孫泰蔵さん 「デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方」を読んで考えた事
世界の偉大な経営者たちを観察してきたロジャー・マーティン博士は、彼らに共通する優れた能力について次のように述べている。「相反する考えから新しい解決策を導く思考ができる人は、一つの考えしか追えない人よりも、困難な問題にとりくむときに優位に立てる」。
2010-09-21 08:17:33例えば、どちらかを取ればどちらかは取れない二つのアイデアがあったとき、ふつう私たちは自分の考えに合いそうな案のどちらかを選び、もう一方の案は早々に捨て、選んだほうを深堀りしたり肉付けしたりしてものを考えていく。
2010-09-21 08:18:01しかし、優れた思考の持ち主はそうはしない。A案もB案もどちらも自分にとって大事なインスピレーションの源泉であるととらえ、A案の良さもB案の良さも持ち合わせつつ、なおかつ矛盾することのない新しいアイデア「C案」を生み出すのである。
2010-09-21 08:18:18マーティン氏はこれを「インテグレーティブ・シンキング(Integrative Thinking = 統合思考)」と名付け、リーダーやデザイナーにとって極めて重要な能力であると言う。確かに政治や企業経営など、利害の対立する集団の間で調整が困難な問題を解決していくときに有効だと思う。
2010-09-21 08:18:43「予算を削れば品質を下げるしかありません。予算と品質、どちらを優先させますか?」と問うデザイナーと、「コストをむしろ当初より下げ、なおかつ素晴らしく品質が向上するアイデアを思いついてきました!」と当初とは全然別だが次々と新しい提案を出してくるデザイナーのどちらを使いたいだろうか?
2010-09-21 08:19:05「AかBか、どちらかを選択せざるを得ない」として、反対意見を切り捨てることでしか事態を乗り切れないリーダーと、「AもBも長所・短所があり最上の策ではない。良いとこ取りしたCを考えた!」と誰も思いつかなかったブレイクスルーを出してくるリーダーではどちらについていきたいだろうか?
2010-09-21 08:19:26こう書くと、「そんなの自明の理。そんなことができるんだったら最初からそうしてるはず。それができなくて二者択一を迫られた時、明鏡止水の心境で一人腹をくくって決断をできるのがリーダーたるもの」と思う人は多いだろう。
2010-09-21 08:19:41しかし、そうではないのだ。本当はアイデアは考えようと思えばいくらでも出るものだが、ブレイクスルーなんてあるわけない、そんな都合のいい案なんて存在しない、とハナから考えようとしないところが問題なのだ。もっといえばアイデアが豊富ならそんな状況になる前にいくらでも手が打てたはずなのだ。
2010-09-21 08:19:57二者択一しかない、どちらをとってもダメージや犠牲が大きい、という局面で苦渋の決断をしいるリーダーではなく、誰も思いつかなかったような上策を出して問題を解決し、人に奇策と言われようが結果を残して集団をグイグイ率いていくようなリーダー。そんなリーダーを僕は目指したい。
2010-09-21 08:20:12ティム・ブラウン著「デザイン思考が世界を変える - イノベーションを導く新しい考え方」(ハヤカワ新書Juice刊)を読んで、今朝はそんなことを考えた。
2010-09-21 08:20:25