第二大罪大戦《第五の狭間》【戦闘フェイズ1】

紅(ルージュ)は強欲、アヴァリス(@soujyu00_sin) 黒(ノワール)は色欲、フライシェスラスト(@meiji_sin2) 狭間に出で遭い、交叉する。
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イーシェ @meiji_sin2

扉を自ら選ぶことをしなかったのは、忘却の記憶に無意識に引きずられないための自衛だったはず。 ――しかし黒の怠惰の下した判断はまるで、その過去を断罪させるような扉。 覚えのない声に呼ばれ導かれるように進む道は、いつしか懐かしいあの約束の地へと向かっていた。

2013-08-04 22:21:35
リズ @soujyu00_sin

いつか扉を選ぶ日を迎えるなら。 選ぶ数字はたった一つだと決めていた。 『五』回目――約束の日に。 『あたし(アヴァリス)』は『あたし(強欲)』だからこそ願いを叶えに『あの日』に行くと。 例えその結末が      だとしても。 ちりん。黒猫の鈴が鳴る。 ああこれは  の記憶?

2013-08-04 23:15:45
イーシェ @meiji_sin2

見覚えのある風景、嗅ぎなれた夏の匂い。頬を撫でる風は、あの頃にそっくり。 人間だった頃という記憶にある故郷の光景にも似たその場所に、狭間というものは足を踏み入れた者の心を読むのだろうかと疑問を感じる。 しかし歩みを止めるわけにもゆかないとその眼下に青が広がるまで。

2013-08-04 23:17:27
リズ @soujyu00_sin

識らなかった ――否、識っていた。自分達以外の『罪』が在る事を。 この日が来なければ ――否、どこかで待ち望んでいた。 だから。 約束できなかった。言えなかった。 果たせない言葉は、言えない。 封じた『自分』深い深い光届かぬ海の底。 それでもきっと無意識で、わかっていたから。

2013-08-04 23:19:49
イーシェ @meiji_sin2

「――ハ、ハハ」 此処に来るのは『五』回目で、『忘れて』と願う声。 逢いたくて、逢いたくて、でも覚えていなくて名前すら呼べない、逆光の中で微笑む少女。 最後まで笑顔だった、あの……。 此処へは紅を殺す為に来た筈、なのに。

2013-08-04 23:20:37
リズ @soujyu00_sin

ちりん。 気づけば立っていたのは丘の上。 降り注ぐ太陽の日差しは肌を焼く様。透き通った海。 水平線と混じる様な澄み切った、何処までも続く夏の空。 潮の香りを風が運んでくる。 狭間に不釣り合いな場所に疑問を抱くも視線は『懐かしい』風景から目を逸らせず。 ――ただ、海を見つめ。

2013-08-04 23:30:42
イーシェ @meiji_sin2

この丘を登り切ったところに、少女は待っているのだろう。 確信を持ってしまえば足はもう迷うことなく『懐かしい』中に姿を溶けこませる。 「今日は――いい天気だな」 海を見ている似たような色の背中へそう、話しかけ。

2013-08-04 23:39:50
リズ @soujyu00_sin

声に振り返るのは、褐色の肌に、金色の瞳。黒い短いウェーブの髪には、 一片欠けた白いプルメリアをさした『少女』 首に結ばれた紅色のリボンがゆらり、風に揺れる。 「ええそうね!…あなたが、黒(ノワール)?」 ちりん。 同時に、少女の足元の黒猫が金色の瞳で真っ直ぐに男を見据える。

2013-08-05 00:00:00
イーシェ @meiji_sin2

風に揺れる黒い髪、同じ漆黒を沈める目に金の瞳を受け止める。 甘い匂いの花はあの日髪にさしたそのまま白く、しかし足りないような気もして。 「そうだ、黒《ノワール》の色欲《フライシェスラスト》」 「紅《ルージュ》の、…………」 「リズ」 絞りだすような声。

2013-08-05 00:21:41
リズ @soujyu00_sin

振り返った先の男の姿。自分と同じ褐色肌に黒い髪。黒い瞳を―― どこかで、見た。同じ光景を、眼差しを。この呼び名を、声を聞いた。何処で? 「…リ、ズ?え、それ、あたしの名前?何で知ってるの?」 ちりん。少女と対照的に黒猫が尻尾を振る。まるで、名に、こたえるように。 →

2013-08-05 00:44:37
リズ @soujyu00_sin

→ ふるり頭を振る。ここは狭間。相手は殺すべき、黒。 わからない感覚を遮る様、き、と相手を見つめ。 「黒の、フライシェ…ああああ!アンから聞いてたけど! 何で!黒ってこう長い名前ばっかりなの!いいわ、勝手に呼ぶわ、あなたは――」 言いかけ止まる。何を、言おうとしたの。その先は

2013-08-05 00:45:39
イーシェ @meiji_sin2

「なんで、だろうな」 あの日、最後に見た時とおなじで違う眼差しと声。 黒猫を見ると、金色が返事をしたような気がしたからこれで良いのだろう。 表情を造る余裕が生まれた、眉を下げて少し情けない顔。 『天使《マレイカ》』と呼んだ出会い、期限付きの逢瀬、じわりと記憶が蘇りはじめる。→

2013-08-05 01:07:13
イーシェ @meiji_sin2

→ 強欲の声と少女の声が重なる。睨むような視線が、変わらないままだったから薄布で隠した口に笑が浮かぶ。 アン、が誰を指すのか気づかないまま、言いかけた言葉の続きを促すように強欲を見下ろした。 「そうやって勝手に呼んだよな」 ほんとうに、紅だったけれどこの少女は。

2013-08-05 01:07:48
リズ @soujyu00_sin

あの時も同じことを繰り返した ――あの時? 長い名前が覚えられず。勝手に呼び名を付けた。あたしだけの ――その名は? そうしたら、あたしも、名を呼ばれた。あなただけが知る呼び名 ――何て名? 吹く海風。瞬きすらせず真っ直ぐに見据え、確かに動く唇。呼んだ、名は 「イーシェ」

2013-08-05 01:25:09
イーシェ @meiji_sin2

少女と、強欲の声が重なる。 誰にも呼ばれない名前を受け止め、自分だけが呼ぶ名前で応える。 「ああ、また会えたよリズ」 真っ直ぐに太陽のような金色を見つめてから、誰を呼ぶ声よりも柔らかく甘い音を口にした。

2013-08-05 01:35:01
リズ @soujyu00_sin

一度言葉にすれば次々と浮かび上がる封じた『記憶』と『自分』 記憶のまま、それ以上に優しい声に響きに。 無邪気に嬉しげに笑う。金の双眸を細めてもう一度呼ぶ。 「ええ!ちゃんと約束通り『思い出して』くれたのね!イーシェ」 ちりん。黒猫が待ちわびていたかのようになぁ、と足元で鳴く。

2013-08-05 01:56:28
イーシェ @meiji_sin2

空白を埋めるかのように思い出される『記憶』たち、欠けていたものが全て揃うのを感じた。 「ああ、『思い出した』よ」 自分に足りなかったもの、弱さ故に縋りついた『罪』の重さ。 黒猫にも笑みを向けると撫でようと手を伸ばした。 背負うのは二つの想い。

2013-08-05 11:10:21
リズ @soujyu00_sin

ちりん。黒猫は自分へ視線を向けられると何の躊躇いも無く色欲の元へ。 伸ばされた手へすり、と身を寄せる。会いたかったと言う様に。 嘗て出会った時に黒猫は強欲の傍には居なかった。 それでも懐かしい少女と同じ気配。同じ黒に金色の瞳。 わかるだろう。『黒猫』も『強欲(アヴァリス)』だと

2013-08-05 12:59:20
イーシェ @meiji_sin2

柔らかい黒い体毛を撫でる、そこには確かにもう一人の『強欲』の気配があった。 甘えるような仕草に相好を崩し、涼やかな音の鈴の音を聞きながら小さな温度を抱き寄せる。 ずっとこの手に迎えたかったから、初めてなのにそんな気もしない。 「リズ、悪かったな」 忘れていたとはいえ、色々あった。

2013-08-05 13:10:06
リズ @soujyu00_sin

ちりん。抱き寄せられれば嬉しそうに尻尾を振る黒猫 黒猫を甘やかす色欲の態度にむ、と拗ねる様眉をしかめて。 「ちょっと!こっちも見てよ!……まあいいわ!思い出してくれたから!」 返して、と手を伸ばしながら、謝罪には笑う。 「だって、言ったのは、あたしだもの。『忘れて』って」 →

2013-08-05 15:15:55
リズ @soujyu00_sin

→ 『忘れて』と言ったのは『あたし』 『思い出して』と言ったのも『あたし』 この丘と同じ風景で、あの日、あの場所で。 『一』回目――遠い日、『色欲』との最初の出会いを今ならはっきりと思い出せる。

2013-08-05 15:16:53
リズ @soujyu00_sin

『強欲』の座についていた『あたし(アヴァリス)』は時折現界のその丘に訪れた。 元より『ひと』だった頃から孤児で、気づいたときには兄達と孤児院にいたから。 生まれた場所なんて覚えていない。 けれど『懐かしい』と思って。また別の思いも無意識にあって。ひとり足を運んだ。 →

2013-08-05 17:24:13
リズ @soujyu00_sin

→ 『マレイカ(天使)』と、声をかけられたのはそんなある日。 一目見て相手も『ひと』ではない。自分と同じ『大罪』。 けれど『相容れないもの』だとすぐわかった。 それでも同じ肌と髪の色という親近感と、自分が大好きな景色を褒められれば嬉しくて。 気にせず、他愛のない話をした。 →

2013-08-05 17:24:56
リズ @soujyu00_sin

→ 名を尋ねれば『フライシェスラスト(黒の色欲)』と名乗った。 難しく覚えきれなかったから『イーシェ』と勝手に呼んだ。 『アヴァリス(紅の強欲)』と名乗ったあたしを『リズ』と呼んだ。 初めて呼ばれた、呼び方。二人しか知らない。あたしだけの、この人だけの。 →

2013-08-05 17:25:17
リズ @soujyu00_sin

→ 本当は覚えきれないなんて嘘だった。 『難しい言葉』が分からないのは『子供の領域』でもその時の『あたし』は違ったから、覚えられたけど。 『俺のリズ』色欲の口のうまさで甘やかに呼ばれる事を否定しながら その響きは本当は嫌いじゃなかった――好きだった。あたしだけの名で呼ぶ事も →

2013-08-05 17:26:05
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