朝日新聞・関根記者によるロシア性的少数者のいま

関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

朝刊にも掲載されています→五輪の街ソチの性的少数者はいま　深夜のクラブ３００人 - 朝日新聞デジタル (http://t.co/7gdjJDxYfY) http://t.co/MEfzlSRcM2

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本日朝刊とデジタル版にロシアの性的少数者に関する記事が出ています→http://t.co/j83Iz31Nmd 「ここにはゲイはいない」と市長が発言したソチの場面から入り、モスクワの同性愛者の話やロシア全体の同性愛者に対する根強い差別、偏見について書きました。（続く）

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ソチではゲイクラブを取り上げました。ゲイの方が女装をしてショーを見せるというお店です。昨年ロシアで成立した同性愛者への差別を助長しかねない法律が成立し、ソチ五輪ボイコット運動が世界各地で起きたことから、記事の構成上、場面としてはソチを使いたかったという思いがあります。（続く）

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ただ、ソチではショーなどに出演しているわけではない、ゲイの方を取材することはできず、やむなくクラブの話を書くことに。ある方から「ショーに出る人はゲイでも少数なので、特に写真を掲載するのは読者に誤解を与えるのでは」というご指摘を頂きました。これは確かに私も迷いました。（続く）

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ただ、ショーに出る方の話や写真を掲載しないというのも、何か彼らを色眼鏡で見るような、後ろめたさがあったので、掲載の判断をしました。以上が前置きです。さて、このゲイクラブの方々がいったいロシアで昨年成立した法律についてどう思っているのか聞きました。（続く）

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その前に、昨年成立した法律について内容を紹介したいともいます。法律は「未成年者に非伝統的性的指向を宣伝する行為を禁止する法律」。もう少し説明を補足しますと、公の場で未成年者に対し、ゲイやレズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどを宣伝することを禁止するというもの（続く）

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プーチン大統領が「この法律は性的少数者を差別するものではない」と弁解するのは、額面通りに解釈すればそうなのです。しかし、実態はそう単純ではありません。それは追って説明します。さて、ソチのゲイクラブの話に戻りますと、レズビアンのマネージャーはこの法律についてこう答えました（続く）

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「私は実は法律に賛成です。もし自分に子どもがいたら、子どもにゲイやレズビアンについて宣伝することはまだ早いのではないかと思うから」「法律が成立して以降、店に対する当局の取り締まりがあったり、一般の方も含めての嫌がらせがあったりということはない」。前半は私も少し意外でした。（続く）

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後半は、この法律の趣旨（未成年者に対するという部分です）を考えると、少なくとも当局からの圧力は公式的にはあったらおかしいわけで、納得しました。この店は成人のための店なので。取材した日、舞台に出演した１人は少し違う意見でした。（続く）

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「法律の宣伝という行為が、何を指しているのかわからない」。いかようにでも拡大解釈される余地があるのではないか、との懸念を持っていました。皆さん「ソチはリゾート地でもあり、みんなが店に来て楽しんでくれる。同性愛者には優しい町です」と言います。それはそれで本音だと思いますが、（続く）

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だからといってもちろん、ロシアで性的少数者に対する偏見や差別がたいしたことではない、ということにはならない、というのが取材だけでなく、こちらに暮らすものとしての実感です。例えば私が数年前に通っていた理髪店の理容師はゲイだったのですが、ある日顔が大きく晴れ上がっていました。（続く）

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話を聞くと、前夜、バーに行くと、ゲイだということがばれて、そこに居合わせた見知らぬ人たちから殴られ、追い出されたのだと言いました。モスクワで何人か同性愛者を取材しましたが、暴力を受けた、職場を解雇された、という偏見に基づいた差別を受けたという証言が多数得られました。（続く）

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差別に反対する活動に身を投じている人でさえ、何人かは「正直、この国で反対の声を公に上げていくのは怖い」、ある人は「でもやるしか方法がないと思う。今日やらないと明日はないという気持ちです」と言いました。私の知る限り、回りのロシア人も「男は男らしくあれ、女は女らしくあれ」（続く）

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という考えを持っている人が多い気がします。国家全体として、マッチョな思想というか、何というか。これは余談ですが、ロシア人の男性は優しいです。ですが、これはあくまで「男として弱きものを助けてやる」というなんとなく、上から目線の印象を受けます。話はそれましたが、戻りますと、（続く）

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そもそも「同性愛宣伝禁止法」（名前を簡略化して恐縮です）が成立する以前からロシアでは性的少数者への差別と偏見は社会全体としてあり、この法律は確かに額面通りには性的少数者を差別することを規定指定はいないのですが、以上のような社会的土台と宣伝内容についての規定があいまい（続く）

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ということを考えると、この法律によって、さらなる差別、偏見を助長しかねないという懸念を私は持っています。最初に紹介した記事は問題のほんの一面しか取り上げられていません。力不足を恥じるばかりです。ですが、ロシアの性的少数者を取り巻く現状に少しでも関心を持つきっかけになれば幸いです。