第一回大罪大戦虚陣営【交流フェーズ03】

虚(ゼロ)は色欲、ヴォルプターモ[ @reclew_sin ] 虚(ゼロ)は暴食、イストリーブ[ @gomokumame_sin ]
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【暴食の雛】 @gomokumame_sin

半ば落ちるように元の場所へ戻ってきた。消えゆく扉を確認する気力もなく、もはや身体が限界だった。奪われた右肩の肉と、右腕の肘の先。魔力は枯渇し血も痛みも止められない。 自身の生み出した糸に食い込まれてぼろぼろの左手を伸ばし、何かを求めて這う。誰もいないのなら、俺はここで、終わる。→

2013-07-05 21:18:47
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

戦いに赴いた時とはあまりにも変わり果てた姿。前髪は魔力の補給のために食べた。長いショッキングピンクの色彩が無残に床に広がっている。 『いすとりーぶー、はらへったー』 「……悪ぃエダクス、俺も」 限界なんだ。 幻の声にそう返して、俺は目を閉じる。*

2013-07-05 21:19:24
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…ふふっ、あら…お互い、満身創痍みたいね?」 次いで扉から這いずって出てくる女。 皮膚は爛れて片足はなくなっていた。 「…個室ではなくて広間なのが少しあれだけど、香でも焚きましょうか…」 今の気分だと、とにかく気を落ち着ける香りのものが好ましい…→

2013-07-05 21:53:48
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

→取り急ぎスカートの中から香を出す。 もっと効能の良いものは部屋にあるがこの状態では取りに行くのも時間が掛かる。 ひとまずはこのラベンダーの香りで気持ちを落ち着けよう。 自分も、思ったより憔悴しているようだ。

2013-07-05 21:57:10
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「………」 男からの返事がない。 まさか死んではいないだろうが…まぁいい、今は自分も魔力切れだ。 このまま眠りにつこう…

2013-07-06 00:42:17
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

夢を見た。夢を見るほど深く、浅い眠りに陥るのは久しぶりだった。 虚ろの世界。まるで大罪の戦場のような場所に俺は立っている。足元も空もすべてが覚束なく定まらない世界に、独り。 どうして俺はここにいるんだろう。拡散する意識をかき集めて、それでもぼんやりとする頭で考える。→

2013-07-06 01:02:22
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

瞬きを、数回。一瞬の間と共に現れるのは、『俺じゃない暴食』。金の腕輪を残したそいつは、無表情で虚ろに突っ立ったまま俺を見ている。 唐突に、ほどけた。『暴食』は紅色の粒子となって、ゆるく渦を巻きながら定まらない世界に消えてゆく。→

2013-07-06 01:02:45
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

再び瞬く。現れるのは俺よりも背の高くなった『化物』。呪いを残したやつもまた、無表情。俺を見つめる視線には何の感情も含まれていない。 此度の『暴食』は黒色の粒子になって溶け、鎧が剥がれたように残されたのは、少年のエダクス。→

2013-07-06 01:03:05
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

エダクスは笑う。純粋、そして無垢、無邪気な子供の笑顔で。 「いすとりーぶ、はらへったな」 それは、『食欲』。『暴食』の源泉、俺の純粋な『飢餓』の体現だった。 自覚する。喰らわずとも、『喰らった』。二つの『暴食』を。 俺は今、分かたれた世界で唯一の『暴食』となった。

2013-07-06 01:03:25
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

カラクリ…もうこんな自分の中での独白なんて貴女には届いていないかもしれないけれど…それでも… 「貴女のこと、見直したわ…もっと、色々なことを教えてあげたかった…」 その呟きは、空虚に溶けた。

2013-07-06 02:47:04
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

右半身の激痛で微睡みから急速に覚醒した。やっとのことで身体を起こすと、すぐそばに眠る『色欲』と、『色欲』が置いたのであろう香がある。 他に気配は、ない。 「……『傲慢』も逝ったかな」 主を失った壊れかけの屋敷の広間で、『色欲』が目覚めるのを待とう。その場に座り込む。→

2013-07-06 13:22:32
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

確かに体力も気力も限界まで削られているはずなのに、身体は痛むのに何故か軽く、右上半身の激痛以外の問題は特に見当たらなかった。 ふんわりと広がる花の香りに包まれながら、うつらうつらしてしまう。

2013-07-06 13:22:38
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…あら、寝過ごしてしまったようね…」 目が覚めると、男はすでに身体を起こしていた。 早く治療を始めなければ、戦い傷ついた人を、治療するのは私の役目…役目? 役目…なの、だか…ら?→

2013-07-06 13:31:31
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

→…思い出したばかりの古い記憶が混同しているようだ、気を落ち着かせたらこうなってしまうか…自分はよほど混乱しているらしい。 とにかく、古い記憶等関係なしに『仲間』を助けるのは自分の役目だと思い服の袖から薬瓶を取り出し中身をあおる。 これで少しばかりの魔力は回復するはずだ。→

2013-07-06 13:34:03
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…ごめんなさい、今はこれが精一杯なの…」 回復した魔力をやりくりするため、かなり速度の遅い『増殖』を男と自身に施す。 しかしどうやら他に人影が見えないところを見ると生き残ったのは二人だけらしい。 女と相性がいいこの男が生き残ったのは、僥倖といえるだろうか。

2013-07-06 13:37:18
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

「いや、治せるだけで充分ありがてえし」 徐々に痛みが和らいでいくのを感じつつ、痛みを快楽に変えるこの女も消耗しているのだと悟る。かざされている白い手を喰ってやるべきかと考えながら、治療の様子を眺めていた。 『くわないのかー?ならわれがくうー!』 「何言ってんだ、お前喰えな…」→

2013-07-06 14:29:11
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

答えかけて、はたと気づく。何だこの声は。思い返せば夢を見る前にも、同じ声に答えていたような。 この声は『色欲』にも聞こえていたのだろうか。中途半端に開いた口をつぐみ、そっと女の様子を伺う。

2013-07-06 14:29:18
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…随分と、憔悴しきっているみたいね…」 未だ半分ほどしか『増殖』しない男の腕を見ながら呟く。 「…嫌な気配がする。 何か呪いでもかけられたかしら?」 男から流れてくるのは黒い、黒い気配。 ただひたすらに、何もかもを飲み込もうとしている闇(クロ)。

2013-07-06 14:34:35
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

「呪い…あぁ、そうか。呪い、なぁ」 まとわりつく子供(エダクス)の声を聞きながら、『色欲』の言葉に納得する。 これは呪い。俺の食欲に同化して、俺が生きる限り永遠に傍らに在り続ける<黒の暴食>(グラ)の残した深い噛み傷。毒の様にゆっくりと、やがて俺の精神までも侵食してゆくのだろう。

2013-07-06 14:57:17
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

「なぁ、ちょっと喰わせてくれよ。腹へってしょうがないんだ」 魔力がどうのと言う前に、純粋に身体が飢餓感を訴えていた。ここまで枯渇してしまっては、その辺りに転がっているような無機物では足りない。 生物を、肉を食べたかった。

2013-07-06 14:57:22
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

「…そうね、私も魔力が欲しいわ。 あなたに食べられたなら…痛覚の戻っている今なら、十分に魔力を取り戻せそう…」 そういって、かざしていた手を男の口元まで持っていく。 この男なら、私のこの悲しい思いも一緒に飲み込んでくれるのだろうか―――→

2013-07-06 15:08:26
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

→「前にも言ったとおり、身体の一部分を残してくれるなら好きなだけ食べてもかまわないわ」 もう片方の手も男の顔へ持っていく。 そして、女は男の顔を両手で包み込むようにして、言葉を紡いだ。→

2013-07-06 15:12:56
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

→「『イストリーブ』、遠慮なんてしなくていいわ。 あなたは何者にも縛られることなく、ただ思うがままに私を喰らうのよ。 私はあなたを受け入れる…それが、あなたの『暴食《罪》』と私の『色欲《罪》』なのだから…」

2013-07-06 15:14:55
【暴食の雛】 @gomokumame_sin

差し出された手に歯を立てる。噛みしめる。がっつきはしないが、喰らう度に涙が溢れた。『罪』の味。『色欲』の言葉が染み渡るにつれ、頬を伝う雫は増す。 生きて喰らえることは、しあわせだ。 生きるために喰らい、喰らうために生きること。 それが俺の『飢餓』。俺の『暴食-グロトネリーア-』。

2013-07-06 15:52:45
暴食(イストリーブ)の色欲(かあさん) @reclew_sin

ゆっくり、ゆっくりと指先から食べられていく。 あぁ、私はイストリーブにあのときのあの子を重ねて見ているのだろうか… あぁ、けれどそれでもいい、それだけで…助けることが出来るだけで、きっと私は満たされる。 …あの子はこんな桃色ではなかったけれども。 桃色ではなかったけれども。

2013-07-06 18:23:08
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