『マルドゥック・スクランブル』単行本版、文庫版について。

『マルドゥック・スクランブル[改訂新版]』『マルドゥック・スクランブル[完全版]』についての担当編集のツイートをまとめてみました。
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塩澤快浩 @shiozaway

『マルドゥック・スクランブル』文庫版(完全版)3巻、ゲラチェック終了、してました3日前に。その後、燃え尽き症候群というか何というか、24時間起きていたり、10時間寝てしまったり、幼稚園訪問があったりで、ご報告が遅れた次第。

2010-09-25 01:57:26
塩澤快浩 @shiozaway

で、その3巻は、足しては削り足しては削りで、結果的にページの増減はほぼなし。冲方氏が言うように、エンターテインメントは「精神の血の輝きを明らかにするためのもの」であるとするなら、その輝きを磨く作業に微力ながら携われたことは、まさに文芸編集者冥利に尽きる、とだけ言っておきます。

2010-09-25 02:06:48
塩澤快浩 @shiozaway

と言っている間に、日付変わって今日25日は、単行本版『マルドゥック・スクランブル〔改訂新版〕』の発売日。そもそも改訂版の執筆は冲方氏からのお申し出でしたが、単行本版の刊行は担当編集である私の発案でした。(続く)

2010-09-25 02:14:04
塩澤快浩 @shiozaway

本屋大賞を受賞した『天地明察』で初めて冲方丁という作家を知った読者にとって、イラスト付きの「いかにもSF」という文庫3冊は手に取りにくいだろう、ではデザインのみの装丁の単行本で勝負してみたい、というのがそもそもの発端でした。(続く)

2010-09-25 02:23:08
塩澤快浩 @shiozaway

オリジナル文庫3冊を合本にして、読みやすさを考えた1段組で、しかも買いやすさを考えて定価上限1900円としたとき、ページ数のマックスは648P。冲方氏による改訂第1稿は700ページを超えるものでした。そこから単行本約50ページ分を圧縮する作業が始まったのです。(続く)

2010-09-25 02:34:24
塩澤快浩 @shiozaway

それは単に内容を割愛していく行程ではなく、より簡潔かつ凝縮された文章で、いかにしてオリジナルと同様の内容を、いや、オリジナル以上の内容を伝えるか、という挑戦でした。以下に改訂新版の冒頭数行を引用してみます。オリジナル版をお持ちの方はぜひ読み比べてみてください。(続く)

2010-09-25 02:40:21
塩澤快浩 @shiozaway

「死んだほうがいい」/ ほとんど声にもならない、吐息のようなささやきがこぼれた。/ ささやいたあと、少女は、そっと言葉の意味を考えようとした。考え続けるには努力が必要だった。あまりに慣れきった感じがするせいで。無意識のひとりごとは多いほうではない。(続く)

2010-09-25 02:44:18
塩澤快浩 @shiozaway

たまに脳裏で歌のようなものが聞こえることはあるが、歌を止めたくて頭をかきむしるなんてこともなかった。/ 以前一緒に働いていた女の子たちの中には、ひたすら同じ調子で喋り続ける子がいた。そういう子は、自分が何を言ったか覚えてもいない。そのほうが安心するのだ。(続く)

2010-09-25 02:48:30
塩澤快浩 @shiozaway

まあ、この冒頭部分については、凝縮だけでなく、積極的な加筆も施されているわけですが。さて、本日発売のこの単行本版と新文庫版の違いについては、また後ほど。

2010-09-25 02:54:59
塩澤快浩 @shiozaway

ではそろそろ、『マルドゥック・スクランブル』〔改訂新版〕(ハードカバー版)と、〔完全版〕(文庫版3冊)の違いをつぶやかせていただきます。改訂新版の原稿が出来上がった時点で、今度はページの制約で圧縮された約50ページ分を、再び加筆し直してもらうつもりでした、少なくとも私は。(続く)

2010-09-29 01:54:26
塩澤快浩 @shiozaway

ところが、〔改訂新版〕の原稿が、そのあまりにも研ぎ澄まされた文章によって、これまでの内容を過不足なく伝えきってしまったんですね。つまり、改めて50ページ分を加筆し直す必要がなくなってしまったのです。(続く)

2010-09-29 01:58:38
塩澤快浩 @shiozaway

とはいえ文庫3冊の〔完全版〕では、いくつかの場面でそれぞれ数ページ分程度の加筆がなされています。どの場面かを指摘するのは、あまりにも無粋なので避けたいと思います。オリジナル版にもともとあった描写が復活している部分もあれば、〔改訂新版〕にもなかった全く新しい加筆もあります。(続く)

2010-09-29 02:04:34
塩澤快浩 @shiozaway

あとは、45字×21行のハードカバー版から40字×17行の文庫版へと、当然、文字の組み方が変わったことから、その字数行数で見栄えが良いように文章的にはこれまた無数の修正が加えられています。大きな変化としてはひとつ、2巻と3巻の切れ目がオリジナル版とは変わっていることです。(続く)

2010-09-29 02:10:36
塩澤快浩 @shiozaway

というわけで、〔完全版〕と謳っている以上、そちらが現時点での最終版であることは間違いありません。ぜひそちらをお読みいただければと思います。ただ、〔改訂新版〕が未完成なバージョンかといえばそんなことはなく、加筆が少ない分、〔完全版〕以上のスピード感が得られる場面もあります。(続く)

2010-09-29 02:26:27
塩澤快浩 @shiozaway

それに、1冊にまとまっていることと、3分冊になっていることでは、そもそも読み心地がだいぶ異なると思います。そのあたりの感触については、〔完全版〕第3巻の巻末に収録された鏡明さんの新しい解説が、私などより100倍もうまく説明してくださっています。(続く)

2010-09-29 02:31:28
塩澤快浩 @shiozaway

というわけで、〔改訂新版〕と〔完全版〕の違いを楽しんでいただきたい気持ちもありますが、そもそもの企画としては、〔改訂新版〕が『天地明察』で冲方丁という作家を知った一般文芸の読者向け、〔完全版〕が従来の原作読者+コミック版/アニメ版から入った読者向け、というつもりで編集しました。

2010-09-29 02:40:59
塩澤快浩 @shiozaway

では、まとめよろしく~

2010-09-29 02:41:33