政治学たんの特定秘密保護法案についての見解

法学たんの特定秘密保護法案についての連続ツイートを受けて、政治学たんが特定秘密保護法案についての見解を述べた連続ツイートをまとめたものです。
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政治学たん @seizigakutan

法学たんによる特定秘密保護法案のまとめを読んでみましたが、さすがよくまとまっていますね。面白いと思います。ただ、コメント欄を見て確かに政治的観点が不足しているようにも思ったので私の出番だとも思いました。

2013-11-30 18:15:37
政治学たん @seizigakutan

そこで、マイナス面は既に法学たんが説明してくれているので、そもそもの情報と政治の関連性、特定秘密保護法案の必要性の部分や法案を巡る諸騒動、各政治勢力の思惑などについて説明しようと思います。

2013-11-30 18:15:51
政治学たん @seizigakutan

私が一番関心あるのは情報と政治ですが、この法案はまさに情報と政治に強く関わってくるものです。日本国は戦前から情報の扱いが絶望的に下手であると言われてきており、やっとこのような側面を考えるようになったのかと思うと感慨深くあります。

2013-11-30 18:16:05
政治学たん @seizigakutan

戦時中に情報参謀を務めて戦後も自衛隊内で情報畑を歩き、その能力の高さから米軍の侵攻パターンを正確に予測した堀栄三の『大本営参謀の情報戦記』を読んでみると、日米の国力差や指揮官の戦略能力もさることながら、情報戦で圧倒的に敗北していたことが身に染みてわかります。

2013-11-30 18:16:27
政治学たん @seizigakutan

堀の指摘した情報戦は情報分析の件ですが、もう一つ宣伝戦が存在します。中国国民党は蒋介石の妻宋美齢を軸に米国での反日宣伝活動を行い、米国世論の誘導に成功しアメリカの外交方針に大きな影響を与えています。ここでも日本の情報戦の弱さを感じさせてしまいます。

2013-11-30 18:16:54
政治学たん @seizigakutan

戸部良一・野中郁次郎他『失敗の本質』によれば日本的組織の問題点は戦前の軍部に既に見られるもので、堀は情報軽視の風潮もまた戦後の日本の官公庁や企業にも引き継がれていると指摘しています。

2013-11-30 18:18:02
政治学たん @seizigakutan

更に、戦後の風潮で戦争そのものへの嫌悪感もあって情報をどう扱うかといった視点を得る機会が更に減っているのも原因だと思います。気持ちはわからないでもありませんが、カール・シュミットは非武装が平和に繋がると考えることを戒めています。

2013-11-30 18:18:16
政治学たん @seizigakutan

当たり前の話で、戦争をする要因は「侵略する利益>侵略のコストとなる場合」「非合理的な理由(道徳的・法律的正義感やナショナリズム、組織の面子など)」です。人間が人間である限り、「「戦争を追放すること」はそもそも不可能(シュミット)」でしょう。

2013-11-30 18:18:29
政治学たん @seizigakutan

以上の前提を考えた際に、インテリジェンス部門の法的基盤の脆弱性は国民の安全保障にとって如何に致命的であるかは導けます。現在進行形で反日宣伝を行われたりする中で北朝鮮などの軍事動向を同盟国と共有できるか、問題は山積している状況であると言えます。

2013-11-30 18:18:44
政治学たん @seizigakutan

先日、「国家安全保障会議」と呼ばれるNSC法案が成立しました。狙いは外交・安全保障政策の迅速な意思決定や情報の一元化や同盟国との情報のやりとりです。同盟国と情報をやり取りするには前提として「情報が簡単に漏洩しないこと」が不可欠です。これが特定秘密保護法案の背景です。

2013-11-30 18:19:05
政治学たん @seizigakutan

スパイによる国益の損失の例で一番顕著なのは戦中のゾルゲ事件です。ナチス党員として日本に接近したゾルゲは朝日新聞に属する尾崎秀実らと共に諜報活動を行い、日本の外交方針を左右しました。結果ソ連が生き延び、ソ連参戦のきっかけにもなっています。

2013-11-30 18:19:24
政治学たん @seizigakutan

他に情報を公開しにくかった状況として日清戦争直後の三国干渉が挙げられます。ロシアが独仏の東洋艦隊をウラジオストクに入港させ日本攻撃の準備が整っていることを察知した伊藤博文は干渉を受け入れることを考えますが、国内では弱腰外との批判を受けました。

2013-11-30 18:19:54
政治学たん @seizigakutan

だからといってこの情報を公開すればその行動要因は国民が知ることになるものの、完全に屈することが判明して外交上不利になります。結局、明治天皇が「ロシア皇帝が極東の平和を危惧したのことと言うのだから」と説得する形で妥協が成立したのでした。

2013-11-30 18:20:27
政治学たん @seizigakutan

以上の例から、情報を国民から隠すことが国益となる場合も現実として存在することがあることがわかっていただけたでしょうか? ウィルソンとレーニンは秘密外交を批判しますが、これをケナンは道徳家的・法律家的アプローチの一環であり結果的に平和を乱すと痛烈に批判しています。

2013-11-30 18:20:46
政治学たん @seizigakutan

そもそも道徳家・法律家的アプローチの根幹にはある正義・法則に基づく普遍的なアプローチをすべしという合理主義があります。しかし、現実は常に変動しますし社会はかなり複雑ですから簡単にはうまくいかない、と既にオークショットやポパーなどが批判しています。

2013-11-30 18:21:01
政治学たん @seizigakutan

と考えれば、「国民に対して情報を隠すのはとんでもない」という主張が如何にナイーブなものかわかると思います。ウィルソンとレーニンの後の米ソがヤルタ密談という秘密外交を展開したことが、現実を良く表していると言えるでしょうね。

2013-11-30 18:21:11
政治学たん @seizigakutan

さて、特定秘密保護法案の文章を読むと特定秘密は行政機関の長が安全保障上重要と判断したもの全てになるようです。しかし素朴な疑問として外交・防衛は当然でもそれ以外が何故該当する可能性が出るのかというものが出ると思います。

2013-11-30 18:21:27
政治学たん @seizigakutan

これはローズノウのリンケージ論で説明が可能です。国際政治が複雑化し、国内問題も国際状況と影響し合う状況が現代になって生じています。日米経済摩擦の際にCIAが霞が関に対して盗聴を仕掛けたことが象徴的と言えるでしょう。経済問題ですら、情報戦の対象です。

2013-11-30 18:33:37
政治学たん @seizigakutan

背景としては福祉などの出現による行政国家化があります。国家は信用できないという古典的なテーゼだけだと、国民の幸福は増大しませんし、根本的には国家も民衆も官僚も政治家も外国も全て信用は出来ませんからどこかで妥協する必要があるのです。

2013-11-30 18:22:05
政治学たん @seizigakutan

以上から秘密対象が最大限最少にすべしと言っても案外困難であることがわかったと思います。次に、法案それ自体ではなく法案を巡る様々な政治勢力とその騒動について解説したいと思います。

2013-11-30 18:22:22
政治学たん @seizigakutan

衆議院に於いて法案の賛成側は自公みんな、修正に参加したものの棄権したのが維新、民主共産社民生活などが反対、メディアも読売産経は賛成で朝日毎日が反対です。面白いことに尖閣漁船事件でデータをYouTubeに公開した事件が生じたときに反対した政党・新聞は当時これに猛反発していました。

2013-11-30 18:22:38
政治学たん @seizigakutan

更に、東日本大震災の際民主党は緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報を公開しませんでした。なるほど確かに、自らが情報を隠してきた実績(?)があるだけに恣意的な情報隠ぺいがありうるとの主張は説得力があるかもしれません。

2013-11-30 18:23:00
政治学たん @seizigakutan

さて、自民党やみんなの党はこの時無難(?)にも政府の情報管理の不味さや早く公開していれば問題はなかったという論点に絞って批判しています。その意味ではこの当時の対応状況の整合性は保たれていると言えます。まあ、法案の背景の一つにもなっていますからね。

2013-11-30 18:23:16
政治学たん @seizigakutan

続きまして、法案反対側が激しくデモを繰り広げたり民主主義的でないという批判をしていますが、これについても触れてみます。結論から言えば日本における民主主義の基本は議会制民主主義であって法案修正過程にありますから、法案が結構修正されている今国会は民主主義的です。

2013-11-30 18:23:33
政治学たん @seizigakutan

特に第三者機関設置を政権側が明言したことは個人的に評価したいところです。これまでプラス面ばかり説明しておいてアレですが、秘密の指定が恣意的になること自体は否定しきれませんでした(尖閣や原発の件を思い出してください)。

2013-11-30 18:23:47