トールキンは何者だったのか ——指輪物語は言語のために書かれたか?
- nirvanaheim
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「トールキンは(略)リアルエルロンド」というツイートに目から鱗が落ちるような心地でした。もしかしたらこの界隈では当たり前な認識なのかもしれませんが自分はこの考え方初めて知った気がする・・・。
2013-06-10 16:14:24これですね。 → @nirvanaheim:まあトールキンはいわゆる古伝の大家というやつで、北ヨーロッパの諸言語・神話伝承の専門家ですからね。リアルエルロンド。
2013-06-10 18:33:37個人的に問題と思っているのは、トールキンについての素朴認識「トールキンってファンタジー小説家いるよね」へのちょっと気の利いた認識として「トールキンは言語学者で、最初にエルフ語とかの言語を作って、それのためにこの世界作ったんだ。言語ありきだよ」みたいな論が出回っていることですね。
2013-06-10 18:36:24問題とか言っちゃったのが何を指しているかと言えば、この言語という言葉の強調が、彼の地盤をかなり等閑視して抽象的な意味での「言語」への関心へとミスリードしてるように感じられることですね。
2013-06-10 18:39:23純粋言語学、と言ったら(既に存在するタームなので)TLの言語学者に怒られますから「言語そのものの学」とか言っておきますが、それへの視野の誘導があるように見えるとでも言いますか。
2013-06-10 18:40:07「○○語学」は一般に「○○語で表出される文化の研究」とかなり一体性があるものですし、トールキンの時代はまだまだいわゆる言語研究が狭義の文献学(philology:logosへの愛)の枠組みの中にありました。
2013-06-10 18:42:53で、トールキンの地盤は英語学であり、英語文献学であり、古英語の専門家で、古英詩・古英語文献の専門家なわけです(そして古英語の専門家となると必然的にゲルマン諸語研究と繋がってきて、まあさらに印欧語・比較言語学の研究、と、広がって行くわけです)。
2013-06-10 18:46:23で、古英語の専門家、古ゲルマン諸語の専門家となると、まあ必然的に古代の神話・伝承の専門家になります。ゲルマン文献学を築き「ゲルマニスト」の代表者であるグリム兄弟は『グリム童話集』を書き『ドイツ神話学』を書いたわけですが、彼らは『ドイツ語文法』『ドイツ語辞典』の著者でもあります。
2013-06-10 18:51:26(今ゲルマニストの代表者とか書いちゃったけど、彼ら兄弟にこの言葉を宛てていいかという話はあると思いますw)
2013-06-10 18:53:12というわけで、言語と文化・神話が不可分な辺りにトールキンはいたのであって、「言語」というキーワードを強調して中つ国やその叙事詩群に対して副次的産物に過ぎないみたいな口ぶりをするのは、悪質なミスリードだなぁと思って見ているわけです。
2013-06-10 18:56:35フィロロジストのトールキンの言語研究的側面からエルフ語とかが発生し、神話伝承研究の側面から中つ国や諸物語が発生した、くらいに思っておくのがいいと思います。
2013-06-10 19:10:28トールキンは言語学者だったとか言える人なら「トールキンはイギリスの神話を作りたかった」みたいな話は知っているでしょう。研究者トールキンの代表的研究に『ベーオウルフ』研究が挙げられますけれど、この叙事詩ベーオウルフが最古の古英語史料なのであり、実際固有「神話」的なものはないのです。
2013-06-10 19:11:57トールキンが言語文化を愛し、エッダやニーベルンゲン、ヴォルスンガ・サガ他に通暁し、そして中英語古英語にはバラッドやベオウルフしかないことを分かっていれば、そこにトールキンが空虚を感じたであろうことが想像できるというものです。
2013-06-10 19:14:29