連作小話「スーパーエゴイスト物語」

土曜日 @doyoubi

#twnovel ねえねえ、映画「幸福の黄色いハンカチ」観たあ？倍賞千恵子演ずる生協ストア・レジ女性に高倉健さん炭鉱夫がプロポーズする場面があったでしょ。ちょうどあんな感じで私達、めぐり会ったのよ。健さんみたいないい男でも倍賞千恵子のような美人でもないけど、運命の出会いだったわ。

土曜日 @doyoubi

#twnovel 運命の出会いの後しばらくしてから私のアパートで同棲。一緒に暮らしてみると色々あるけど、なんとかなりそうだから市役所に婚姻届。彼は初婚、私は再婚。結婚して張り合いができたみたいで工場派遣労働を真面目に勤めるようになった。リーマンショックでもクビにならなかったのよ。

土曜日 @doyoubi

#twnovel 運命の出会いとかいうけど上手く咥え込まれた感じだなあ、何事も要領がいいんだよ、あの女。家事もきちんとするし夜は豹変するしオモロイから許してるけど。俺のケチの付き始めは大学卒業時が金融危機就職氷河期だったけど、ここらで挽回と思って婚姻届にハンコを押したのさ。

土曜日 @doyoubi

#twnovel 彼、真面目だけど自己主張が苦手、要領も悪いのよ。雇われている偽装請負会社はワリとマシで社会保険もちゃんとしている。だから、そこの正社員登用の道を勧めているの。いつまでも現場で働くのは無理。搾取される側から搾取手伝いに転換ね。真面目もいいけど要領が第一よ、あなた。

土曜日 @doyoubi

#twnovel 私が要領に拘るのは初婚失敗の反省。状況や他人に流されるのは嫌、自分を第一にしたいと思うあまり、他人にまで口出しする。それをやりすぎて夫に嫌われちゃった。男の面子を潰すなってことね。愛があるから口出ししても大丈夫と思い上がってたのね。愛なんて簡単に壊れるのよ。

土曜日 @doyoubi

#twnovel だから、愛も要領。押したり引いたり撫でたりさすったり、手練手管を駆使して愛を貫く、そう決心した。今の夫はその格好の標的なのよ。無口で真面目だけれど不器用、そんな彼を私の愛と要領で一人前の男に仕立て上げる、それが私の夢。えっ、支配欲だろうって？滅相もないオホホ。

土曜日 @doyoubi

#twnovel 私のこだわりその２は容姿。オバサン体型には絶対なりたくないの。ランニングもアスレチックもやってる。だからお店では私が目立つのね。釣り銭を渡すときに手を握り締めるスケベオヤジが何人かいるぐらいなの。その話をしたら彼、黙りこんで不機嫌な顔をしたわ。男ってバカね。

土曜日 @doyoubi

#twnovel 女にとって化粧もファッションも全ては自分のためのもの。男を惹きつけたいということ以前に自分にとってのものなのよ。内面の美もあるかもしれないけど外形がまず大事。そして、私は私だけのもの。誰の所有物でもない。「人間まずはエゴ」から始めたいのよ、私が愛するあなた。