霧島艦隊赤城轟沈

ツイッターの霧島艦隊内における赤城轟沈事件を元に、艦むすを失った提督の哀しみを表現したとかなんとからしいデース
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谷風 @Tanikaze_DD

弾薬庫に直撃を受けた赤城は己の死を悟った。しかし、まだ死ぬわけにはいかない。薄れ行く意識の中、霧島に伝えなければいけない想いがあった。 「私ね、霧島の事が好きでした…。霧島は比叡を愛してるのは知ってたけど…それでも…いつも、そばで守ってくれた、霧島を…」 続く

2013-07-22 16:42:22
谷風 @Tanikaze_DD

「お慕いしていた霧島さんの下で働けて、私は満足です…。想い残すことなんて…一つも…」 霧島の握る赤城の手から力が抜け落ちるのがわかった。これが戦友の死なのか。霧島の心は悲しみに沈む。斬り裂かれたシーツの欠片のように 「目を開けて赤城さん…!まだ私の気持ち、話してないのに…!」

2013-07-22 16:49:15
谷風 @Tanikaze_DD

命を失った艦むすは浮力を失う。この手を離せば赤城は海の底に沈み、もう二度と会えないだろう。一緒に過ごした時間、交わした会話、全てを失うことになる。霧島は彼女の手を離せず動けなかった。いつ敵に砲撃を浴びせられるかも知れない、この海域で。 「ごめんなさい、私の拙い指揮のせいで…」

2013-07-22 16:55:32
谷風 @Tanikaze_DD

赤城の亡骸の側に座り込む霧島の胸倉を掴み上げ、強引に立たせてきた艦むすがいた。その弾みで、赤城の手を離してしまった。彼女の姿が海中へと消えていく。 「な、何をするの…!?赤城さんが…赤城さんが!!」 「キリシマ。ここは戦いの場ネ。死者を弔うのは生きて帰ってからにしなヨ」

2013-07-22 17:00:47
谷風 @Tanikaze_DD

霧島の胸倉を掴み上げていたのは姉の金剛だった。 「どうして…!?さっきまで一緒に笑い合ってたのに…!赤城さんは…赤城さんは…私が艦隊の指揮なんてしたせいで…!!!」 霧島の頬に鋭い痛みが走った。姉様に叩かれた…? 「ソウネ、キリシマの指揮のせいで、赤城サンは沈んだノ」

2013-07-22 17:04:26
谷風 @Tanikaze_DD

「でもね、キリシマのせいで沈んだわけじゃないワ。キリシマのために戦って沈んだノ。それを勘違いしないでヨ。キリシマ、アナタは旗艦。赤城サンはアナタの旗のもとで最後まで戦い抜いたノ。誰よりもアナタを守りたかったから、それこそ死ぬ気になってネ」 「わたしは…」 「いい?キリシマ」

2013-07-22 17:07:59
谷風 @Tanikaze_DD

「ここで赤城サンの死を嘆いて、キリシマが、その身を危険に晒してたら、彼女は何のために戦って、その命を散らしたのかわからないワ。キリシマがここで何もしないで沈んだら、ヴァルハラで赤城サンに合わせる顔、ある?」 「姉様…」 霧島は手に残る、消えかかった赤城の温もりを握りしめた

2013-07-22 17:14:02
谷風 @Tanikaze_DD

「戦っテ!キリシマ!わたし達は戦うために作られた艦むす、戦艦ネ!!!どんな時も戦いから背を向けたりはシナイ!チガウ!?幕僚の死を嘆くなら!!その砲弾という名の黒き刃を憎き仇に喰らいこませてシナヨ!!!」 「は、はい!!姉様!!」 霧島は握った手を開き、赤城との温もりと決別した

2013-07-22 17:19:13
谷風 @Tanikaze_DD

赤城を失った戦いから半月。未だに彼女の死は霧島の心に深い傷を遺していた。武器格納庫の扉を開けば、そこにはいつも横たわる赤城の姿があった。今でも格納庫の扉を開けば、彼女に会える気がして、霧島は毎日のように通ってる。今日こそは彼女に会えると信じて 「赤城さんはもういないのにね」

2013-07-22 17:23:22
谷風 @Tanikaze_DD

しかし、扉を開くとそこには見慣れた姿があった。霧島の胸の鼓動が早くなる。あの姿は。あの姿は。 「赤城さん…!」 霧島の声に驚き、振り返る彼女の顔は正しく、あの海域で失った戦友のものだった。 「ど、どうして、赤城さんが…」 「は、初めまして。一航戦の赤城との申します」

2013-07-22 17:26:12
谷風 @Tanikaze_DD

「ふ、ふざけないでください!赤城さん、私を忘れたの…!?」 詰め寄る霧島に、赤城は困惑を隠せないといった表情を浮かべた。 「わ、忘れるも何も、私は今日建造されたばかりで、記憶はまだ…二時間分しかありませんけど…。その中に貴方の記憶はありません」 建造された…?記憶がない…?

2013-07-22 17:31:52
谷風 @Tanikaze_DD

「わ、私のことを覚えてないの?リランカで、私がお弁当の弾薬忘れた時、分けてくれたよね?食いしん坊の赤城さんが分けてくれたなんて、本当に嬉しかったのよ。ねぇ、何も覚えてないの?ねぇ…ねぇ!!」 赤城の両肩を掴み、霧島はそう叫んだ。涙が止まらない。その時、霧島の腕を掴んだ者がいた。

2013-07-22 17:35:02
谷風 @Tanikaze_DD

「霧島、落ち着いて。話があるの」 霧島の腕から手を話しながら比叡はそう言った。 「比叡姉様…」 「赤城さんが怯えてるから、ね。向こうで話そう」 赤城に視線を戻すと、彼女は怯えた目で霧島を見上げていた。 こんなの赤城じゃない。こんなの私の好きだった大切な人じゃない。

2013-07-22 17:38:48
谷風 @Tanikaze_DD

「赤城さんは、私をそんな目で見なかった!!!私をいつも暖かい目で見てくれてた!!あんたなんか赤城さんじゃない!!あんたなんか…!!」 「霧島ァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」 比叡の怒号が収まると、辺りは静まり返った。 「向こうで話そう霧島。ごめんね、赤城さん」

2013-07-22 17:41:20
谷風 @Tanikaze_DD

鎮守府裏の何も無い土手に霧島と比叡は腰を落ち着かせた。夕日が今にも零れ落ちそうな血の赤で空を染めていた。 「霧島、あのね、あの赤城さんは赤城さんだけど、貴方の知ってる赤城さんじゃないの」 「どういうことです、比叡姉様…」 「…私達はね、こうして存在するのは私達だけじゃないの」

2013-07-22 17:45:16
谷風 @Tanikaze_DD

「私達だけじゃない。榛名も金剛姉様も、提督が望み造り続けるだけ生まれる。この世界に私という個は私一人だけど『比叡』無数に存在する」 「私達は艦むすとは…一体…」 「『海からの脅威』に対抗するために量産されて続けている兵器。それだけ。私達の代わりなんていくらでもいるの」

2013-07-22 17:50:39
谷風 @Tanikaze_DD

「私達の代わりがいくらでもいる…?本気で言ってるのですか、比叡姉様…」 「お偉いさんに取ったらね。私にとっては違うよ?私にとっての霧島は貴方だけ。代わりなんていない」 「私にもそうです。私の愛する比叡お姉様は貴方だけです」 思わず霧島は比叡の太ももに手を這わせた。

2013-07-22 17:52:57
谷風 @Tanikaze_DD

「ちょ、触るの!やめ!」 比叡に叱られ、霧島は慌てて手を引っ込めた。 「油断も隙もないんだから…。だからね、あの赤城さんも霧島の知ってる彼女じゃないの。見た目も声も何もかも同じでも、全く別の船」 だから霧島のことを覚えていなかったのか、いや、知らなかったのか。

2013-07-22 17:56:28
谷風 @Tanikaze_DD

「たくさん造られてたくさん生まれても同じ艦むすは一隻だっていない。それぞれの提督と紡がれた思い出や記憶は、全て別物。『比叡』や『霧島』は大勢いても、私達は私達だけなの」 そう優しく言うと、比叡は霧島を優しく抱きしめてくれた。 「私を愛してくれる『霧島』は、貴方だけだよ」

2013-07-22 17:59:11
谷風 @Tanikaze_DD

「比叡姉様…」 「赤城さんと親友だったもんね。辛かったね、霧島。私ももっとしっかりしてれば、赤城さんをあんな目に遭わせなくて済んだかもしれないのに」 霧島を抱く比叡の腕に力が強く強くこめられた。彼女も赤城の死を嘆いているのだろう。 「今日は比叡姉様の胸で泣かせてください…」

2013-07-22 18:05:20
谷風 @Tanikaze_DD

「比叡姉様…優しい。キスして…」 「うん、いいよ。ん?うん…?は…?な、なに!?言っちゃっ!!てんの!?」 霧島が目を閉じると、比叡は慌ててそう叫んだ。 「いいじゃないですか〜。ぶちゅーと」 霧島が唇を突き出すと、そこに何者かの靴底がめり込んだ。

2013-07-22 18:10:23
谷風 @Tanikaze_DD

「艦隊内恋愛は榛名が許しません!」 霧島の顔面に蹴りを食い込ませたのは姉の榛名だった。 「いい所だったのに、もう何なんですか。何しにきたのですか、榛名」 「夕補給の時間なので呼びに来ました。今日は弾薬ハンバーグです。金剛姉様が早く食べたいと喚いてます。なくなりますよ」

2013-07-22 18:18:46
谷風 @Tanikaze_DD

食事のため、弾薬庫に向かう霧島を榛名が呼び止めた。 「霧島姉様。先程の赤城さんとのことも、比叡お姉様との会話も聞いてしまいました。ごめんなさい。心配だったので…」 「別にいいわ。恥ずかしいところを見せちゃったわね」 榛名は薄っすらと涙を浮かべている。 「榛名…?」

2013-07-22 18:23:19
谷風 @Tanikaze_DD

「あの赤城さんは、霧島姉様の知ってる赤城さんじゃないかもしれません。でも彼女と同じ魂を持ってます。確かに記憶や経験はないかもしれないけど思い出は消えてしまったかも知れないけど。それならもう一度赤城さんと想い出を紡ぎ直して欲しい。きっと亡くなった赤城さんもそれを望んでると思います」

2013-07-22 18:27:24
谷風 @Tanikaze_DD

「…そうね、榛名。私、赤城さんに謝ってくる」 霧島の言葉に榛名は満面の笑みで頷いた。 「また前の赤城さんのように彼女とも仲良くできるとおもう?」 「霧島姉様が望むなら」 霧島も笑みを浮かべ榛名の言葉に、ありがとう、そう答えた。

2013-07-22 18:41:29