【ニンジャスレイヤー二次創作】 帰ってきた女 #2
おれはうきうきしながらアサクサへと歩いて行った。目あての女、あの懐かしきわが妻がどこに住んでいるのかは知らない。だが、彼女の持っていたコケシマートの袋は大きくふくらみ、たくさんの食料品が入っていることは知っていた。 33
2013-05-23 23:53:54恐らくはアサクサのどこかに住んでいるのだろう。とにかく、彼女をみかけたコケシマートを張ることにした。閉店まで待つこともできたが、気のせいているおれはそこらでスナックがしの袋をいじっている店員にこえをかけることにした 34
2013-06-18 18:14:06店員は丸いおしりを突き出すようにして立ち上がった。後ろ姿からはわからなかったが、胸もしりとおなじくらいに丸く突き出していた。そばかすの残る顔にくっついた目はおれを値踏みするように細められていた。「で、なんの用だい?」 35
2013-06-29 02:59:21「女を一人、探しているんだ」おれはこれこれこういう女だと店員に妻の特徴を伝えた。もしかしたら娘を連れているかも、とも。 「女ならここにいるよ。あんたの探してるのとは違くてもあましも女だよ」 店員は胸を突き出して下からおれの顔を見あげた 36
2013-07-07 13:59:54「またにしておくよ、おれが探してるのは女というだけじゃあないんだ」 「イクジナシ!」店員は毒づいた。「出されたライスを食べないローニン!」 俺は微笑んでコケシマートをでた。 37
2013-07-07 14:13:08おれはコケシマートの入り口が良く見える路地に陣取った。入り口は二つあり、夕飯のしたくをする人びとが行き来し自動ドアは開いて閉じきる前に別の客が通るのできちんと閉まりきることがないようなありさまだ。 38
2013-07-21 15:44:29路地に立ち、コケシマートに入る客をひとりとて見逃さないようおれは目を凝らした。コケシマートの入り口までは100メートルはあるだろうか、おれの血液がまださらさらと流れ、カラテが赤血球や白血球やそのほか目に見えないちいさなものたちを手助けしていたころなら、 39
2013-07-24 01:31:58@N_Halka この距離でも問題なく客の顔を見分け何時間でも路地裏に立ち続けられたろう。だが今のおれにはとてもつらい仕事だった。目はかすみ、立っているだけでも体力がなくなりかかとがとても痛んだ 40
2013-07-28 08:07:10もう今日はあの女はこないのじゃないのか?後ろ姿しかみていないのだから、実はおれの見間違いで、ただむやみにあほうみたいに路地うらにつっ立って疲れ果てだだけなのではないか? 41
2013-08-17 11:34:11もう5分も立っていられないと考え始めた時、おれの目はオハギをとらえた。あの黒くて甘いまるいやつだ。オハギはたっぷりとアンコにまみれて実にうまそうに見えた。おれの舌がアンコの甘さを思い出してきた、あのアンコの甘さときたら! 42
2013-09-17 22:56:08天使だって背中の羽根をもいで地上におりてくるだろう。おれはそいつを口の中に放り込みたくてたまらなくなった。 43
2013-09-17 22:58:24そうしたらこの疲労もふっ飛ぶ。きっとまた何時間でも立ち続けていられることだろう。そうしてわるいことが何かあるだろうか?たしかにオハギは違法だか、こうして道ばたで堂々と売られているんだからグレーゾーンってやつだ。 44
2013-09-22 09:24:04おれはオハギの甘さに耐えられずに家族をばらばらにしてしまった。けれどもそれはネオサイタマのヒョットコや無軌道学生や、ペケロッパなんかが夜通しさわぐからで、それで寝るひまさえなくなったからだ。いまは死ぬまで寝ててたっていいんだ。 45
2013-09-22 19:09:43おれは違法オハギ売り子に声をかけた。 「オハギを三つくれ」 「五こで一セット、3000円だ」 おれの知っている相場よりも少々高い。 「もう少しまからないか?」 「うちのは上等のアンコなんだ、ちよいともまからねえよ」 46
2013-10-14 19:51:16服だの風呂だのでいつもよりもカネのないおれには高すぎるし、五こは多すぎる気がしたが、ここを離れたくはなかった。しかたなくおれはポケットの中をさぐってトークンをつかんだ。 数えてみると1500円しかない。 47
2013-10-14 19:55:082つ分の金しかないが、まあそれでもしかたない。おれはアンコがなければ立つこともできないのだ。 「1500円しかないんだ、2つくれ」 「ダメだ、5個で1セットだ。それでしか売らねえよ」 「なんだって?そんなばかな話があるか。」 48
2013-10-29 00:30:08「二つ買うだけのかねはあるんだ、なぜ売らない?」 「おまえに二個売って、のこりの三個だけほしいなんてやつが出てくる保証はあるか?」 49
2013-11-04 15:46:19「理屈にあわん、客にものを売るのがおまえのしごとじゃないのか?」 「客はあんた以外にもたくさんいるんだぜ、うちのアンコは上等なんだ。カネがないなら強盗でもなんでもしてカネをかせいでこい。カネのないやつは客とは言わねぇんだぜ」 50
2013-11-17 08:34:56こいつははなから俺にオハギを売る気はないのだ、とうとつにおれは気付いた。3000円すら持っていない男がこの後常連になることなどないだろう。常連に売るはずのオハギをおれに売ったら常連の分がなくなる 51
2013-11-22 22:29:34ただしい商売人のメソッドだ。だか俺には?オハギが手に入らないのならおれにとってはまちがったメソッドだ。 51
2013-11-22 22:51:25サカキ・ワタナベは違法オハギの露天商を路地裏のさらに奥に連れ込み、首をねじ切った。そして手慣れた手付きで死体の懐から札束を抜き取り売り物のオハギを3つ租借した。それからバイオ笹タッパー入りの六個セットのオハギを奪い腰に吊してその場を立ち去った。 52
2013-11-22 23:05:24サカキは手際よくそれをやってのけ、誰にも気づかれることはなかった。初めてとは思えない妙にとなれた手付きで、サカキは忘れていたがこういうことは実際なんどもやっていた。 53
2013-11-29 14:38:39サカキは路地裏をでて、ふたたびコケシマートを見はった。そのころには違法オハギ露天商の一件は脳みその片すみにも残っていなかった。 54
2013-12-19 22:43:26腰にさげたバイオ笹タッパーのなかみがオハギであることはしっかりと憶えていたが、どうやってそれを手に入れたかという疑問は湧かなかった。アンコとアルコールが手放せなくなった人げんとはそういうものなのだ 55
2013-12-19 22:45:12ワタナベはコケシマートの前に戻るとまた待った。オハギのアンコ成分が血中にまわり、さっきよりもずいぶんと楽に待つことができた。ヨメと会ったらなにを話そうかと妄想する余裕まであった。 56
2013-12-22 10:41:17