ハウス・オブ・サファリング #3
(あらすじ:ハイスクールを卒業したばかりの二人、ユミトとコモモ。学校においてはスポーツ、勉強、容姿、生徒会長、全てを備えカチグミの極みにあったユミトであったが、己の属する校内階級に馴染めぬままだった。彼は横笛部のコモモに心惹かれ、遂に想いを告白。卒業パーティーを期に交際を始める)
2014-01-21 22:13:39(一方、告白を快諾したコモモも、一筋縄ではいかない。彼女はウシミツ・アワーにユミトを呼び出し、車に乗せて、ボウリング場の廃墟へ誘う。そこは、ナムサン……アシッドじみた非合法空間であったのだ。ユミトは畏れながらもこの「秘密基地」でコモモとの仲を激しく進展させる。間違いが起こる!)
2014-01-21 22:23:21(そう、間違いだ。二人が激しく口づけをかわしているまさにその時、ユミトは恐るべき幻覚に呑まれる。煙と影の中から現れた黒いニンジャが、その場の客を殺戮し始めたのだ。何たる悪夢か!醒めることはないのか?コモモを伴い外へ逃れようとしたユミトにニンジャが襲いかかる。ナムサン!現実!)
2014-01-21 22:26:13(だがしかし、夢うつつの中、具現化したニンジャは一人ではなかった。赤黒の装束を着たニンジャが直後に出現。ユミトに襲いかかった黒いニンジャの刃を防ぐと、カラテ応酬、そしてアイサツをかわしたのである。黒いニンジャはサンタラムと名乗った。そして赤黒のニンジャは……ニンジャスレイヤー)
2014-01-21 22:27:49ニンジャスレイヤーとサンタラムは一定の間合いを保ち、じりじりと横へ歩を進めた。ニンジャスレイヤーはカラテを漲らせる。サンタラムは二刀の刃を用いる油断ならぬニンジャ。ソウカイ・シンジケートの残党で、アマクダリに所属することなく、ネオサイタマの闇に紛れて狼藉を重ねてきたと見える。1
2014-01-21 22:36:56この場所にはかつてソウカイヤのアジトがあった。アジトが消滅し、その後ボウリング場も廃墟となった。ドッグイヤーめいた苛烈なネオサイタマ経済の新陳代謝。まさにショッギョ・ムッジョである。「ひとつ言っておくが」とニンジャスレイヤー。「オヌシの望むものはここにはない。サンタラム=サン」2
2014-01-21 22:41:48「何ィ?」サンタラムは不敵に刃を構えるが、その声音は微かな訝しみを帯びた。「どこまで嗅ぎまわったのか知らんが、所詮ここで死ぬ貴様には……」「ソウカイヤの埋蔵金など、夢物語に過ぎんと言っているのだ」ニンジャスレイヤーはピシャリと言った。「所詮ここで死ぬ貴様には無用の指摘だがな」3
2014-01-21 22:46:28「ダ……ダマラッシェー!」サンタラムが激昂し、電撃的速度で刃を投擲した!ハヤイ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは電撃的速度で応えた。ブリッジ回避だ!反らした身体の上を血塗れの刃が回転しながらかすめ、カウンター上の香炉を真っ二つに切断、奥の柱に深々と突き刺さった。 4
2014-01-21 22:51:54その瞬間には既にニンジャスレイヤーのプロペラじみた逆さ回転蹴りがサンタラムに襲いかかっていた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」サンタラムは驚くべきニンジャ反応速度によって攻撃を察知。バックフリップで回避すると、背後の柱を蹴り、斜めに飛びながらもう一方の刃を投擲した。「イヤーッ!」5
2014-01-21 22:53:31「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは体勢復帰しながら己の得物を閃かせた。それはヌンチャク!ガキィン!弾かれた刃は斜めに飛び、横の壁に深々と突き刺さった。「イイイイヤアアアーッ!」ニンジャスレイヤーは振りぬいた得物を嵐のごとく振り回した。目の覚めるようなヌンチャク・ワークだ!6
2014-01-21 22:57:23「イヤーッ!」サンタラムは腰に帯びた第三の武器、黒塗りのニンジャソードを抜き放つと、ニンジャスレイヤーのヌンチャクワークに空中から襲いかかった。「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」凄まじき打ち合い!残像! 7
2014-01-21 22:59:12八本、十六本、三十二本……それぞれの腕はブッダウォリアーじみてどんどん増えていった。黒い風と赤黒の風が激しくぶつかり合うたび、衝撃音は黒い蓮の花びらと化して周囲に舞った。ニンジャスレイヤーは眉根を寄せる。空気中の薬物濃度が増している。ナムサン……切断されて落下した香炉だ。 8
2014-01-21 23:04:12「見えるか。どこまで見えるかニンジャスレイヤー=サン」彼の懸念を察知したか、サンタラムの言葉は謎の余裕を含み始めていた。「感じているか?わかるか……この芳しき風。懐かしき刺激よ。ブッダはこの俺にフーリンカザンを与えたと見える」「イヤーッ!」ヌンチャク!「イヤーッ!」ソード!9
2014-01-21 23:08:23「イヤーッ!」ヌンチャク!「イヤーッ!イヤーッ!」ソード!さらにソード!切り返す刃が、大振りの斬撃で背を向けたサンタラムの背中から突如生え、ニンジャスレイヤーの胸元をかすめた!「グワーッ!?」「カハハハハ……この俺に一日の長あり」サンタラムはメンポの奥で恍惚にその目を歪めた。10
2014-01-21 23:10:18「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回し蹴りを繰り出す!だがサンタラムの身体は蹴りを受けると爆散し、その爆散煙の陰から横薙ぎの斬撃を放ってきた!「イヤーッ!」「グワーッ!」脇腹を刃がかすめる!ニンジャスレイヤーはバックステップで間合いを取り、ヌンチャク防御姿勢を取った。11
2014-01-21 23:16:34「あいにくこの俺は伊達に長年アンダーグラウンドを逃げ潜んでおらん」サンタラムの声が反響した。「運、フーリンカザン、そしてカラテ……はぐれ者にははぐれ者の矜持がある。宝が無くば、貴様の首を刎ね、手土産としよう。デッドオアアライブだ、ニンジャスレイヤー=サン」「ヌウーッ」12
2014-01-21 23:20:23(((フジキド……油断の極み)))ますます悪化する色彩と残響音の中、集中を取り戻そうとするニンジャスレイヤーのニューロンの奥底から、嗄れた嘲り声が染み出した。ナラク・ニンジャ。(((侮りが苦境を呼んだのだ。儂は殊勝に黙ってオヌシの好きにさせた。その結果がこれぞ。愉快))) 13
2014-01-21 23:26:00「黙れナラク」(((平安時代。荘園領主の扶持にありつけぬニンジャの中にも油断ならぬツカイテは存在した。これをローニンという。所詮サンシタの序列争いに過ぎぬが、例えば慢心したコバシキ・ニンジャはハイク遊びの帰りにローニンのカラテ襲撃に破れ、首を狩られたのだ。この教訓は……)))14
2014-01-21 23:31:36霧の中から黒い刃が飛び出す!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクで辛くもこれをガード!別方向から再び刃が飛び出す!「イヤーッ!」(((教訓は即ち、儂のごときタツジン中のタツジンの境地なればこそ敵を予め断ずる事かなうのであって、オヌシごとき弱体者がさよう真似を……)))15
2014-01-21 23:36:37「イヤーッ!」再び刃をガード!ニンジャスレイヤーは歯を食いしばり、ニューロンを毒すナラクに耐えた。この薬物は厄介だ。平常時には起こりえぬ事態をすら引き起こしかねない。ナラクの余裕は実際その最悪の事態を予期し、待ち構えての態度であった。(((身体をよこせ……もうすぐだ!))) 16
2014-01-21 23:43:24「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」サンタラムの刃がニンジャスレイヤーの胸を裂いた。ナムサン!いつサンタラムは黒いニンジャソードを二刀流に構えたのか?更なる隠し剣!ニンジャスレイヤーは胸筋に力を込め、出血を押さえる。これではジリー・プアー(徐々に不利)だ!17
2014-01-21 23:47:56「ハァーッ……ハァーッ……」ニンジャスレイヤーの息が荒い。内外に敵。ナラク・ニンジャとの融合を進める事は、即ちこうした危険の顕在を同時に意味する。チャドー、フーリンカザン、そしてチャドー。呼吸を整え、精神を律すべし。だが、この空気中の毒!ただそれだけの事が今は至難! 18
2014-01-21 23:54:39そして対するサンタラムもまた、余裕綽々からは程遠い。不敵なアトモスフィアを身にまといながら、その眼には確かに希望と恐怖、必死、困惑、後悔の色が滲む。彼とてかつてソウカイヤに在籍し、その崩壊を生き抜いたニンジャ。目の前の敵が一体いかなる存在であるか、わからいでか!19
2014-01-22 00:00:09周囲には死体が散乱し、凄惨な血の臭いが薬物と混じりあって、ジゴクめいていた。快楽に身を任せた無駄な殺戮の結果であり、それによって赤黒のニンジャ殺戮者を現場に到達させる時間を作ることともなった。いわばインガオホーの可視化だ。彼は薬物耐性と二刀のカラテだけで切り抜けねばならない。20
2014-01-22 00:07:40