第一回大罪大戦失陣営【交流フェーズ02】

罪を失った者たちの交流フェーズ 元黒強欲 @ebleco_sin 元虚憤怒 @Alfreat_sin 元紅暴食 @Hajime__sin
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アヴァリーティア @ebleco_sin

男は、何も無い空間で眼を醒ます。黒一色。否、これは、黒ではない。『何も無い』のだ。首を振る、仕草。無くした筈の片腕が、ある。潰された筈の頭が、ある。此処には、『全てが在るが、何も無い』。成程、『大罪』は死してなお、世界の一部には成れないらしい。そう、男は自嘲めいた思考を巡らせる。

2013-06-19 13:58:49
アヴァリーティア @ebleco_sin

「……帰れなかったか」 男が呟いたのは、それだけだった。 虚空に掲げた、片腕。男の中指に、指輪は、無い。 「……成る程。ムカつくくらいに『何も無い』。此処が『煉獄』か。俺には、お似合いの末路だろうさ」 せめて、花の一輪でも活けてあれば、そう思った刹那、男の眼の前に、花瓶が一つ。

2013-06-19 14:02:02
アヴァリーティア @ebleco_sin

「……煉獄にしては、洒落が利いている。ここは『記憶』か。全部、ただの『思い出』。だから、『全てが在る』けど、『何も無い』」 男は、その花瓶に手を伸ばす。紅い、花が一輪。その花弁を、男の手が、『通り抜けた』。 「……嗚呼、やっぱり、煉獄じゃねぇか。触れないんじゃ、何の意味も無い」

2013-06-19 14:04:38
アヴァリーティア @ebleco_sin

虚空に、男は腰掛ける。周囲を見て溜息を吐き、虚空に足を投げ出す。まるで、それは安楽椅子に揺れるような姿勢に似ていた。 「……嗚呼、良かった。此処には、俺以外に見知った顔は居ない。『俺』は死んだが、『俺のもの』は、まだ生きてる。触れないし、話も出来ないが、まだ、『此処には無い』」

2013-06-19 14:09:04
アヴァリーティア @ebleco_sin

葡萄酒が欲しいと、男は思った。虚空に、それが『現れる』。そうだ、際限無く高価に。傲慢の城にあったものよりも上等なものを。男がワイングラスに手を伸ばすと、また、その深い紅色を通り抜ける。 「……『此処には、無い』」 まるで、男の伸ばした手は、誰かを呼び止めるような形に似ていた。

2013-06-19 14:12:28
アヴァリーティア @ebleco_sin

@Alfreat_sin 「優しいもんか。見ろ。まるで空蝉だ」軽い、口調。虚空に腰掛けていた男が、大義そうに上体を持ち上げる。身体中に刻まれた刺青。色違いの瞳。「……逆に言えば、『大罪』以外が、こんな場所で自我を保てるとでも、お前、思ってるのか?」それが、来訪者と視線を合わせた。

2013-06-20 01:17:00
アヴァリーティア @ebleco_sin

@Alfreat_sin 「坊主の言う事は、難しくて解らねぇな。まるで言葉が傲慢だ」 男が、虚空に手を伸ばす。握った、その掌の中には、何も無かった。 男の肌には、無数の刺青。まるで、魔除けだ。それこそ、何かの伝承のように、本当に魔除けなら、この男は顔の大半と耳だけを失う。→

2013-06-20 10:13:39
アヴァリーティア @ebleco_sin

@Alfreat_sin → 「……『強欲(アヴァリーティア)』だ。別に名前に、意味何てない。お前と同じように、『虚無』か『負け犬』で充分だ」 そうだ、『名』が意味を持つのは、生者にとってのみ。俺の名前は、『あっち』に置いてきた。俺のものが、使えばいい。 開いた、掌。虚。『空』。

2013-06-20 10:19:15
アヴァリーティア @ebleco_sin

「――おかしい」 指輪を眺めていた男は、不意に呟く。どうせ、それ以外に出来る事など無いのだ。男は『自分のもの』だけを、ずっと見詰めて居た。男の疑問は、冷静さを欠いた同胞の言葉に対してのものではない。座を一つ欠いているのだ。自分が同じ立場でも、きっとそうなる。問題は其処ではない。→

2013-06-22 10:06:29
アヴァリーティア @ebleco_sin

→男は、周囲を見渡す。 ――何故、此処に『黒の嫉妬(インヴィディア)』が居ない? 『帰ってこない』のなら、死んでいる筈だ。死んでいるのなら『此処に居る』筈だ。あいつはそういう奴だ。もし死んだら、真っ先に俺を探す。俺を見付けて、崩れ落ちる。あいつは、そういう奴だ。視線、指輪。→

2013-06-22 10:09:59
アヴァリーティア @ebleco_sin

→男の視線は、指輪の中の『扉』を睨んでいた。浮かび上がる、紅色の獅子の紋章。「1」と刻まれた、扉。 「……嗚呼、『紅の傲慢(プライド)』、お前か」 男の思考には、『裏切り』という可能性は無かった。 嫉妬だけではない。『黒』は染まらない。 端から、男はそれを勘定に入れて居ない。

2013-06-22 10:14:21
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

閉ざされた、空間。 浮上する、意識。 開かれる、両目。 「――あァ?どうなってんだ、オイ」 起き上がり、周りを見渡す。 ――何も、無い。 戦っていたはずの中華テーブルを模した大地は、ただどこまでも灰色が広がるだけで。

2013-06-24 22:44:04
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

「……負けて、死んだんだよな」 ぽつり。 そう、漏らす。 当然、誰にも聞こえずに、音は空間に霧散する。 「あァ、クソ、腹ァ減った……」

2013-06-24 22:48:36
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

「ーーん?」 カツ、と。 立ち上がった拍子に、つま先に何かが当たる。 拾い上げてみれば、手のひらに収まるほどの水晶球で。 何の気はなしに中を覗いてみれば、そこに映るのは『紅』の陣営。

2013-06-24 22:58:05
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

「――面白ぇことになってんじゃねぇか」 そうして、『暴食』は世界を覗く。 もう二度と、自分の干渉できない世界を。

2013-06-24 23:01:20
アヴァリーティア @ebleco_sin

@Hajime__sin 「――なぁ、お前、『暴食(グラトニー)』か?」 声がした。水晶球から顔を上げれば、其処に、男が『居た』。 さっきまでは居なかった。多分、男が声を上げたから、『居る』事になったのだ。何せ此処は『全てがあるが、何も無い』。 「……『紅』は、どうなってる?」

2013-06-26 23:04:21
アヴァリーティア @ebleco_sin

男は、虚空に腰掛けたまま、巌のように黙り込んだ僧侶越しに、『現れた』罪に声を投げる。『此処に居る』時点で、男はそれを『大罪だったもの』と認識していた。此処は、全てが『記憶』でしかない。恐らく、眼前の僧侶が、このまま声を上げなければ、きっと誰も『居る』事にすら気付きはしないだろう。

2013-06-26 23:07:00
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

@ebleco_sin 「あァ?――あァ、そうだ、俺が『暴食』だ」 答える。水晶球から外した視線の先には、文様を纏う男。 「見た限り、ウチの『強欲』と『色欲』がいなくなってる」 一拍、間をおいて。 「それと、何人か寝返ってる。テメェのとこの『嫉妬』あたりか、ありゃ?」

2013-06-27 00:12:28
アヴァリーティア @ebleco_sin

@Hajime__sin 「……嗚呼、居たか。そいつは、残念だ」 話しながら、指輪に落とした視線。 「それなら、こっちに二人居る。『強欲だったもの』と、『色欲だったもの』と。お互い、見てるだけってのは、暇だよなぁ?」 男は考える。男は『強欲』だ。強欲ではあるが、無知ではない。→

2013-06-27 00:41:53
アヴァリーティア @ebleco_sin

→『黒』に、二人居た。男は、『紅の大罪』の顔を何人か知っている。だから、見た事の無い顔を見て、『暴食』だと思った。彼が『嫉妬』には見えなかったからだ。 「……割に合わねぇよな」 『暴食』は「捕まってる」とは言わなかった。なら、『奪われた』と考えるべきだ。『黒の嫉妬』は裏切らない。

2013-06-27 00:45:20
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

@ebleco_sin 「することがねぇ割に、相変わらず腹は減りやがる」 その名が指し示すように。 大げさに腹を抱え、『暴食』は嘆息する。→

2013-06-27 21:14:23
暴食(Gluttony) @Hajime__sin

→「…流石は『強欲』、ってとこか?」 喉を、鳴らす。 小耳に挟んだことがあった。 先代の『強欲』は、奇怪な刺青で全身を覆っていると。 だからどうした、という程度の認識しか持っていなかったのだが。 ――こんなところで役に立つとは、正直思っていなかった。

2013-06-27 21:22:17