ゼア・イズ・ア・ライト #8
「何者だ」ニンジャスレイヤーは呟いた。彼自身の声がニューロンに反響し、徐々に歪んで、どこかで覚えのある声が繰り返された。(((私は私は私は誰だ)))「名乗れ。ジツ使いめ」(((身ひとつで放り出された気分はどうだニンジャスレイヤー=サン……))) 1
2013-06-20 22:15:24「そうやって、私の耳元で無害な野次を飛ばしておるがいい……」ニンジャスレイヤーは眼下の大使館敷地を見やった。そして、跳躍準備……「グヌーッ」できぬ!彼は再び片膝をついた。目から血が流れ、視界が繰り返し白く爆発する。垣間見えるのは白黒のサップーケイ空間……。 2
2013-06-20 22:21:1801001001互いにアイサツを済ませたナラク・ニンジャとデソレイションらしき影は同時に踏み込み、ワン・インチ距離をとる。「イヤーッ!」ナラク・ニンジャは心臓摘出のチョップ突きを繰り出す。デソレイションはナラクの肘と己の肘を打ち合わせ、腕先を絡めてこれを防御した。 3
2013-06-20 22:25:21防御行動から鎌首めいて折り曲げたコッポ手がナラクの顔面を狙いに行く。「イヤーッ!」ナラクの対処は冷静である。デソレイションの軸足の脛を急角度で蹴り下ろす。「グワーッ!」ナラクが一瞬速い!その直後、ナラクは0.1インチの最小の首の動きでコッポ手の狙いを逸らす。「児戯!」 4
2013-06-20 22:30:26「イヤーッ!」デソレイションは沈み込みながら、みぞおちめがけ致命的なコッポ突きを繰り出す。ナラクはこれを円運動めいた腕の動きで払いのけた。デソレイションは肘先を離さず、絡めるようにして腕を取る。「イヤーッ!」もう一方の手で顎先を狙う。「イヤーッ!」ナラクはこれを払いのける。 5
2013-06-20 22:34:14「イヤーッ!」だが、こちらの腕もやはりコッポ肘先が絡み、封じてしまう。先ほどの腕がナラクの肩に触れる。「イヤーッ!」ナラクは脇腹へヒザ蹴りを繰り出す。「イヤーッ!」デソレイションは更に一歩踏み込み、ヒザ蹴りの威力を殺しながら、これを受ける。逆の手で掌打を繰り出す。「イヤーッ!」6
2013-06-20 22:37:58ナラクは再び掌打を払いのける。彼はデソレイションの腕を交差させながら受け、防御を封じたうえで、額に額を叩きつけた。「イヤーッ!」「グワーッ!」怯むデソレイション!ナラクは掴んだ交差手を離さぬ!そのまま後方へ仰け反り、デソレイションを背後の墨絵地面へ、逆転させながら叩きつける!7
2013-06-20 22:43:14「イヤーッ!」「グワーッ!」ゴウランガ!なんたる受け身の取れぬ暗黒のトモエ投げか!デソレイションは逆さ杭打ちめいてめり込み、戦闘不能!ナラク・ニンジャは素早くタタミ二枚の距離をとってザンシンする。イクサは終わっていない。彼は右真横を見た。そこには別の影が立っている。 8
2013-06-20 22:45:16「ドーモ」影はオボロなアイサツを繰り出す。その両腕には墨めいて黒いトンファーがある。「……ゲイトキーパーです」「……」ナラクは油断なくジュー・ジツを構える。背後にもう一体。山のように巨大な影だ。「ドーモ。アースクエイクです」 9
2013-06-20 22:48:56デソレイションの影のカラテは生前のそれとは比するまでもない。そしておそらくこの新手の二体も同様であろう。だが……。「イヤーッ!」ナラク・ニンジャは繰り出されたトンファーを掌打でそらし、ジゴクめいた直線前蹴りを繰り出す。「イヤーッ!」ゲイトキーパーは背向け後ろ回し蹴りで応戦! 10
2013-06-20 22:55:02ナラク・ニンジャの蹴りをかわしたうえでの巧妙なカウンター打撃である!だがナラク・ニンジャはコンパクトな肘打ちを既に繰り出し終えていた。「グワーッ!」ゲイトキーパーの蹴り足関節部が肘打ちを受けて複雑骨折!「イヤーッ!」顔面を掴み、「イヤーッ!」地面に後頭部から叩きつける! 11
2013-06-20 22:57:07「イヤーッ!」背後からアースクエイクが両腕ハンマーパンチを振り下ろす。「イヤーッ!」ナラク・ニンジャは前転から側転、さらにバックフリップして間合いを取り、アースクエイクと向きあうように着地した。その真横に新たなニンジャが現れた。「ドーモ。トゥールビヨンです」 12
2013-06-20 22:58:53010010010「グワーッ!」ニンジャスレイヤーはコンクリートに両手をつき、堪えた。(((ウフフフ……ホホホ……素敵な見世物だ……違うかね……ニンジャスレイヤー=サン!これがお前のハラワタだ……お前の依って立つジゴクだ!)))声が嘲笑う!(((無害な野次の味はどうだ!)))13
2013-06-20 23:03:28「無害な……野次だ!」(((それをやせ我慢というのだ。あのニンジャソウルはお前のジゴクにくるまれ、現世との繋がりを金輪際持つ事はできぬ。せいぜい遊ばせてやるがいい!イマジナリーカラテの檻に!)))「グワーッ!」(((何もできぬ打ちひしがれた男はここに!)))「グワーッ!」 14
2013-06-20 23:10:27バチバチと明滅するノイズが、墨絵のイクサとフジキドを隔てる。不可思議な霞だ。霞の奥でナラク・ニンジャは再びデソレイションと相対する。ザリザリとノイズが走り、デソレイションの隣にミラーシェードが。その奥にベアナックルが。キャバリアーが。ニーズヘグが……。 15
2013-06-20 23:18:280101001001001「ドーモ」「ドーモ」「ドーモ」010010001001001「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーは千切れるほどに強く首を振り、そして刮目した。彼はIRCにリクエストをかけた。「すまぬ……邪魔が!入った!問題ない!状況を……頼む!」 16
2013-06-20 23:21:13敷地内へ突入した装甲車両の上、片手を腰に当て、片手で拡声器を掴み、レツマギを見下ろすのは、湾岸警備軍の若き将校。モノリエ・ヤスミだ。間違い無い。レツマギ自身の記憶と寸分たがわぬ顔立ちである。だがその眼差しの冷たさは人間離れして凄まじく、彼を心胆寒からしめるものだった。18
2013-06-20 23:37:17ガチャリガチャリと音を立て、武装した湾岸警備兵がレツマギを銃口でつついた。「やめ……やめたまえ!」レツマギは追い立てられながら抗議した。「我々はシビリアンであるぞ!外交問題になりますよ!」言ってから、彼自身、いかにも滑稽な抗議であると自嘲的に考えた。 19
2013-06-20 23:39:40「黙れ!」将校モノリエは威圧した。既に中庭は彼らによって完全に制圧されている。SPの何人かはやや離れた噴水の側でホールドアップさせられている。レツマギの隣でメイド二人がさめざめと涙した。レツマギらをドーナツ状に取り囲む兵士達の顔は、それぞれが不自然なほど似通っている。 20
2013-06-20 23:45:09湾岸警備兵……?レツマギは眉根を寄せた。何かがおかしい。だが、モノリエは確かにモノリエ・ヤスミ本人に他ならない。「目的は何です!」レツマギは問うた。「……それは記者会見場で明らかになる」モノリエは静かに言った。21
2013-06-20 23:49:35「グワーッ!」装甲車の陰から、頭に袋を被せられた男が押し出される。男は湾岸警備隊将校の服を着ている。モノリエと同じ服を。「え?」レツマギは瞬きした。威圧的に銃口が突きつけられた。袋を被せられた男は二人の兵士に背中を押されながらそのまま庭を横切り、大使館本館へ向かう。22
2013-06-20 23:51:15「準備万端整ったか?」よく通る低い声とともに、ハナレの戸口から、大柄な乱れ髪のニンジャ、インターセプターが姿を現す。その手にはニンジャの……ハーキュリーズの生首がある。白砂を蹴散らし、生首を投げ捨てる。「そこそこやる奴だった。犬にしてはな」 23
2013-06-20 23:59:37「イヤーッ!」モノリエは装甲車上から回転ジャンプし、滑らかに着地した。 「準備万端、オーディエンスも暖まっている頃です。行きましょう」「よし」「アイエエエエ!」レツマギの脇でメイド二人が悲鳴を上げ、崩れるように白砂に座り込んだ。「使用人?要らんだろ」とインターセプター「殺せ」24
2013-06-21 00:10:50