「動く特異点を持たない方程式」がなぜ大事なのか
- dif_engine
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.@kyon_math 私も、動く分岐点を持たない方程式を分類したと思ったら、フックスの子倅が「モノドロミ保存変形だよー」と言い出してびっくりしました。リハルトがP6見つけたときは、こっちは最初の3つしか見つけてなくて、冷や汗かきました。
2013-09-23 23:29:06.@dif_engine 分類のモチベですか。あれはね、俺の学位論文の副査だったピカールが1893年に「1階はできたけど、2階の場合はわからん」とActaに書いてたので、じゃあ俺がやってやろう、と。で、見事やっちゃって、ピカール先生とは仲が悪くなったんですよ、ハハハ
2013-09-23 23:34:54動く分岐点を持たない方程式がなぜ重要か、パンルヴェ本人による連ツイをはじめます。 遡ると、Briot^Bouquetの楕円函数の特徴づけになるでしょう(1856)。Fを有理函数として、加法公式 f(u+v)=F(f(u),f(v))を持つ函数f(u)は何か? (続く
2013-09-23 23:39:23続2)BBの答えは「有理函数・指数函数・楕円函数に限る」です(竹内端三・楕円函数など参照)が、加法公式があればf'(u)=G(f(u))という一階自励系の解でもあり、加法公式を持てば、動く分岐点がないことは自明です。(続く
2013-09-23 23:42:49続3)BBの定理は「Gを有理函数として1階ODE f'(u)=G(f(u)) が動く分岐点を持たないなら、解は有理函数・指数函数・楕円函数に限る」という形にもなります。では、自励系ではなく一般のODEにしたらどうか? この問題は1870年頃にFuchsとPoincareが考えた
2013-09-23 23:45:14続4)F-Pの定理「一階微分方程式 F(u,f(u),f'(u))=0 が動く分岐点を持たなければ、リッカチか楕円函数か初等函数で解ける」。一般の点uに対してF_u(f(u),f'(u))=F(u,f(u),f'(u))とおくと、リーマン面 F_u(x,y)=0の種数は一定。
2013-09-23 23:48:19続5)F_u(x,y)=0の種数が0ならリッカチ、1なら楕円函数、種数2以上でも、初等函数で解ける場合は、動く特異点を持たない。この証明は易しくはないが、古典的にはForsythの6巻本に書いてある。なお、一階方程式は動く真性特異点を持たないことを示したのが私の学位論文。
2013-09-23 23:50:50続6)1階の次は2階だということになりますが、ピカールは1889年に今でいう第6パンルヴェ方程式の特殊な場合「ピカールの解」を楕円曲線の不完全周期の満たす微分方程式として導出しています。同年、パンルヴェ性を可積分系に最初に適用した「コワレフスカヤのコマ」の論文も出た。
2013-09-23 23:52:52続7)ということで、1890年ごろは「動く分岐点を持たない2階方程式の研究」をしようという動きは、方程式論からも、剛体の運動方程式の可積分性(第一積分の発見)からも、まだ代数曲面の周期という観点からも起こっており、自然な問題意識であった。
2013-09-23 23:55:32続8)さらに三体問題で、三体同時衝突の場合は衝突時間で代数的特異点になる(私の結果、のちにSundmanが拡張)ことからも、すでにパンルヴェ性と可積分性の関連は意識されており、そういう流れの中で1898年に私が最初の(間違った)分類定理を出した。これは1906年には修正された。
2013-09-23 23:58:27続8)というわけで、現代の皆さんは忘れてしまったかもしれませんが、「動く分岐点を持たない方程式」は19世紀後半には、数学全体の中でも決して特殊な問題ではありませんでした。1905年のR.Fuchsのモノドロミ保存変形との関係ありますが、可積分系や周期積分とも関係します(終)
2013-09-24 00:00:51