緩和を要請されている武器輸出三原則等とは、を、国際関係論と安全保障論の学徒・fj197099さんが説き明かす

武器輸出三原則、武器輸出三原則等は別ものであって、現在緩和が要請されているのは「等」
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fj197099 @fj197099

武器輸出三原則等の緩和についての話題が増えたが、この件では実は多くの人が武器輸出三原則とはそもそも何なのかを余り理解していないのではないだろうか。武器輸出三原則はそもそも日本の武器輸出の全面禁止を定めたものではないのだ。だから緩和するのは武器輸出三原則「等」となっているのだ。

2010-10-12 21:46:25
fj197099 @fj197099

誤解があるなら払拭しておかねばなるまい。まずは武器輸出三原則とは何かということだ。これは1967年の佐藤総理答弁で、①共産諸国、②国連決議の対象国、③国際紛争当事国には武器輸出をしない、という方針を指す。すなわち輸出しないと定められたのは①②③だけで、武器の全面禁輸ではないのだ。

2010-10-12 21:51:08
fj197099 @fj197099

しかし1976年、三木総理答弁による政府統一見解で武器輸出三原則を超える強力な規制がかけられた。つまり三原則対象地域以外についても、憲法及び外国為替及び外国貿易法の精神に則り、「武器」の輸出を慎むものとされたのだ。この76年の統一見解が武器輸出の事実上の全面禁輸に繋がったのだ。

2010-10-12 21:54:15
fj197099 @fj197099

これ以後、日米BMD協力等の極めて限定的な例外を除いて事実上、全ての武器輸出が禁止されてきた訳だが、これは武器輸出三原則によるものではなく、76年の政府見解という武器輸出三原則「等」によるものであった。そこで今、問題になのはこの武器輸出三原則「等」を緩和しようという話なのである。

2010-10-12 21:57:14
fj197099 @fj197099

オリジナルの武器輸出三原則は繰り返すが①共産諸国、②国連決議の対象国、③国際紛争当事国には武器輸出をしないという話であった。現在の事実上の武器全面禁輸には批判的な人でも、この三原則を維持することにはさほど抵抗感はないだろう。だから問題は「等」の部分をどう緩和してゆくかなのである。

2010-10-12 22:08:28
fj197099 @fj197099

無論、①②③以外の国でも過度な人権侵害国や武器が国内反対派の抑圧に使われかねない国等、武器輸出が適当でない国はあるだろう。だから武器輸出三原則のみで輸出規制が十分であるとはいえない。さりとて事実上の全面禁輸は今後の日本の軍事技術開発の上では重過ぎる。バランスが問題なのである。

2010-10-12 22:10:42
fj197099 @fj197099

この点で一つの考え方は欧州諸国等の民主的価値を共有している国家には武器輸出を認めることにしてはどうか、というものだ。もちろんそれが日本の同意なく第三国に転売されたり、意図せぬ形で使われたりすることには規制をかける必要があろう。しかし民主国への武器売却には問題が少ないと考えられる。

2010-10-12 22:12:41
fj197099 @fj197099

もう一つ、誤解されている可能性がある点だが、日本の武器輸出といっても例えば日本の89式小銃が世界に輸出される、という様なイメージを抱くと誤りになる。そもそも、日本国産の軍備品はコストが掛かりすぎていて国際競争力などゼロに等しい。武器禁輸を解除したところで売れるはずもないのである。

2010-10-12 22:15:39
fj197099 @fj197099

ならばなぜ武器輸出三原則等の緩和が求められているのか?それは装備品の国際的な共同開発に参加できるようにするためである。今日の世界、多くのハイテク兵器はもはや一国で独自開発できるものではなくなっている。第五世代戦闘機等がその代表例だが、国際共同開発でリスクを分散するのが主流なのだ。

2010-10-12 22:17:43
fj197099 @fj197099

ところが国際共同開発した場合、その装備が複数国で使われると日本は他国に「武器を輸出」したことにテクニカルにはなるのだ。よって武器輸出三原則等の制約がある限り、日本は国際共同開発に決して参画できない。そして軍事技術の「ガラパゴス化」を招くのだ。これが緩和を求める最大の理由である。

2010-10-12 22:20:12
fj197099 @fj197099

そのような装備品の国際共同開発は基本的には米国や欧州諸国等の先進国との間で行われることになるだろう。そのため、価値を共有するこれらの国家との協力は必ずしもオリジナルな武器輸出三原則の精神にそぐわないとは言い難い。むしろそれは世界レベルでの民主主義国の防衛協力に繋がる話である。

2010-10-12 22:23:22
fj197099 @fj197099

こうした観点から先に公表された安防懇報告書は、武器輸出三原則等の緩和を提言したのである。決して無制限な武器の全面輸出を言っている訳ではないのだ。この点は誤解があるならば報告書原文を是非しっかりと読んで頂きたいものである。http://tinyurl.com/2f67oro

2010-10-12 22:25:36
fj197099 @fj197099

特に報告書のpp.16-17, 33-34。さらにここで述べたことは先にも指摘したが、きちんと首相官邸のホームページで公開されている。武器輸出三原則等の緩和を批判する人の何人がこれに眼を通しているだろうか(pp.19-20)。http://tinyurl.com/264edzg

2010-10-12 22:31:36
fj197099 @fj197099

日本では大学レベルでも安全保障教育はまだまだ限定的だ。故に根拠なき防衛政策(又はその変更)に対する批判が蔓延するのもやむを得ない所はある。しかしそろそろそうした悪癖から卒業しなければなるまい。市民が正しい軍事・安保の知識を身につける事は、文民統制の強化にも繋がる事なのだから。

2010-10-12 22:38:02
園田義明 Y-SONODA @YS_KARASU

@fj197099 この記事以後進展なし。そのため北沢が焦っていると予測。 20100725共同:政府は米国と共同開発しているSM3ブロック2Aについて、第三国への供与を認める方向で調整に入った。米側の要請を踏まえた対応で、供与先として欧州などが想定。複数の日米外交筋が明らかに。

2010-10-12 22:50:26
fj197099 @fj197099

@YS_KARASU この話は平成17年度の内閣官房長官談話で「弾道ミサイル防衛システムに関する案件については…武器輸出三原則等によらない」とされており、厳密には武器輸出三原則等の問題ではないですが、第三国移転という観点から類似の問題ではありますね(安防懇報告書p.34注14)。

2010-10-12 23:17:46
Azubu-10ban Gama @azabu10ban_gama

正直、情けないと思う。 - 「武器輸出三原則、見直しに慎重=菅首相」、http://bit.ly/98NWZl

2010-10-13 11:21:41
fj197099 @fj197099

@uehara_hiroshi この件はいろいろ誤解されていて、緩和を要請されているのは武器輸出三原則「等」であり、武器輸出三原則そのものではないのですが、首相の本発言はそうした含みを持たせるものかもしれません。詳しくは小生のツィートをご覧ください。

2010-10-13 12:03:58