サマーウォーズ中の人がロボットアニメの画面レイアウトを語る
ちょっと仕事の合間に、今日ガンダム00を見て思ったロボットアニメ、特に劇場版の画面作りについて思った事を書こう。実は前からこういうことは考えていて、アニメの背景美術の人なんかにも話を聞いたことがあるんだけど。要するにロボットアニメの室内空間の構図の取り方のこと。
2010-10-02 01:06:02続き) 「画面を持たせる構図」の考え方は色々あるのだが、基本的に画面を分断するラインをどう配置するかってことがある。通常の地上だと、水平線とか山の稜線とか、ビルとかね。宇宙空間ではそれがないので、安定した構図を求めていろいろな映画が試行錯誤していた。
2010-10-02 01:08:43続き) 「2001年」でディスカバリー号が細長いのも、画面作りに貢献している。スターウォーズのスターデストロイヤーもそうですね。前景のキャラ、ロボットや戦闘機の背後の後景を、あの分割線が安定させている。ガンダム00のTV本編では、軌道エレベーターがその役割だった。
2010-10-02 01:10:44続き) ガンダムのスペースコロニーも同様。ただ劇場版00は、宇宙空間で構図を安定させる要素があんまりなかったね。だから飛び道具をいっぱい飛ばせるアクションが多くなってちょっと辛かった。
2010-10-02 01:12:26続き) 宇宙空間の画面だけだと持たないので、そうなると宇宙船内の室内シーンは欠かせない。ロボットアニメって、室内シーンをすごいアオリで描くのがルールになっている。実はこれはリアルな描写ではないんですよね。
2010-10-02 01:16:28続き) たとえば、シャアのポン寄りって、後景にはムサイの天井が映っている。これはウエストレベルから撮影しないとそうならない。(よくアニメ関連で「アイレベルが高い・低い」と書いている例があるけど、それは誤用。「アイレベル」というのは地面から160cm程度の高さのカメラアングル)
2010-10-02 01:21:20余談の続き) つまり、この場合「アイレベルが低い」ではなく、ロボットアニメの室内空間ではカメラアングルがアイレベルより低く、ウエストレベルに近い」と言うべき。まあこれはカメラマン的な言語ではそうなる。じゃあなぜウエストレベルで撮るのかというと、後景の消失点の処理が面倒だから
2010-10-02 01:23:50続き) 本当のアイレベルで、実写と同じように宇宙船の通路やブリッジを撮るとどうなるか。結局通路の奥が見えるだけで、消失点まで描かなければいけない。そのくせ、画面全体をキレイに分割する分割線は、狭い閉鎖空間では存在しない。だからアオリで天井を映して楽をするんです。
2010-10-02 01:26:58続き) ここでいう「後景の分割線」とは、構図を決める線のことなので、単なる天井と床の境目では不十分。水平線くらい画面を分けたいもの。アニメスタイルにおける湖川さんの「アイレベル云々」の発言と関連しているか分からないけど、「イデオン」では随分と大きな発明があった。
2010-10-02 01:30:16続き) それは要するに、「ソロシップ内、ブリッジの背後が森だった」ということ。ベスが何かセリフを言うポン寄りで、後景の下半分はブリッジの人工物、上は森という構図が成立する。「サイレント・ランニング」もそういうのがありますよね。
2010-10-02 01:31:50続き) 「トップをねらえ」のNY証券取引所風ブリッジも、構図を作るには良いなあと思います。ただ、ロボットアニメ全般としては、ポン寄りの後景の美術って、そんなじっくり描くモノではなく、むしろ手を抜いて済ませたいものでもある。
2010-10-02 01:34:35続き) 消失点が画面内に入ると、前景と後景のバランスが狂ってるとすぐ分かる。レイアウトが甘いとおかしく見えやすいから。天井を見せるのは効率的な省略法であり、慣習だったと思います。ただ、その慣習で出来た宇宙船の室内空間の構図は、僕の認識でスタンダード・サイズ向きだ。
2010-10-02 01:36:56続き) どうしても、アオリの天井構図って、視点が上に行ってしまうと思う。画面の上半分に前景キャラの目が配置される構図が多くなってしまう。それがスタンダードならまだしも、ビスタやシネスコだと、画面下半分がスカスカで、かつ左右のバランスも取りづらい気がするんです。
2010-10-02 01:40:28続き) もちろんこの感想はガンダム00を見て再認識したという話で、ガンダム00という特定の作品を批判するものではない。(宇宙モノの)劇場ロボットアニメはみんな同じ画面作りの課題があると思う。劇場のスクリーンを意識して、新しいルックの改革をしたロボットアニメを見てみたい
2010-10-02 01:43:32続き) そういう視点で、アニメファンにも「2001年」や初代「スターウォーズ」や「サイレント・ランニング」を見なおして欲しいなあ。アニメの画面はそういう宇宙モノ特撮SFから多くを頂き、かつ省力化して独自のルールを作っているのだから
2010-10-02 01:47:03続き) TVはスタンダード、映画はビスタという区分けもなくなって、現在はTVもワイドで画面を設計するようになった。背景のCG化や、3Dなんて要素も出てきた。宇宙モノSFはニッチだけど、これから作られるアニメには構図の革命を期待したいなあ。なんて思ってます。長々とスイマセン
2010-10-02 01:49:29昨晩のロボットアニメの構図ツイートにちょっと補足しようと思います。人間の目の画角を、35mmカメラのレンズに換算すると60mm相当です。バストショットなどは80〜90mmで撮ることが多い。これってだいたい普通のコンパクトデジカメのズーム範囲です
2010-10-02 10:31:36補足2) 日常で撮影した、コンデジの写真を見てもらうと分かるけど、立って構えたバストショットの写真は、ほとんど天井が写ってないと思いますよ。よほど低い位置から撮らないと、アニメの天井が映るショットは再現できない。
2010-10-02 10:34:06補足3) つまり「リアルなアニメ」でも、実はカメラアングルはアニメ独自のルールなんです。これはロボット物でも、例えば現実の日本を舞台にしていても、こういうアオリ天井構図はよく見かけます。現実の日本だったら、基点となるマスターショットで写真と同じカメラアングルに戻れる。
2010-10-02 10:37:57補足4) ところが、宇宙船の中のカメラアングルなんて架空のものなので、「日本の家の中」みたいに写真から描けないんですね。こういう風に、「リアルアニメ」と呼ばれる作品も、独自の記号表現で画面が成り立っている。
2010-10-02 10:41:16補足5) 補足の本題ですが、初代TVガンダムは、カメラアングルに結構揺らぎがあると思う。今ほど記号化されてません。ところがTVのZガンダムではかなり記号化・省力化が進んでいます。
2010-10-02 10:42:27補足6) 最近の新訳Zガンダムでは、TV版の流用があるので、やはり構図のルールはTVから継承せざるを得ない。逆シャアやF91は、完全に劇場だけの画面を設計できた貴重な機会だっただろうなあ。
2010-10-02 10:44:44補足7) マクロスFも、ガンダム00は新世代のロボットアニメだけど、やはりTV版の構図のルールを無視するわけにも行かない。ちなみにこの2作品は、構図の安定性よりも前景の動きの激しさを追求した画面作りですよね。
2010-10-02 10:46:29