ハーシュノイズの概念とギターの使用
- mackerel_can
- 28365
- 15
- 13
- 78
@pukka_white14 ギターノイズを「それは音楽だ」と言う人を、どう思いますか?僕が「非常階段は、ハーシュですよね?」と言ったら「そりゃインキャパのメンバーがいるんだから」と返されましたが当然、納得できません。自分も、ロックの副産物として、ギターノイズをやっています。
2014-01-30 12:30:52@Nacchebitch まず、自分はどれがハーシュ・ノイズでどれがそうでないかを断定できるほどの知識、見識、そして立場にないことをあらかじめ言い訳しておきます。もっとも、そういった唯一の見解を出せる人がいるのかは疑問ですが。
2014-02-02 12:00:30まず、ノイズ(ミュージック)が勃興しだした70年代末から80年代初頭は、日本においてノイズを出すのにエレキ・ギターをファズ等でフルテンで演奏するというのが多かったように思えます。これはシンセ等の機材が高価で、インディペンデントなミュージシャンには手が出にくかったからだと思います。
2014-02-02 12:01:06この頃、比較的安価なプリセット式の日本製シンセでも20万円。今なら50万円ぐらいの感覚でしょうか。高価な割に音作りの自由があまり効かないものでした。ただし、白石民夫氏はこれで轟音のノイズを出しており、当時吉祥寺マイナーで見てたまげた記憶があります。
2014-02-02 12:01:26ギターならファズを含めても数万で入手できます。これは今もあまり変わらない感覚じゃないでしょうか。そして当時、フュージョン、AORの流行で、ファズより音がコントロールしやすいオーバードライブなどの歪み系ペダルが増え、ファズは時代遅れとして叩き売られたところもあります。
2014-02-02 12:01:51日本のノイズ・オリジネーターのひとつ「NORD」は当初はギター2本に短波ラジオで演奏していたといいます。そして後に手製の電子発振機を導入しました。そして、メンバーの片山智さんは裸のラリーズの大ファンでした。
2014-02-02 12:02:12ノールのほかにも幾つか名前も覚えていないノイズ的な演奏を当時見ましたが、今思い出すとそういった音楽はシンセや発振機などの電子音楽的音響を出すことよりも、大音量を出すことに重点が置かれていたように思います。その根源はラリーズと灰野さんだと思います。
2014-02-02 12:02:28灰野さんはノイズと一緒にされ論じられることに不快感を示しています。しかしながら、79年の法政学館での不失者を始め、当時の彼はエフェクターはほぼファズ1個で、それをフルテンで出していました。ご本人にはそういう意識はなくても聞く方は聴覚を痛める大音量に「ノイズ」の啓示を受けたのです。
2014-02-02 12:03:1385年リリースの岸野一之さんのNULL名義の「最終物質」はギター・ノイズの極北でしょう。LP両面にわたってギター1本で制作されたとは思えないハードなノイズは、大きな衝撃でした。そして彼は演奏に「ノイジング」、演奏者に「ノイジシャン」というネーミングを施しました。
2014-02-02 12:03:33実はジャンルとしての「ノイズ」はこの岸野さんのネーミングから始まった部分もあると思います。それまで「オルタネイティヴ」「インダストリアル」という言葉で、「既成の音楽とは違う」という意識で結びついていたものが、明確な方向が示されたのだと思います。
2014-02-02 12:04:04「従来と違う音楽を作る。」というアンチ意識ではなく、「大音量で明確な音階やリズムなどの音楽的要素を持たない音響を制作する。」というイデア。それが「ノイズ」という言葉で明確化され、聞き手だけでなく、逆にクリエーターの意識を規定していったのではないか、と思います。
2014-02-02 12:04:22「どんな音楽をやっているんですか?」と聞かれ、「大音量でめちゃくちゃな音楽」といわれても、聞き手は中身をイメージしにくいんじゃないでしょうか。しかし、「ノイズ」という用語が共有されれば、「ああ、ノイズをやっているんですね?」とイメージをある程度は共有してもらえるでしょう。
2014-02-02 12:04:38逆に作り手の方は、用語としての「ノイズ」の規定以後、「既成とは違う新しい音楽をやりたい。」から「俺はメルツバウを超える最高なノイズを作るんだ!」などの、ノイズの存在を前提とした意識を持った人が出てくるようになります。
2014-02-02 12:04:54さて、ギターをノイズ発生器として眺めると、「でかいボディが重い、邪魔」「音階を弾かないのでフレットは不要」「激しいアクションをすると、弦が切れたり、シールドが抜ける」など、実は結構不自由な点があります。これに対してフレットレス化等、様々な改造が試みられました。
2014-02-02 12:05:20灰野敬二に触発されてギターによるパフォーマンスを始めた古舘徹夫は、激しいアクションにギターが耐えられるよう、ジャックや回路を取り払い、ピックアップに直接長いシールドを接続しました。
2014-02-02 12:05:39エレキギター改造の究極はメルバウが開発した「ギネア」でしょう。これは4,50cmの小ぶりな金属フレームにドラムのスネアを張り、それにピックアップをあてがったものです。これにストラップを付け、ギターよろしく肩からかけるわけです。弦もネックも回路もないエレキギター。
2014-02-02 12:06:30「ギネア」はフレットがないので音階のない音が容易に出せます。つまり、ノイズを発生させるのにピックアップと金属製のモノがあれば十分で、ギターという楽器でなくてもいいんだ、という視点を広めた功績は大きいでしょう。そして、軽くてコンパクト。また、自作すればコストも余りかかりません。
2014-02-02 12:06:53実はマイクをエフェクターに繋いでも、ノイズを出すことはできます。しかしながら、マイクはハウリングの狭い帯域の音しか出なくて、意外に音のヴァリエーションに欠けます。ピックアップと金属なら擦れる音など多様な音が出ます。何より、声を出すマイクは体力を消耗します。
2014-02-02 12:07:16それまで、SPKの1st、NULLなどの大音量を志向するノイズは日本では「ハード・ノイズ」と呼ばれていました。しかしながら、80年代後半ぐらいから「こういった音は“ディフィカルト・ノイズ”とか“ハーシュ・ノイズ”と呼ばれる。」という情報が広まりました。
2014-02-02 12:07:37「ハード・ノイズ」から「ハーシュ・ノイズ」と呼称が変わった時期は、80年代後半にギターという重い楽器を使わないでノイズを放出するスキルが認知され、広まった時期と重なっていた記憶があります。ここは大きなパラダイムの変換があったと思います。
2014-02-02 12:07:54こういう歴史的経緯をふまえると、「ハーシュ・ノイズ」という用語は大音量のノイズを出すというスタイルのほかに、インキャパシタンツやペインジャークのようにテーブルで楽器でない機材を使ってノイズを出すという、ディテールへのこだわりを含んだ言葉なんだと思います。
2014-02-02 12:08:22@Nacchebitch 結論です。望月さんはギターでノイズを出してるのであれば、それは音楽用語としての「ハーシュ・ノイズ」ではないと思います。でも、いいじゃないですか、他人のいうことなんか。「言葉なんて知るか!俺は最高のノイズを出しているんだ」ということでGo Ahead!
2014-02-02 12:10:42「ハードバップ」とは具体的な音楽的形式を規定したものというより、精神的な姿勢を表明した言葉らしい(とジャズ雑誌のハードバップ特集に書いてあった)。とするなら、「ハード・ノイズ」という言葉もノイズの対する姿勢を表す言葉ということで再定義できるんじゃないか。んな妄想をしてます。
2014-02-02 12:15:26