キルラキルと島本和彦の血。もしくはグレンラガンへの未練

キルラキルの感想に「島本和彦っぽい」と言う人が多い事への違和感を表明。あとついでにグレンラガンについても少し。
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あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

ちょっと息抜きがてらに、先日からちょこちょこ主張してる「キルラキルは島本和彦イズムとは全く別物だよ」という主張の内容を詳しく書いておいたので、ツイートしておく。

2013-10-06 19:31:02
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キルキラルの作劇は島本漫画のそれとは全く異なるものだし、もっとハッキリ言うと、アレは島本和彦イズムとは正反対の事をしてる。では何故「島本和彦っぽい」と感じる人が多いのか?と言うと、結局それは「熱血パロをやっている」という点に共通点を見出しているのだと思う。

2013-10-06 19:31:07
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俺がそれに異論があるのは、島本漫画の真価とは「熱血パロをやっている」事それ自体ではなく、「熱血パロが発生した時に、それを如何に受け止めるか」の部分にあるのだと思っているからだ。

2013-10-06 19:32:37
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キルキラルの「熱血」な部分はあくまで「理由付け」に使われている。本来であれば受け入れられるハズの無い無茶な展開やトンデモな設定を「これはあくまで熱血パロなんですよ」と演出する事で、視聴者に「これは冷静に考えちゃ駄目なんだ。ノリを楽しむアニメなんだ」と納得させているのだ。

2013-10-06 19:33:45
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すなわちキルラキルでは、アニメ内に「冷静な視点」が入る事を拒絶する事でその無茶苦茶さを成立させている訳だ。それこそが「ノリと勢いで押し切る」という事なのだろうが、それが人によっては「熱血パロって事を言い訳に使っている」ように見えてしまうと思う。

2013-10-06 19:34:44
あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

というか俺自身が若干そう見えてしまってる部分が多少あってな。 そしてそここそが島本漫画と正反対の部分だ。

2013-10-06 19:35:10
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島本和彦の漫画には「試合中に気絶してる間に100点差!?」や「ヘンテコな必殺技で悪の教育委員会と戦う高校生」などの無茶な展開やトンデモ設定が沢山あり、それらは明らかに過去の熱血スポコン漫画や特撮ヒーロー物のパロディだ。

2013-10-06 19:37:01
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しかし島本漫画のキャラクター達は、そんな無茶苦茶な漫画展開にその都度オタク的な目線からツッコミを入れる。時には茶化したり、弱音を吐いたりもする。具体例を挙げずとも島本ファンならそういったシーンはいくらでも思い浮かぶはずだ。

2013-10-06 19:37:23
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島本漫画は決して「ノリと勢いで押し切る」漫画ではない。無茶な展開を一旦冷静な視点で「そんなの無茶だよ!」と突き放す事で逆にパロディとしてそれらを成立させている。島本漫画において「熱血パロ」を成立させているのは、あくまで地に足のついた冷静な視点(言い替えれば「メタ」な視点)だ。

2013-10-06 19:38:30
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そして島本漫画が素晴らしいのはさらにそこから先だ。島本漫画のキャラクター達は、無茶苦茶な「熱血」展開に(時に斜に構えたオタク視点で)冷静にツッコミを入れるが、それと同時に彼らはそんな「熱血」にどうしようもなく憧れを抱いている。

2013-10-06 19:39:18
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無茶苦茶な展開に「そんなの無茶だよ!」とツッコミを入れながら、「でもそんな無茶苦茶を俺もやりたい。無茶苦茶になりたい!」と自分達もそこに飛び込んで行く。それこそが島本漫画だ。

2013-10-06 19:40:49
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グレンラガンでは「無茶を通して道理を蹴っ飛ばす」という台詞が決め台詞として度々登場したが、そこに逆境ナインにおける不屈の「無理が通ればー! 道理が引っ込む!」のシーンを思い出した人は多いと思う。

2013-10-06 19:41:28
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しかしグレンラガンのそれがシンプルに主人公の決め台詞であったのに対し、逆境ナインでは、不屈が熱血台詞をまくしたてている最中に敵チームの監督が「やめろ高田!口では勝てん!」とちょっと笑えるツッコミを入れている事を、この漫画が好きな人なら覚えているはずだ。

2013-10-06 19:42:56
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島本和彦のキャラクター達は、自分達の「熱血」な台詞があくまで口から出任せに過ぎない事を薄らと分かっている。しかし「口から出任せだ」と自覚していながら、それでもその恥ずかしさを振り切って本気で「熱血」をやってみせようとする。

2013-10-06 19:43:51
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「熱血」に憧れながら自分がパロディしか出来ないニセモノの熱血でしかない事を自覚しつつ、それでもなお「熱血パロ」をやり続けて、そしてやり続けたその先に、遂に真の「熱血」に辿り着けてしまった。というのが島本和彦屈指の傑作である逆境ナインの構造ではなかろうか、と。

2013-10-06 19:45:03
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(それが初期全盛期の島本漫画だったんだけど、最近は「冷静な視線」の方が勝ち過ぎてて、魅力部分がシフトチェンジしてる。それが強烈に華開いたのがアオイホノオなんだけど、そこら辺はまたちょっと別の話なので置いておく)

2013-10-06 19:45:42
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島本和彦の漫画とは、「熱血」が好きで好きで仕方の無いはずの人間達がいざ実際「熱血」な展開にブチあたった時に「でも冷静に考えてこれってどうなの?」と考えてしまう所に素晴らしさがある。「熱血とは何ぞや?」という問題提起の中にこそ、ギャグ・シリアス両面において島本和彦イズムが存在する。

2013-10-06 19:46:22
あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

そんな島本イズムは、キルラキル(もっと言えばグレンラガンの特に後半部分)における、無茶苦茶な展開を「これは元々そういう「熱血」って奴なんです。考えたら駄目なんです」といって成立させる作劇の中には一切含まれてはいない。

2013-10-06 19:47:17
あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

そういう訳で、個人的にはキルラキルを「島本っぽい」と言われるとスッゲーモニョっちゃうんだよなあ。

2013-10-06 19:47:24
あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

繰り返すけど島本和彦の漫画は決して「ノリと勢いで押し切る」漫画では無いのですよ。「ノリや勢いで押し切る」事に対して「本当に押し切っちゃっていいの?そもそも押し切れるモンなの?」とかウッカリ考えちゃうのが島本漫画なんですよ。

2013-10-06 19:48:37
あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

若干キルラキルに対して批判的っぽい文章になっちゃったんだけど、実際ノリと勢いで押し切っちゃえるだけの絵的なパワーやテンポは本当に素晴らしいと思うので、皆キルキラル見ると良いよ。スゲー良いアニメだよ。 と最後に言い訳フォロー。

2013-10-06 19:49:24
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ちょっとオマケとしてグレンラガンの話をしとく。グレンラガン素晴らしいのはカミナっつうナチュラル熱血キャラがまずいて、その隣で「こんなふうになりたいなあ。でも自分にはできないなあ」って思ってるシモンが主人公だったのが良かったんだよな。まさに島本漫画と同じ構造。

2013-10-06 19:51:34
あでのい@夏コミ新刊委託通販中 @adenoi_today

で、だからこそ、そのカミナが死んで「熱血ロボットアニメ」な展開を引っ張れる人間がいなくなってしまった時に、一度はどん底に落ちながら「俺がかわりに熱血主人公やってやるんだ!」とシモンが立ち上がるっつうのが最高に感動した。

2013-10-06 19:52:36
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だもんで、シモンが熱血主人公に昇格して「熱血キャラとそれに憧れる弱気キャラ」という二重主人公構造が無くなった2部後半は個人的にはイマイチ盛り上がらなかった。「熱血とは?」という問題提起があったからこそ俺はグレンラガン好きだったんだよな。

2013-10-06 19:53:16
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で、三部で今度は世界観自体が「もう熱血主人公が好き勝手やれる世の中じゃねえんだよ」って感じになってまた個人的に一気に持ち直した。その問題提起にどんなアンサーを持ってくるのか凄い楽しみだった。のに4部で結局全部「これ熱血アニメなんでー」って感じで無理矢理押し切る展開ンなってズコー。

2013-10-06 19:54:15