bci_氏の『満州国の展示』に関するトラウマと『不寛容について』

大変興味深い話でもあり、また自分が常々思っていること(かつともすれば自分も陥りそうな事態であるので)自戒を込めてまとめました。
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黒色中国 @bci_

昨日から、現在の我々が、戦争当時の人々を個人的に責任追及し、断罪することについての話題がずっと続いているのだが、せっかくなのでちょっと書いておこうと思う。私がこの件にこだわるのはちゃんと理由があるのだ。

2013-09-01 00:01:31
黒色中国 @bci_

もうかなり前のことになるのだが、日本のある町で、満州国に関する展示が行われるとのことで、一緒に中国留学していた友人と見に行った。私も友人も一緒に旧満州地域を旅行したことがあったので、非常に興味深く思い、足を運んだのである。ところが、会場に着いて見てみると、見るも無残な反日だった…

2013-09-01 00:05:08
黒色中国 @bci_

物事を光と影、功と罪の両面から見るのは大切なことである。ただし、その町の満州国の展示というのは、満州国の光の部分は、影のためのもので、功は罪のためのものだ…という解釈で、満州国の罪悪を告発する内容だった。なんだか、当時満州国に関わった全ての人を罪人扱いするような、印象を受けた…

2013-09-01 00:08:04
黒色中国 @bci_

私と友人としては、別に「満州国マンセー」の内容を期待していたのではない。でも、もうちょっとそのあたりをフェアにやってもらえるんじゃないかと期待していたのだ。そして、そういう期待をしていたのは、我々だけじゃなかった…というのが問題なのであった。当時、満州国にいた老人も来ていたのだ…

2013-09-01 00:11:39
黒色中国 @bci_

老人は、展示の最後の方で、よろめきつつ、目に涙を浮かべながら、「私がいた満州はこんなのじゃなかった!」と声にならない声で訴えていた。展示側の人で、女子高生?らしき3人がそれを聞いていたのだが、ふんぞり返って腕を組み(本当にそうしていたのだ)、3人がかりで老人を怒鳴りつけていた…

2013-09-01 00:14:38
黒色中国 @bci_

展示側の女子の主張は、「満州国には良い面があったと言っても、それは侵略のためのものだ」ということで、老人が実例をあげて、あんなことも、こんなこともあった、仲の良い中国人だっていた…と話しても、全く聞く耳を持たずせせら笑う。そして、あなたも侵略に加担した一人じゃないか…と言うのだ…

2013-09-01 00:19:29
黒色中国 @bci_

実際に満州国にいた老人が、展示内容に違和感を持っているのだが、戦後生まれの若者が観たこともない満州国の「真実」を語り、元居住者の老人を糾弾し、満州国の真相を教える…という、奇妙な状況が発生したのである。女子3人はずっとヒステリックに怒鳴っていたので、展示側の年配者がやってきた…

2013-09-01 00:27:54
黒色中国 @bci_

やってきた展示側の年配者は、女子3人には何も言わずに、老人に、「ここでは他のお客の迷惑になりますから」と言って、別室へと誘うのである。迷惑かけてるのは女子3人の方だろうが!と思ったが、女子3人はそれを聞きながら、年配者の後ろで、勝利の微笑みを浮かべながら、腕を組んで老人を睨んだ…

2013-09-01 00:30:27
黒色中国 @bci_

この展示内容が偏向しているのは、この際どうでもいい。今の日本は何処に行ってもこんなものだ。展示側の女子の思想や歴史観にケチをつける気もない。私がこの件について思うのは、この女子たちに、老人を糾弾する資格はあるのか?ということに尽きる。あるのだとすれば、それは一体どんな資格なのだ?

2013-09-01 00:33:37
黒色中国 @bci_

その老人は満州国でなんらかの「侵略」に加担した人物かも知れない。その親族かも知れない。でも、満州国が消えてから、何十年も経った後に生まれた人が、資料を通じて知った歴史の断片を以って、老人を怒鳴りつけたり、断罪するのは、どう考えてもおかしい。そういうのがまかり通るのが今の日本である

2013-09-01 00:38:54
黒色中国 @bci_

この満州国の展示の話は、展示側が左翼なので、それみたことか、やっぱり左翼は…という人も多いと思うが、保守の側でも同じように、資料で歴史の断片しか知らないのに、過去にさかのぼって他者を断罪する人はいるのである。これは政治性の左右に関係ない。歴史に接する人は、もっと慎重にあるべきだ…

2013-09-01 00:46:01
黒色中国 @bci_

私と友人は、老人が部屋から出てくるのを待った。あの老人から、本当の満州国がどんなものなのかを聞きたかった。でも、いくら待っても出てこなかったし、恥辱のあまりにかなり取り乱していたので、たぶん老人が出て来ても、ちゃんと話はきけなかっただろう。だから、我々は諦めて、その場を後にした。

2013-09-01 00:48:29
黒色中国 @bci_

たぶん、あの老人は今となってはこの世にはいないだろう。当時でもかなりの老齢だったから。あの後で彼が受けた恥辱は癒やされたのだろうか、彼の無念は救済されたのだろうか…と思うのだが、たぶん癒やしも救済もなかったんじゃないだろうか。老人をそんな風に傷つける「正義」に何の価値があるんだ…

2013-09-01 00:55:17
黒色中国 @bci_

あの満州国の展示の件は、私自身の大きなトラウマになった。だから、自分の目の前で、また同じように、誰かを一方的に断罪しようとする人がいれば、とにかく「やめておけ」と言うし、その「資格」について問いただすことにしている。そんなことを繰り返して、日本が良くなるとは全く思えないのである。

2013-09-01 00:59:09

以下、gruegreen氏の考察

みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

深夜に静かに同意。「イェルサレムのアイヒマン」におけるアイヒマン裁判の弾劾を思い出す。アイヒマンは実直な役人である。上司の言う事をよく聞き、仕事ぶりがスムーズで、控えめな男。その仕事ぶりがユダヤ人の迫害に向かった事は、見ようによってはアイヒマン自身にとって悲劇であった。 #読書

2013-09-01 00:43:15
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

「イェルサレムのアイヒマン」稀代のユダヤ系哲学者であるハンナ・アーレントは彼の裁判を傍聴し、彼の讃えられるべき人間性ゆえの悲劇と悪徳を描き出す。アイヒマンは悪人ではない。実直な役人に過ぎない。ただ、「悪は陳腐」なのだ。思考を止め、目の前の資料を相手にしたという「陳腐な悪」 #読書

2013-09-01 00:48:34
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

「イェルサレムのアイヒマン」発表後、ハンナ・アーレントはシオニストから強い非難を浴びた。曰く、ナチ戦犯をかばうような描写である、と…それでも彼女は言う、「ナチは私たちと同じように人間なのだ」と。私はそれを言いきった、そして人間の悪を見つめ続けたアーレントに敬意を表する。 #読書

2013-09-01 00:54:22
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

ちなみにかの有名なスタンフォード監獄実験って、「イェルサレムのアイヒマン」が根拠になっているとかいないとかいう与太話。アーレントにしては読みやすくわかりやすいお勧めの本です。 #読書

2013-09-01 00:57:17
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

黒色中国氏(@bci_)の懺悔のような主張は、人間普遍の叫びだ。少女たちがいつかハンナ・アーレントに出会い、彼女が自らを迫害したナチの手先に、どれほど人間的な視線を向けたかを知って欲しい。そして、自分たち陳腐であるほどに「アイヒマン」になれるのだ、という事実も。 #読書

2013-09-01 01:07:42
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

おう、アーレントの件がRTされている…アーレントはナチ戦犯を憎んでいる代表者ですので、そこだけはお忘れなきよう。「人間的な視点」は、別に優しいだけのものじゃないんですから。

2013-09-01 01:15:21
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

アカン、アーレントが誤解されてしまう!と焦ってももう眠いのである。寝る。ぐう。

2013-09-01 01:16:30
黒色中国 @bci_

@gruegreen ありがとうございます。この問題に横たわる本質は、「不寛容」ということだと思います。「寛容」であることは罪を許すことではなくて、もっと広い視点で人間を観て、対話することじゃないかと。個人攻撃や断罪に終始するのでは、歴史はまた繰り返されるのではないかと思いました

2013-09-01 13:20:03
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

@bci_ こちらこそ、はじめまして。言及させて頂いた出来事にアーレントを引用した理由は、高校生の彼女たちに「想像力の欠如」を強く感じたからであり、個人的にはそこが本質と思います。アーレントは弾圧されつつも自省と考察を繰り返し、ある結論にたどり着いた。彼女らは何も考えなかった。

2013-09-01 13:47:46
みどりむし@育児中7y+1y @gruegreen

@bci_ しかし、現実に高校生くらいの子供を恣意的に「ある結論」に向かわせるのはとても簡単です。私は彼女らの背後にある意思にこそ恐ろしいものを感じました。いつか、彼女らが自らを省みた時に「自分こそが悪であった」と気づく日がきっと来ます。自分こそがアイヒマンであったのだ、と。

2013-09-01 13:55:20