Turing次数理論のMartin予想をめぐる対話

またまた、集合論家DIkeさんと計算論家トリイロさんの対話です。往年のヴィクトリア・デルフィノ問題について。S.JacksonによるProjective Ordinalsの計算の話題から、Turing Degreesのグローバルな構造に関するMartin予想の話へと進みます。
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Takayuki Kihara @tri_iro

ヴィクトリア・デルフィノ懸賞問題 http://t.co/qhip4eQOqb って第何問題がどういう風に解けたかのリストってどこかに無いのかなあ。いや、第1問題(δ^1_5を決定せよ)と第5問題(マーティン予想)以外の内容よく知らないけど。

2013-07-29 21:00:58
Takayuki Kihara @tri_iro

証明知らないけど、Steve Jackson http://t.co/hCz41Gtv72 によるヴィクトリア・デルフィノ第1問題の解決 (δ^1_5=aleph_{ω^ω^ω+1}) http://t.co/lNjaDcmxIa は主張だけからも危険な香りがする。

2013-07-29 21:08:14
Takayuki Kihara @tri_iro

@DaiskeIkegami δ^1_4までは簡単なんですか。δ^1_4とδ^1_5で難しさに差が出るというのは結構意外ですね。

2013-07-30 23:52:25
Takayuki Kihara @tri_iro

@DaiskeIkegami おお、Cabal volumeにサーヴェイが載る予定なんですね。なんか調べてもVictoria Delfino問題のその後まとめみたいな感じの情報が全然見つからなかったので、ちょっとこれは気になりますね。

2013-07-30 23:59:13
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro 一般の自然数 n に対して,AD+DCの下で,a) δ^1_n は可測基数,b) δ^1_n < δ^1_n+1, c) δ^1_2n+2 = (δ^1_2n+1)^+, d) δ^1_2n+1 = (κ_n)^+ はすぐにわかります。

2013-07-31 15:00:15
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro ここで,κ_n は共終数 ω のある基数です。 δ^1_1 が ω1 になることはすぐにわかるので, δ^1_2 は ω2 になります。 δ^1_3, δ^1_4 を知るには κ1 がわかればいいんですが,

2013-07-31 15:03:12
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro κ_n を知るには δ^1_n 上の measure たちについてわかればよく,この文脈で本質的になる δ^1_1 ( = ω1) 上の measure は club filter の k-product たちしかないので,

2013-07-31 15:05:23
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro それを使うと κ_1 = ω_ω がわかり,δ^1_3 = ω_ω+1, δ^1_4 = ω_ω+2 がわかります。

2013-07-31 15:07:07
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro δ^1_5 を知るためには κ2 について知る必要があり,このためには δ^1_3 上の measure たちについて理解することになり,これが非常に複雑なんです。δ^1_5 の計算ができると,それ以降は結構パラレルに議論できるみたいですね。

2013-07-31 15:09:39
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro δ14 までの計算の基本的な文献は,これ(http://t.co/lM2eUO0JI6)です。Moschovakis の DST に書いてあることがだいたいわかっていれば読めると思います。

2013-07-31 15:14:58
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro ええ,Cabal seminar 81-85 が書かれた後に提示された二つの問題も含め,問題の背景,歴史,(解かれているものは)解法の概略が載るみたいです。

2013-07-31 15:31:14
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro 今振り返ると,Victoria Delfino問題のほぼ全てが現在の記述集合論・内部モデル理論に重要になる問題(あるいは定理)になっており,当時から,超コンパクト基数を持つ内部モデルを構成するという目標がいかに AD の研究を支えていたかがよくわかります。

2013-07-31 15:32:56
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro う,正しくは「 κ_n を知るには δ^1_2n-1 上の…」です。失礼しました。

2013-07-31 15:38:03
鏡 弘道 @kagami_hr

TL の難しい話を聞いているとあたかも δ^1_n の n が n 次元ユークリッド空間的な難しさを持っているような気がしてしまう。

2013-07-31 15:41:52
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@kagami_hr この場合,次元の代わりに,複雑さを考えるうえでの量化子が増えていきます。AD の下では,δ^1_n という順序数を理解すればΔ^1_n 集合たちについてほぼ全てのことがわかるので,

2013-07-31 15:50:54
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@kagami_hr δ^1_n という順序数(projective ordinals)を決定することは当時非常に重要な問題でした。

2013-07-31 15:51:10
鏡 弘道 @kagami_hr

@DaiskeIkegami ありがとうございます。3, 4 辺りで難しくなり 5 以上は一般論的な部分が n 次元空間に似ているなと素人考えでした。

2013-07-31 17:33:07
Takayuki Kihara @tri_iro

@DaiskeIkegami おお、なるほど。丁寧な説明ありがとうございます。δ^1_4までは求めるのが簡単で、δ^1_5以降の奇数番を求めるのが難しそうだということはなんとなく分かりました。

2013-07-31 18:35:41
Takayuki Kihara @tri_iro

@DaiskeIkegami なるほど、そんなに大きな影響を与えた問題だったんですね。ところで問題中でMartin予想だけ異質な感じがしますが、これは記述集合論や内部モデルの話に関わることはあったりするのでしょうか。

2013-07-31 18:45:30
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@kagami_hr なるほど。今回の場合は,κ1 の計算がベースステップで,一般の κ_n の計算がインダクティブステップです。そういう意味では,ベースステップが簡単でインダクティブステップが難しくなってます。

2013-08-01 16:50:09
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro 確かにちょっと異質ですよね。> Martin 予想 記述集合論についてはボレル同値関係とつながりがあります。チューリング同値関係が可算ボレル同値関係で universal か,というのは今でも未解決ですが,

2013-08-01 16:54:36
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro Martin 予想をボレル関数に制限したものが成り立つとすると,チューリング同値関係が可算ボレル同値関係でuniversalにならないことがわかります。Kechris はチューリング同値関係が可算ボレル同値関係で universal になると予想しているので,

2013-08-01 16:56:38
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro Martin 予想と Kechris 予想は相反する二つの予想になっています。この話については例えばこれ(http://t.co/GmK6Vr7MEt)を見てみてください。

2013-08-01 17:00:26
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro 他にも,Martin 予想とボレル同値関係,ergodicity の関係についていろいろ研究されています。このへんについては例えばこれ(http://t.co/Va13IUyFur)を見てみてください。

2013-08-01 17:02:32
Ikegami Daisuke @DaiskeIkegami

@tri_iro Martin 予想と内部モデル理論の関連については,僕が知る限りでは特にありません(僕の知識不足のせいかもしれません)。可能性のありそうなつながりとしては以下の二つでしょうか:

2013-08-01 17:07:19