FC東京U-18の変化

どなるど@B_F_F_Hさんが浦和レッズユース対FC東京U-18でのチーム変化について
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どなるど @B_F_F_H

アルゼンチンに「エンガンチェ」という表現がある。日本語に言い換えれば「トップ下」となるこの造語だが、リケルメ、オルテガ、サビオラ、アイマールらが「エンガンチェ」としてチームに貢献し、ファンに多くの喜びと興奮をもたらしてきた。

2013-07-24 20:57:25
どなるど @B_F_F_H

イタリアに「ファンタジスタ」という表現がある。特に攻撃的センスに秀で、そのアイデアと閃きで観客やマスコミを虜にした選手に対して贈られる特別な賛辞であり、最初にマスコミからこの賛辞を贈られたとされるのは、ロベルト・バッジョだと言われている。

2013-07-24 20:58:42
どなるど @B_F_F_H

バッジョのプレーを今更私がどうこういう必要はないだろう。全ての攻撃的なプレーに意図があり、色気があり、可能性がある。例え運動量がなかろうと、例え守備面での貢献度が低かろうと、彼のスペシャルな才能がそれらのマイナスをかき消すことは、容易いことだった。

2013-07-24 20:59:08
どなるど @B_F_F_H

しかし、「エンガンチェ」や「ファンタジスタ」が生き残れる場所は、現代サッカーにおいては存在しないとさえ言っていい。もちろん今も、その攻撃センスやアイデアで周りを魅了させられるプレーヤーはいる。しかし、そんな選手も今の時代は、守備を求められる。

2013-07-24 21:00:27
どなるど @B_F_F_H

また、プレーメーカーという目線で見ても、「ボランチ」「ピボーテ」「レジスタ」などと呼ばれる、最終ラインの1つ前にポジションする選手がプレーメーカーとしてピッチに立つチームが圧倒的に増え、「ビルドアップ」という名の下で、最終ラインの選手にも攻撃的センスが求められる時代となっている。

2013-07-24 21:01:46
どなるど @B_F_F_H

もはや、「守備をさほどしないけれど、FWの下にいて、攻撃でその分を補います」というタイプの選手は、様々な観点から起用しづらい存在に成り下がっていると言っても過言ではないだろう。

2013-07-24 21:02:24
どなるど @B_F_F_H

去る日曜日に行われたプリンスリーグ、浦和ユース対FC東京U-18。試合開始30分前、両チームの選手がウォーミングアップのためにピッチに現れ、スタンドに詰め掛けた東京ファンはスタメンと思われる選手を確認していた。その中に、今季公式戦初スタメンとなる背番号15、佐々木渉の姿があった。

2013-07-24 21:03:44
どなるど @B_F_F_H

U-15むさし時代から関係者に一目置かれる存在で、去年開催されたAFC U-16選手権の日本代表の一員として、準優勝&U-17ワールドカップ(今年秋にUAEで開催)への出場権獲得に大きく貢献した選手だ。しかし、いつの日から、彼の姿を小平グランドで見ることができなくなった。

2013-07-24 21:05:11
どなるど @B_F_F_H

その理由はわからなかった。何となく耳にしたものもあったが、確かなものではないので、それをここで書くことはしない。そんな佐々木が、とある日、ひょっこり帰ってきた。7月7日のプリンスリーグ、対大宮戦後に行われたB戦(サブ同士の練習試合)で、ついにプレーする姿を目にすることができた。

2013-07-24 21:06:57
どなるど @B_F_F_H

ボランチとして起用され、立ち上がりからボールは彼に集まり、周りの状況を的確に判断しながら、多彩なキック、エレガントな身のこなし、「なぜそこが見えていたんだ!?」という視野、機を見たドリブルやフリーランでのオーバーラップ、攻撃のあらゆる場面に彼の存在があった。

2013-07-24 21:07:27
どなるど @B_F_F_H

一方で、守備面での貢献度はかなり低く、ボランチとして最低限埋めなければいけないスペース、寄せなければいけない局面ですら周りに任せてしまうシーンが何度か見られた。U-15や代表では守備もこなしていただけに、この極端すぎるプレースタイルにはプラスも、マイナスも覚えた。

2013-07-24 21:08:11
どなるど @B_F_F_H

そのイメージを持った上でのスタメン起用。ボランチなのか、サイドなのか、どこで使うのか、スタンドは最後まで意見が分かれた。私は一応「ボランチだろうな」と自答し、整列・挨拶後にピッチに散った佐々木の姿を眺めていた。その答えは、なんとトップ下だった。

2013-07-24 21:08:57
どなるど @B_F_F_H

果たして、佐々木がこの日みせたプレースタイルは、私の目には典型的な「エンガンチェ」に見えた。圧倒的な攻撃時の存在感と、現代サッカーにおいては物足りない守備と。この日の立ち上がりに守備がはまらなかったのは、浦和のやり方に苦しんだこともあるが、前の圧力が足りなかった面もあるだろう。

2013-07-24 21:14:59
どなるど @B_F_F_H

しかし、試合が進んでいくうちに東京の守備に変化が見て取れた。失点はセットプレーだったのでさて置くとして(要改善ではある)、立ち上がりからの組織守備がハマらない場面は依然見られたが、それによって晒されたはずの個人が守備をする局面で、中盤以下の選手がファイトできるようになったのだ。

2013-07-24 21:16:53
どなるど @B_F_F_H

浦和の両SBの攻撃参加により全体が横に広げられ、外から中への攻撃を意図的に作られた中で、各選手が決してクリーンではなかったものの泥臭く、粘り強くボールホルダーと向き合い、長い距離を追うことも厭わず、身体を寄せ続けた、足をねじ込み続けた。

2013-07-24 21:18:26
どなるど @B_F_F_H

長澤は前半から対面の森を追って自陣まで30~50m戻って守備をして、奪った直後に踵を返して浦和陣内目指して走り始め、ボールを受けて時間を作ったり、クロスを入れたりと攻撃に寄与することもできていた。また、一番キツイ仕事をしていたと思うが、運動量も最後まで落ちなかった。

2013-07-24 21:20:13
どなるど @B_F_F_H

これまでテクニシャンというイメージしかなかった高橋が、泥臭い仕事も、相手との接触も恐れずに戦ってくれたのは、嬉しい誤算だった。上手さは認めるけど、怖さが足りないと感じていた輪笠も、この日は攻守両面で相手の脅威となれていた。

2013-07-24 21:21:42
どなるど @B_F_F_H

鴨池は、本来蓮川が担ってもいい負担をも背負った。トップの練習試合に度々呼ばれ、現在のU-18日本代表でもある鴨池だが、正直チームにおいての貢献度には不満もあった。しかし、この日の鴨池は代表に選ばれるにふさわしいプレーを見せてくれたし、腕章を巻くに値するだけの気持ちを見せてくれた。

2013-07-24 21:23:57
どなるど @B_F_F_H

田宮は長澤との意思疎通がうまくいかなかった部分こそあったものの、そんな苦しい場面をしのぎながら1対1での粘り強さを見せ続け、タイミング良くオーバーラップして攻撃に貢献する頑張りをも見せられていた。

2013-07-24 21:25:08
どなるど @B_F_F_H

大西、渡辺は、浦和の中から外、外から中への攻撃がスムーズにいっていたため、立ち上がりから奮闘することを求められた。終盤かなり苦しそうな仕草も見られたが、最後の最後、ギリギリのところで身体を投げ出し、相手の余裕を奪うことはできていたし、大西はエアバトルでも相手を上回っていた。

2013-07-24 21:26:30
どなるど @B_F_F_H

繰り返しになるが、組織守備の面において、佐々木トップ下はマイナスに働いた部分が大きかった。しかし、そのことによって周りの個の守備意識は間違いなく高まった。

2013-07-24 21:28:07
どなるど @B_F_F_H

結果的に…という側面が大きく、しかもかなり逆説的で、決して健全ではない形だった。それでも、この要素こそが今季のチームに足りなかったものだし、佐々木の起用がこの要素にプラスをもたらしてくれたと思う。まあ、なんとも不思議な感じではあったが、私は一人ほくそ笑んでいた。

2013-07-24 21:29:47
どなるど @B_F_F_H

そんな、怪我の功名とも言える個人の守備意識向上が、ついに組織守備を立て直すまでに至ったのには正直驚いた。30分を過ぎたあたりから矢島、佐々木の前線からの追いがハマるシーンがちらほら出始め、後ろの選手も前の2人の追いのリズムに適応し、連動して動けるようになっていった。

2013-07-24 21:31:58
どなるど @B_F_F_H

そこに、個で奪えるこの日の良さが加わり、「奪ってショートカウンター」の形も何度か見られた。まさにその形で田宮がシュートまで持ち込めた35分の場面は惜しくもポストに弾かれたが、前半のうちに同点に追いつけたのは、まぎれもなく守備の頑張りからだった。

2013-07-24 21:34:02
どなるど @B_F_F_H

一方、攻撃面での貢献度はもの凄かった。コンパクトなブロックディフェンスを敷く浦和守備陣の、決して広くはないスペースを見つけてはフワフワっとそこに入り込み、ブレないファーストタッチで次のプレーをするための時間と空間を自ら作り、前後左右に長短のパスを振り分け、時にはドリブルも見せる。

2013-07-24 21:36:18