#完全ノープラン艦これ与太話 【レッド・インセイン・オンスロート】 #6

そういえば今回羽黒ちゃん出てない。 #1~#2: http://togetter.com/li/626631 #3~#4: http://togetter.com/li/627649 #5: http://togetter.com/li/628898
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春魔解丼 @vespiking

◆◆◆◆◆艦無策な◆◆◆◆◆

2014-02-14 07:56:22
春魔解丼 @vespiking

少し寒さを帯び始めた灰色の空から、小さな雨粒が落ちてきては、赤く照らされて水面へ落ちていく。赤く輝く瞳。赤く立ち昇る瘴気。そして、赤く染まる水面。 #KZNPLN

2014-02-14 07:58:49
春魔解丼 @vespiking

鈍い音が響く。何度も、何度も。突如、金の衝撃が背中に走る。鈍い音が静止する。かわりに咆哮が轟いた。 #KZNPLN

2014-02-14 07:59:19
春魔解丼 @vespiking

動かなくなった駆逐艦の残骸を、赤い視界が時折捉える。視界が上下左右に荒れ狂う。眼下の艦は辛うじて人の形を留めている状態で、顔面は破壊し尽くされ、判別ができない。 #KZNPLN

2014-02-14 07:59:54
春魔解丼 @vespiking

視界が完全に反転した。水面を背負って天を仰ぐ。金色の光が見下ろしている。 #KZNPLN

2014-02-14 08:00:20
春魔解丼 @vespiking

鉄仮面のような冷たい顔が見下ろしている。金に輝く拳が振り下ろされる。時間が鈍化する。右肩が砕かれる。左肘。右膝。左脛。胸。顔面。顔面。打ち下ろされる拳は、一切の殺意を孕んでいなかった。殺す気は毛頭ない。気絶させる気すらない。ただ動きを封じ、痛めつける。 #KZNPLN

2014-02-14 08:03:57
春魔解丼 @vespiking

金の殴打は、システマティックに本能的恐怖のみを植え付けていく。打ち下ろされる度、心が恐怖に呑まれていく。涙が溢れる。溢れた涙が金の炎に焼かれ、消し飛ぶ。謝りたい。ごめんなさい。だが謝れない。謝るための口は砕けた。謝る相手はもういない。大好きなお姉ちゃんは、もう。 #KZNPLN

2014-02-14 08:09:10
春魔解丼 @vespiking

私が謝りたかったのは、いなくなったお姉ちゃんは、一体どちら? #KZNPLN

2014-02-14 08:09:51
春魔解丼 @vespiking

その答えはもうわからない。答えを出す前に、夕立の心は壊れてしまった。答えを知っている私は、もういない。誰もいない。 #KZNPLN

2014-02-14 08:11:47
春魔解丼 @vespiking

「磯波の戦線復帰は無理ね。少なくとも暫くの間は。今はとにかく、あの子を時雨から離さないと」「うん……そうしよう。それがいい」執務室には、飛龍と北上。「あの子、駆逐艦寮よね。私の家、使わせてよ。うち無駄に広いから」「いいの?はちもいるのに」「賑やかな方が楽しいし」 #KZNPLN

2014-02-14 08:17:27
春魔解丼 @vespiking

各鎮守府には概ね艦種別に寮が設けられており、特に駆逐艦などは寮生活者が多い。だが寮生活は強制ではなく、鎮守府近隣には艦娘用の宅地なども点在している。上位の者となれば、大本営より私邸を賜るケースもある。飛龍もそのクチで、豪華すぎる私邸を持て余していた。 #KZNPLN

2014-02-14 08:22:42
春魔解丼 @vespiking

飛龍の家にはもう一人、同居人がいる。潜水艦の伊8だ。彼女は数ヶ月前の大規模侵攻作戦中に戦地で救助された、幼い孤児の艦霊である。以来、飛龍は伊8を実娘のように育てている。内向的だが聡明な彼女なら、きっと磯波を受け入れられるだろうと思った。 #KZNPLN

2014-02-14 08:30:35
春魔解丼 @vespiking

磯波の修理は完了し、容態も快方へと向かっていた。だが戦線復帰の絶望的な彼女の修理に対し、大本営の下ろした予算は極めて低いものであった。バイオテックにはカネがかかる。取り急ぎ下半身の臓器を再生はしたが、脚部の再生は断念。かわりに車椅子が建造された。メカは命より安い。 #KZNPLN

2014-02-14 08:36:57
春魔解丼 @vespiking

大本営から押し付けられた私邸を磯波へ提供する飛龍には、少なからず大本営への義憤、ともすれば当て付けがあったのだろう。それは自分でも理解していたし、それでいいとも思っていた。飛龍にとって大本営の恩賜は、磯波のささやかな幸せよりも遥かに安い。 #KZNPLN

2014-02-14 08:42:32
春魔解丼 @vespiking

執務室を出る飛龍を見送りながら、北上は悔しさを腹に抱えていた。大本営から賜った総司令の位階。明らかに自分には不釣合い。北上は理解していた。自分は傀儡なのだ。大本営が円滑に帝国を動かす為、自分のような艦娘を頭に据えたのだ。豪華な作業机。無能の証明。 #KZNPLN

2014-02-14 08:46:27
春魔解丼 @vespiking

大本営から賜った邸宅を、大本営が切り捨てた者の為に躊躇なく使う。静かな、だが確かな反逆。飛龍は自分の頭で考えている。ひきかえ自分はどうだ。賜った椅子に座るのみ。なにも考えてはいない。飛龍のほうが、遥かに相応しい。総司令の椅子に。蹴飛ばしたい。この椅子を。 #KZNPLN

2014-02-14 08:50:07
春魔解丼 @vespiking

この椅子に飛龍を座らせる。北上は決意した。いや、決意はとうにしていたのだろう。辛うじてブレーキをかけていた大本営への忠誠を、今、蹴飛ばした。 #KZNPLN

2014-02-14 08:53:16
春魔解丼 @vespiking

駆逐艦時雨。この鎮守府における重要度は夕立が頭角を現す以前から高く、戦力の核となる1隻だ。だが、彼女が夕立のように幹部の椅子を与えられることはない。時雨は同時に、大本営より最重要危険艦としてマークされている。 #KZNPLN

2014-02-14 08:56:34
春魔解丼 @vespiking

狂犬・夕立に対し、時雨はいわば忠犬である。彼女は一度受けた指示に対し、最大限以上の忠義でもって応える。それを阻害する物は何であろうと殺し尽くす。自分の感情すらも。夕立を止めろと命じられれば、時雨は夕立を止める。何を捨てても。たとえ夕立が壊れようとも。 #KZNPLN

2014-02-14 09:01:07
春魔解丼 @vespiking

鉄の仮面で顔を覆った時雨の心中は、誰にも窺い知れない。ゆえに大本営にとっての時雨が、決戦兵器以上の意味を持つことは決してない。霧島の人選もそこに由来する。霧島は何を捨てても欲していたのだ。卯月の情報を。そして、作戦は成功した。霧島の判断は正しかった。 #KZNPLN

2014-02-14 09:04:24
春魔解丼 @vespiking

◆(仮)◆【 #KZNPLN 】◆(仮)◆

2014-02-14 20:32:25