原発避難と自治体――著書で書いたこと・書けなかったこと(今井照)

2014年3月18日の第60回ふくしま復興支援フォーラムにおける、今井照さん(福島大学行政政策学類教員)の報告と質疑の一部をまとめました。 まとめたツイートの中で出てきますが、今井さんの新著である『自治体再建――原発避難と「移動する村」』(ちくま新書、2014年)の内容にかかわる話です。
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高橋 準 @myriel_june

ふくしま復興支援フォーラム、第60回の報告は今井照さん(福島大学行政政策学類)。新刊『自治体再建』(ちくま新書)で書き切れなかったこと(こぼれ話)を話されるそうです。

2014-03-18 18:30:34
高橋 準 @myriel_june

今井さんの本はこちら→今井照、『自治体再建――原発避難と「移動する村」』、ちくま新書、2014年。 http://t.co/HdeWhJYkaP

2014-03-18 19:14:11

■前置き

高橋 準 @myriel_june

今井「本で話したことをくりかえすのは芸がない。書けなかったことや、誤解を招いたことなどについて話したいと思う。皆さんからのご意見もいただければ」

2014-03-18 18:31:40
高橋 準 @myriel_june

今井「新書執筆の経過など。新書を書くのは初めて。去年の11月初旬に打診があった。震災以前からつながりのあった朝日の記者さんからの紹介。(註:今井さんが朝日新聞と共同で数回東京への避難者の調査をしている。)3.11に間に合わせる必要がある。となると、2月刊……と押せ押せで出た本。」

2014-03-18 18:35:13
高橋 準 @myriel_june

今井「出版社の会議では、『震災ものは売れないから、タイトルに「震災」と入れるな』と言われたらしい。それではと、『移動する村』という案を持っていったら、それでは中身が分からない、地域再生ならいい(売れる)、『自治体再生』はどうか、などと。」

2014-03-18 18:38:40

今井「もっとも、「自治体再生」というと、財政難に陥った自治体の再建のほうを連想させるのですが」というコメントがありました。

高橋 準 @myriel_june

今井「締め切りまで2週間ぐらいでようやく出ることが決まった。それまでに書いたものがあったけど、いままでで一番タイトなスケジュール。」

2014-03-18 18:36:30
高橋 準 @myriel_june

今井「サブタイトルに『原発』とか『震災』とかいれても、本の背にはその文字が入らない。ふつう1万部以上刷るらしいんだけど、この本は8000部しか刷らないことになった。結果値段が高くなっている。本題に入る前が長くてすいません。(会場笑い)」

2014-03-18 18:40:32
高橋 準 @myriel_june

今井「予想通り売れていない。全国的に震災もの、原発ものはやはり売れないという出版社の判断は正しい。新書は次の本が出るまでに売り切るのがスタンス。増刷の判断は2週間ぐらい。愚痴混じりですいません。」

2014-03-18 18:42:48
高橋 準 @myriel_june

今井「読んでいただいた方、特に行政の関係者からはほめていただく。しかし、新書はそれだけでは足りない。アマゾンレビューも2件。5点と2点。足して2で割ると3.5になってしまう。2点の人には『体制批判の本であるが浅すぎる』とか書かれた。たぶん「あとがき」のせいだと思う。」

2014-03-18 18:44:37

■第一部

高橋 準 @myriel_june

今井「本題に。第一の柱は本書の趣旨。第二は著書への追補。第三は避難者のこれからについて。本書の趣旨としては、断片的にしか出てない自治体の行動(特に避難)の記録をまとめること。原発災害直後、基礎自治体はしっかりがんばった、という評価。若干身びいきかも知れないが」

2014-03-18 18:47:03
高橋 準 @myriel_june

今井「一般には自治体は機能しなかったと言われているが、そうではない。これをネタに『基礎自治体は力が弱い(だから合併、広域化し、道州制へ)』といわれているが、そんなことはないことを示したかった。双葉郡では国より早く避難指示を出し、エリアの問題でも国とは違う指示を出した。」

2014-03-18 18:49:37

「これをネタに~」というのは、中央から震災時の自治体の働きを評価するときに、こういう話があったことの紹介です。著書では、竹中平蔵・船橋洋一「大災害と複合連鎖危機」同編著『日本大災害の教訓』東洋経済新報社、2011年があがっています。

高橋 準 @myriel_june

今井「国からの情報がない中、独自の判断を自治体が出している。判断の結果についての評価はいろいろあるだろうが、自治体の判断と行動が命を救った面がある。」

2014-03-18 18:51:59
高橋 準 @myriel_june

今井「『移動する村』という概念。同僚の荒木田岳からヒントをもらった。近世ではヒトを中心に考えられている。藩も村もヒト中心の概念であって、土地を見ているのではない。租税の単位が村だったからだろう。そしてこれとは別に、土地という区画のクニがある。二重の構造」

2014-03-18 18:57:35

著書では、荒木田岳「明治初年における地域支配の変容」『ヘスティアとクリオ』5号、2007年という論文があがっています。

高橋 準 @myriel_june

今井「そのまま現代に適用できるかはともかく、土地という概念と人の集まりとは別にして考えることができるのではないか、という考え方。これが書いてあることの二つ目。」

2014-03-18 18:58:37
高橋 準 @myriel_june

(今井さんの「移動する村」の説明は、いまいちわかりにくかった……たぶんうまく伝えられていません。すいません。)

2014-03-18 19:04:19
高橋 準 @myriel_june

今井「三番目は、避難者が周囲にきがねをしながら生活しているという現実がある。必ずしも周囲の目が厳しいわけではない。(厳しいところもあるが。)ただ、避難している当事者は、そう考えてしまっている。災害、特に人災の被害者が、さらに被害を受けているのはおかしい。」

2014-03-18 19:00:36
高橋 準 @myriel_june

今井「このことをなんとかして政策課題とできないかと思っている。」

2014-03-18 19:00:56

■第二部

高橋 準 @myriel_june

今井「第二の柱の追補。先ほど述べた第二点(土地と人の区別)について、やや強調しすぎたかと。特に法学からの批判。誤解を招くような表現もあったかもしれない。実際に、今の双葉郡にも区画はある。もとあった区切りは今も生きているので。」

2014-03-18 19:03:06