百芸を一芸の肥やしにす
- ShinShinohara
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「一芸は百芸に通ず」「多芸は無芸」という言葉に引きずられ、自分の分野以外には関心を持たない専門バカが多い。だが、専門バカは一芸に通じることもできず、ましてや百芸に通じることもない。だからあえて言い換えよう。「百芸を一芸の肥やしとす」と。貪欲にあらゆる分野から学ぶべきなのだ。
2013-06-28 20:16:00一芸に通じた人はその分野では一番になってしまっているから、同じ分野の人から学ぶことは難しくなっている。さらに芸を磨くためには、異分野の人から学ぶ必要がある。実は一芸を極める人は、異分野から貪欲に学び、自分の芸の肥やしにしている。「百芸を一芸の肥やしにす」とは、このことを言う。
2013-06-28 20:18:20「多芸は無芸」という言葉は、異分野に関心を持ってはならないという意味ではない。自分の芸を磨こうとしないことを戒めているだけなのだ。様々な芸から学び取り、自分の芸を磨く他山の石にすることはむしろ推奨されるべき。ハンマー投げの室伏選手が赤ちゃんの動きから学んだのはその好例。
2013-06-28 20:20:24「百芸を一芸の肥やしにす」を実践すれば、非常にユニークで優れた芸達者がたくさん生まれることだろう。人はそれぞれ、関心を持つ百芸が違ってくる。違う組み合わせの百芸が一芸の肥やしになるとき、同じ芸であっても雰囲気が違ってくる。トランペットが奏者によって音色が全然違うように。
2013-06-28 20:22:11もっともっと、異分野から学ぼう。きっとあなたの大事な一芸に活かせる何かがある。それは直接的な答えの時もあるし、ヒントのこともあるし、比喩でもあるし、反面教師のこともある。様々な情報が、自分の芸の違った側面を照らしてくれ、自分の芸に深みを与えてくれるだろう。
2013-06-28 20:24:24「百芸を一芸の肥やしにす」のコツの一つ。「バカにしないこと」だ。版画家の棟方志功は若い頃傲慢で「俺が一番」という気負っていたという。しかし柳宗悦と出会いガラリと変わる。柳は庶民が作った素朴な民芸品に美しさを見いだす独特の美的感覚を持っていた。棟方はそこから学ぶこと大だったようだ。
2013-06-28 20:33:17柳宗悦の著作の中で「妙好人」という言葉が出てくる。別に宗教的求道者でもなんでもない庶民が、求道者も顔負けの域に達する生き様を見せることがある。その人が作る民芸品は素朴で稚拙なのだが非常に味わいがある。学ぶべきことは大変多いのだ。
2013-06-28 20:35:53庶民から学ぶ柳宗悦の姿勢を、棟方志功は学び取ったのだろう。以後、棟方はどんな人にも先生として敬い、その片言隻句から学び取ろうと貪欲であったという。「百芸を一芸の肥やしにす」の見本になるようなエピソードだ。
2013-06-28 20:37:40自分の専門に閉じこもらず、様々な分野から学び取る姿勢は、きっとあなたの一芸をこの上なく磨いてくれる。どんな人の、どんな思いつきの言葉でも、そこから学び取れる何かがあるかもしれない。その姿勢が、あなたの一芸の肥やしを増やしてくれるだろう。
2013-06-28 20:39:14