタリスト中村廣痔瘻の下でケマル・アタチュルクとイスラームの近代化と題した卒論を書き終えると、研究を続けず、君府学院に戻って就職したのです」11

2013-06-13 05:34:01
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

夢眠君はお人好しだが頭が足らなかった。だからマモンに仕える世界覇権国の祭司たちがこの学校に送り込んできた手先たちの策謀に気付かず、学校を乗っ取られてしまったんだ。着の身着のままで追い出された夢眠君は天馬家の蔵書、古写本を全て私に託した。私はその番人でもあるんだ」12

2013-06-13 06:06:20
カリフラノベ『オレカリ(略称)』 @caliphnovel

「愛紗さんはそれらの蔵書、古写本を読んだ。今、君たちに話せるのはここまでだ。今日からアラビア語の生徒が二人になるわけか。では垂葉君、これまで教えたこと、その娘に全て君から教えてあげて下さい。 さて、お茶にしよう。お茶請けはいつものバクラヴァでいいね?」13 (#26終#27に続)

2013-06-14 02:20:06