翠星のガルガンティア

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翠星のガルガンティアのシナリオが面白いのは、「自由主義と家族」と「全体主義と組織」が対立する構造になっている。最近では自由と家族（含む家父長制）は対立概念だととらえられがちだ。にもかかわらず、脚本家は自由と家族を近しいものとして扱っている。じつに興味深い。

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ケアと監視、包摂と従属。これらは同じ現象の裏表だ…と、最近は考えられる場合が多い。だけどガルガンティアでは、包摂しながら自由で、ケアをしながら監視はしない。そういう社会を理想としている。そして不思議なことに、私たちはこの理想に強く心を揺さぶられるのだ。

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痴呆老人にGPSセンサーを付ける。これはケアであると同時に監視だ。／企業への奉仕の引き替えとして、承認欲求を満たしてやる。「居場所」を与えてやる。これは包摂であると同時に従属だ。／これを見て、「自由とケア、自由と包摂は両立できない」と短絡する人がいる。

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しかしガルガンティアは違う。自由とケアは両立できるし、自由と包摂は両立できると訴える。自由を保証しながら、同時に文化や生活を「継承」できると声高に宣言する。リジットが船団の指揮権を委譲されるシーンは、まさに「継承」の体現ではないか。

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自由主義は文化・生活の継承を苦手としているのではないか…というのが最近の私の中心的な興味だった。近現代思想の父であるルソーは５人の子供を全員、養護員に入れてしまった。自由主義と、それを土台とした現代資本主義の行き着く先は、「継承」不在の断続社会ではないか？という懸念が私にはある。

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「従属こそ安息である」というストライカーのセリフには一面の真実があるんだよな。でも、私たちはそれに強い不快感を抱くんだよ

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虚淵さんの脚本はこのあたりの思考が深い。マジでやばいレベルで深い。『PSYCHO-PASS』のときもそうだった。／個人的な好みをいうと、まどかよりもサイコのほうが好き。脚本陣の「社会」に対する思想が明示されていて、しかもそれに強い共感を覚えるから。

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QT「法が人を守るんじゃない、人が法を守るんです。これまで悪を憎んで正しい生き方を探し求めてきた人々の想いが、その積み重ねが、法なんです」――常守朱・アニメ『PSYCHO-PASS』より／これ、１００年後にも残したいレベルの名台詞だと思う。