「独白~新選組隊士たちのつぶやき 第五章 斎藤一~慶応四年四月~総司!」
お待たせいたしました。 「独白~新選組隊士たちのつぶやき」第22回 第五章「斎藤一~慶応四年四月~総司!」第1回 ゆるゆると始めていきたいと思います。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:06:19五章前文 慶応四年正月三日に始まった鳥羽伏見の戦いは、四日、新政府軍の本営である東寺に錦旗が掲げられ、大勢は決した。それまで静観していた諸藩がいっせいに倒幕に流れたのだ。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:07:29伏見奉行所を本陣とした新選組は、負傷して大阪城に運ばれた局長近藤勇に代わり、副長土方歳三が指揮を取っていた。 三日、新選組は、御香宮神社に布陣した薩摩軍相手に奮戦したが、火力の差は如何ともし難く、淀方面に退却を余儀なくされた。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:08:45その後も旧幕府軍は負け続け、ついに大阪城への退却を決めた。 七日、新選組の隊士達も大阪城に入った。 さて、これから反撃に出ようと思ったのも束の間、隊士達は信じがたいことを聞かされる。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:10:07上様が逃げた。しかも、会津候、桑名候を引き連れて。 慶喜将軍の実家の水戸徳川家は代々尊王の志篤いお家柄、朝敵となることが何よりも怖かったのだ。敵陣に錦旗がたった、それだけで戦意を喪失した。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:11:19主に置き去りにされた旧幕府軍は、江戸へ戻るしかなかった。 新選組も、十一日、船で江戸に向った。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:12:00江戸での一月あまりは、隊士たちにとって、束の間の休息のときだった。 斎藤一は、仮屯所である鳥居丹後守役宅で、何をするでもなく時をすごしていた。行くべきところはあった。沖田総司の病床だ。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:12:52労咳が悪化し寝たきりとなった沖田は、近藤とともに、鳥羽伏見の戦い時には大坂城にあり、江戸到着後は神田泉橋の医学所に入った。が、近藤が隊に復帰する際に一緒に医学所を出て、近藤の知り合いの植木屋の離れに預けられていたのだった。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:13:46だが、斎藤は、一度もそこへ顔を出さなかった。病の沖田を目の当たりにするのが怖かったのだ。永倉新八や原田左之助のように隊士達を引き連れて飲みに行くこともしない。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:15:10足繁く沖田の許へ通う土方の背中を見送りながら「明日こそは、自分も」と思い、翌日になると、また同じように土方の背中を見送っている、そんな毎日だった。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:16:01新政府軍の江戸入りが間近に迫っていた。 すでに恭順を決めている旧幕府首脳にとって、主戦派の新選組が江戸に居ては、何をするか知れたものではなく、心配だ。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:17:29幕府の全権を委ねられた勝安房守は、知恵を絞った。 その結果、新選組は、甲府城を取るという仕事を与えられ、体よく江戸を追われた。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:18:18甲府への道中、近藤・土方の故郷を通る。 負け戦で逃げ帰ってこようが、幕府が既に存在しなかろうが、百姓身分の彼等が旗本になって帰って来たのだ。故郷に錦を飾ったことに違いはない。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:20:16連日飲めや歌えやの大歓迎にあい、行軍が遅れ、三月五日勝沼に到着した時には、既に城には敵が入っていた。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:21:24空家同然の城を押さえるつもりが、城攻めをしなくてはならなくなった。 城攻めには人数が要る。 土方が援軍を求めに江戸へ引き返した。そして、土方が不在のうちに戦いは始まり、新選組は一刻足らずであっけなく敗走した。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:22:17途中、江戸試衛館以来の同志である永倉新八と原田左之助が隊を去った。些細なことで近藤との間に諍いが生じたのだ。皆、自分達の不甲斐ない敗戦に苛立って、冷静さを欠いていた。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:23:04近藤と土方は、近いうちに陣を建て直し会津に向かうつもりらしい。 とすると、江戸はこれが最後だ。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:23:56斎藤は、沖田に会わねばと思った。 思い立ったが、いざとなると会うのが恐ろしい。しかし、今会っておかないと絶対に後悔する。そう思い、何度も何度も決心して、漸く今会って来た。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:25:10辛かったけれど、会って良かったと思った。 とは言え、やはり辛かった。 頭では理解していた。沖田の様態がどうなっているか想像はついていた。しかし、それを目の当たりにすることは、やはり衝撃だった。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:26:02斎藤は、沖田が預けられている植木屋平五郎宅の離れを出たところで、しゃがみ込んだまま、もう、かなり長いこと動いていなかった。 #試衛館の青春
2013-06-10 18:26:53第五章 斎藤一 ~慶応四年四月 総司!~ なんで、総司が・・・。 何度も何度も、俺は心の中で繰り返した。 なんで、なんで、総司が、こんなところで、一人、病で死ななきゃならないんだ。 #試衛館の青春
2013-06-11 18:02:10人が死ぬ事なんて、もう、慣れっこになっているはずだった。なのに、今のこの気持ちは何なんだろう。 慣れっこか・・・。 #試衛館の青春
2013-06-11 18:03:19山南さんが死んだ時も、すごく悲しかった。 平助が死んだ時も、自分が死んだ方がよっぽどましだと思うくらい辛かった。だって、平助が死んだのは俺のせいだから。今考えても、たまらない。 そして、源さんの時も、どうにもならないほど淋しかった。 #試衛館の青春
2013-06-11 18:04:03慣れっこなんて・・・。 しょせん、あんまりかかわりのない人間が死ぬ事に慣れただけじゃないか。我ながら、勝手なもんだ。 #試衛館の青春
2013-06-11 18:04:47つい今しがた、病み衰えた総司を前にした時、まだ生きているのに、ひょっとしたら俺の方が先に死ぬかもしれないのに、可哀想だった。くやしかった。なんで、総司だけがこんなところで一人淋しく死んで行かねばならないのか。腹が立った。無性に腹がたった。 #試衛館の青春
2013-06-11 18:05:38