【その3】発酵万歳!y_tambeさんによる発酵食品のひみつ「味噌・納豆・臭いやつ」編

その3まで来ました! 昨日の続き、チーズの話から今回は日本の代表格、味噌と醤油について。 あと、「臭いから旨い」という話。 関連まとめ 続きを読む
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Y Tambe @y_tambe

(チーズの話の途中だった)

2013-12-09 20:30:34
Y Tambe @y_tambe

ウォッシュチーズのリネンス菌など、脂肪酸系の悪臭としては、吉草酸や、酪酸、カプリン酸など…実はヒトの体臭と共通する成分が多い。しばしば「足の裏の臭い」に喩えられるのだが、高級なチーズの臭いは「神のおみ足の臭い」と言われる。

2013-12-09 20:33:00
Y Tambe @y_tambe

チーズはタンパク質豊富な乳製品に対して、(A)白カビや青カビでは、カビ(ペニシリウム属)を作用させたり、(B)ウォッシュチーズでは細菌の仲間(リネンス菌)を作用させたりして、熟成させた。これが別のタンパク質豊富な食材だとどうなるか…その例が大豆。(A)が味噌や醤油、(B)が納豆。

2013-12-09 20:37:59

チーズの話から納豆と醤油へ。

Y Tambe @y_tambe

味噌や醤油では、大豆を主原料として、まずコウジカビ(麹)によって発酵を行う。さらにその後で乳酸菌や酵母による発酵を経て完成する。

2013-12-09 20:40:10
Y Tambe @y_tambe

納豆の場合は、「納豆菌」によって発酵させる。今の分類では、納豆菌は「枯草菌(こそうきん)」の一変種で、学名はBacillus subtilis var. natto 。ただし日本の研究者はB. nattoという学名を提唱してた関係で、国内ではそっちが有名(今のところ認められてない

2013-12-09 20:43:03
Y Tambe @y_tambe

納豆も「独特の臭い」が特徴だけど、あの臭いの一端を担ってるのは、やっぱり「脂肪酸」だったりする。ただし納豆の場合は、それ以外に、ピラジン類やアンモニアなんかも関係してる。アンモニアについては、藁づと納豆では抑えられるとか言う話もあったと思う。

2013-12-09 20:46:38
Y Tambe @y_tambe

それと、もう一つの「ピラジン類」なんだけど…これは単に悪臭というよりは、むしろ香ばしい、いい匂いの部分として働いたりする。ここらへんの話になると、ちょっと発酵の直接的な部分から逸れる部分もあるのだけど、味噌や醤油などでも結構重要な香り成分なんで…

2013-12-09 20:50:37
Y Tambe @y_tambe

ピラジン類 http://t.co/pR94Zkjvhr は、特に食品を加熱したときの香ばしい香りとして重要。糖類とタンパク質を一緒にして(またはその両方を含むもの…つまりほとんどの食材がそう)を加熱すると「焦げ」が生じる…茶色い焦げの「色素」と焦げた香りが生まれる(続

2013-12-09 20:54:12
Y Tambe @y_tambe

承前)このときは、非常にいろんな反応が複雑に絡み合って進行するのだけど、この一連の反応を「メイラード反応」あるいは「褐変反応」という。そうしてできた色素を「メラノイジン」と呼ぶ。この辺りは食品化学だと大抵出てくるあたりの話。

2013-12-09 20:55:54

お、メイラード反応とは?

Y Tambe @y_tambe

承前)このメイラード反応では、いろんな香り成分が生じる…初期の段階では、ちょっと癖のあるアルデヒド類とか、ずっと後期になるとピリジン類とか…だけど、その中でも「焦げた香り/香ばしい香り」の中心になるのがピラジン類…(あと、ピロール類とか、本当にいろいろ)

2013-12-09 20:57:45
Y Tambe @y_tambe

先日少し話したカカオの褐色化とかも、実はこのメイラード反応がメイン。で、実はメイラード反応自体は、酵素がなくても進む「非酵素的な反応」だったりするのね。加熱すりゃ一気に進むし、室温でも長時間かかるけど進む。

2013-12-09 21:00:16
Y Tambe @y_tambe

ちなみに、植物から腐葉土が出来るときにもメイラード反応が進む。腐葉土の茶色/黒い色は「腐植酸」と呼ばれるけど、メイラード反応で出来るメラノイジンと同じもの。また腐葉土の「土の臭い」は、ピラジン類の臭いでもある。

2013-12-09 21:01:42
Y Tambe @y_tambe

じゃあ、こうしたメイラード反応に「発酵」は無関係か、というと、そうでもない。メイラード反応が進むときには、大きな分子の糖とタンパク質よりも、それぞれ小さくなっていった方が進みやすい。特に糖の方は「還元糖」と呼ばれる状態であることが大事で、デンプンは還元性が低いが分解されると上がる

2013-12-09 21:04:34
Y Tambe @y_tambe

で、味噌や醤油の場合。コウジカビが生えることによってタンパク質や糖類の分解が起きることで、小さなタンパク質(ペプチド)や、さらに小さなアミノ酸や、小さな糖分子が増える。このアミノ酸などが「旨味の元」になる。また、メイラード反応が進みやすくなる(続

2013-12-09 21:07:18
黒猫亭 @chronekotei

@Butayama3 砂糖を焦がしてしまったときにぃいいいい〜〜〜いいい〜〜〜いいいぃ〜〜〜(ry

2013-12-09 21:07:36
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 非常に良い質問。カラメルは「糖だけを加熱した場合」にできます。これに対してメイラード反応は「糖+アミノ酸」。魚や肉、野菜の「焦げ目」もすべてメラノイジン。

2013-12-09 21:08:50
Y Tambe @y_tambe

メイラード反応で出来る物質(メラノイジン)は、非常に多種多様なので、正直その全容は掴めてないと言っていい。高分子から低分子まであるし、香りに関するもの、色に関するものもある。中にはアクリルアミドつって発がん性が問題視されてるものも微量生じたり…本当にいろいろ。

2013-12-09 21:10:57
Y Tambe @y_tambe

ただ、こうしたメイラード反応で出来るものには、旨味を感じさせるものもあり、それがまた非常に複雑なことから、いわゆる「こく」「こく味」を生むのにも重要だと言われてる。味噌や醤油は、大豆のタンパク質を分解して生じた複雑な旨味が、さらにメイラード反応で複雑化した「こくのある旨味」に。

2013-12-09 21:12:49
Y Tambe @y_tambe

そうそう、ここらへんの反応を上手く薦めるためには「塩分」は大事。一般に塩濃度が高くなると、微生物は繁殖しにくくなり、特定の微生物だけが繁殖しやすくなる。酒なんかの場合に、「酸性のpH」や「アルコール」でその辺りをコントロールしてたように、食品によっては塩濃度でコントロールする。

2013-12-09 21:15:17