古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #15

更新十五回目のまとめです。 古鷹に会えない青葉、その背中を押す吹雪、初雪、叢雲。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ふっふっふ~、もう逃げられないわよ?青葉」 「……その笑顔なんですか、衣笠。気持ち悪い」 古鷹ねーさんの本当の気持ちを確かめた私は、その足で青葉を探して鎮守府中を探し回った。そして、執務室で演習に出撃する準備を整えていた青葉を発見した。青葉の手をひっつかみ、廊下に連れ出す。

2014-03-31 23:20:31
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雷ちゃんは突然執務室に飛び込んできた私に目を真ん丸にして驚いていたけれど、「青葉を借りるわよ」と私が告げると笑って頷いてくれた。 「一体何の用ですか、演習行かなきゃいけないんですから早くしてくださいよ」 廊下の壁を背にして、青葉が暗い目で気だるそうな顔をする。目は私と合わせない。

2014-03-31 23:28:00
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

私がまだ古鷹ねーさんとのことを諦めていないと思って、うんざりしたような様子だ。ま、そんな態度をしてられるのも今日限りだけれどね。 「ふふーん。青葉、あんたこれを見てもまだそんな顔してられるかしら~?」 背中に隠し持っていた青葉のアルバムを取り出し、青葉の目の前に掲げる。

2014-03-31 23:34:35
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青葉が怪訝そうな目でアルバムを見た。その眼がだんだん見開かれていく。そして。 「えっ、ちょっ、衣笠あっ!?それ、一体なんで……返してくださいっ!」 「あら、そうはいかないわよ?」 大声を上げながらアルバムを取り返そうと飛び掛かってきた青葉をかわし、頭上にアルバムを掲げる。

2014-03-31 23:40:33
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉が顔を真っ赤にして必死の形相で手を伸ばしてくる。けれど古鷹ねーさんよりちょっと高い程度の青葉の背では私の手まで届かない。あんたのそんな顔、久しぶりに見たわ。ここ最近、いつも眉間にしわ寄せた辛そうな顔と貼りつけたような笑顔しか見てなかったから。なんだか無性に嬉しくなる。

2014-03-31 23:47:26
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「か、返してくださいよ!プライバシーの侵害ですよ!?」 「青葉がつべこべ言わずに素直になったら返すわよ?」 「だからそれはできないって言ってるじゃないですかあ!青葉は、青葉は……っ!」 青葉が涙目になりながら叫ぶ。ああ、やっぱり青葉だって古鷹ねーさんと元通りになりたいんじゃない。

2014-03-31 23:55:35
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青葉が肩で息をしている。アルバムを取り返そうとして何度も飛び上がっていたせいだ。 「なんでこんなことするんですか!古鷹さんだって、青葉のことはもういいって言ってたじゃないですか!」 「ねえ、前も思ったけど、なんで古鷹ねーさんを避けまくってる青葉がそれを知ってるのよ?」

2014-04-01 00:01:02
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

うっ、と青葉が言葉に詰まる。手をもじもじさせながらうつむく。私は容赦なく追い撃ちをかけた。アルバムを青葉の目線まで下げて言う。 「青葉が素直になったら、このアルバム返してあげないこともないんだけどな~?」 「うう……その、聞いたんですよ……加古さんに」 え、加古ぉ!?

2014-04-01 00:06:00
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「その、倉庫とか押入れとか加古さんが寝てるところに出くわすことが結構あって、古鷹さんの近況とか加古さんが洩らしてくれたりしまして……」 相変わらず身体をもじもじさせながら青葉が言う。そういえば加古、食堂の隅とかで寝てたわね。というか青葉、本当古鷹ねーさんに未練たらたらじゃない。

2014-04-01 00:14:37
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「ほら、言いましたからアルバム返してくださいよ!」 青葉が手を伸ばしてくる。私はひょいとそれを避けた。 「あら、私は『青葉が素直になったら』って言ったのよ?いいじゃない、古鷹ねーさんと仲直りしちゃいなさいよ」 「だから、そんなこと許されないって言ってるでしょう!」 青葉が叫んだ。

2014-04-01 00:21:26
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

あまりの剣幕に、思わず私は黙り込んだ。青葉が消えそうな声でつぶやく。 「だめなんですよ……青葉が許されるなんて……昔通りになるなんて……」 「……古鷹ねーさんも、『青葉と元通り仲良しになりたい』って言ってたわよ?それでもだめなの?」 青葉が、びくりと体を震わせた。

2014-04-01 00:26:03
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黙りこくった青葉を、私は何も言わずに見守った。やがて、青葉がふるふると力なく首を横に振った。 「……加古さんから、古鷹さんの話を色々聞きました。古鷹さん、いっつも青葉のこと心配してくれていて……自分のしたことが青葉を苦しめたんじゃないかって、そんなことを気に病んでくれていて……」

2014-04-01 00:32:52
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青葉が両手で顔を覆う。 「そんな優しい人を、青葉は……青葉は……っ!」 青葉が嗚咽を洩らす。私は思わず青葉に歩み寄って抱きしめた。 「それだけじゃありません……言ったでしょう……青葉は、何隻も仲間を見捨てて……自分だけ日本に帰りついて……青葉の手は、罪で汚れすぎてるんです……」

2014-04-01 00:40:41
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉が続ける。 「……古鷹さんが青葉と元通りになりたいと言ってたと聞いて、青葉すごく嬉しかったんです。古鷹さんが青葉のことを心配してくれていたというだけで、青葉とても幸せだったんです。……だけど、それと同時に青葉の中で誰かが言うんです。『お前にそんな資格はない』って……」

2014-04-01 00:47:35
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「……そんな声、まやかしよ。昔のことを罪だと思ってるのはあんただけよ、青葉。色んな艦娘に話を聞いたけど、青葉を恨んでる艦娘なんて誰もいなかった」 青葉を抱きしめたまま言う。青葉がまた首を振る。 「青葉だって、そう思いたいですよ……青葉だって……」 青葉の熱い涙が私の肩にこぼれた。

2014-04-01 00:53:06
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉の心からのSOSが聞こえた気がした。青葉も、古鷹ねーさんも同じ気持ちなのに。青葉だって、このままでいたくないのに。青葉の心をどうやったら救えるだろう。私は、どうしたら。その時、いきなり背後から誰かの声がした。 「……あの~、お取込み中悪いんだけど、ちょっといいかしら?」

2014-04-01 01:00:17
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

ばっと体を離し、振り返る。そこにいたのは吹雪型駆逐艦娘の吹雪、初雪、叢雲だった。気が付けば、アルバムを取り返そうとする青葉をかわしていたせいで私たちは執務室の扉の真ん前にいた。三人が私たちの脇を通って執務室に入ろうとする。三人を見た青葉がまた暗い目をする。その時叢雲が振り返った。

2014-04-01 01:09:38
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「あんたまだうじうじしてんの、青葉?気色悪いわね」 叢雲が青葉をばっさりと切り捨てた。さすがの私もそこまで言わなくても、と思った。吹雪があわわと叢雲と青葉を交互に見る。初雪は何も言わず青葉をじっと見つめている。青葉は、何も反応を返さなかった。叢雲がため息をつく。

2014-04-01 01:19:08
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「あんたのことだからどうせ私たちが沈んだのも自分のせいだとか思ってるんでしょうけど、失礼な話よね」 「でも……青葉があの時もっと早く敵に気付いていれば……」 青葉の言葉に、叢雲が顔をしかめる。 「それで?償いをしたいっての?そんな景気の悪い顔で夜間の哨戒に参加されても困るのよ」

2014-04-01 01:25:26
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青葉は無言のままだ。吹雪がねえ、もうやめてあげてよと叢雲を制止しようとしている。その横で、初雪が手をぽんと打った。 「じゃあ……青葉に償ってもらえば、いい……」 え?と皆の目が初雪に集まる。 「青葉、古鷹に会ってきて……それで、私たちのことはチャラ……」

2014-04-01 01:32:51
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それいいわね、と叢雲が言う。青葉は、ぽかんと口を開けていた。 「うん、決まりよ。青葉、私たちに申し訳ないと思うなら、古鷹から逃げ回ってないでちゃんと顔を合わせてきなさい。いいわね?」 呆けていた青葉が、はっと正気を取り戻す。 「む、無理ですよ!青葉は、そんなこと……っ!」

2014-04-01 01:37:58
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「つべこべ言うんじゃないわよ。ほら、悪いと思ってるならさっさと行く!」 叢雲が青葉の尻を叩く。吹雪も同じ思いらしく顔を輝かせている。私は眼前の光景をなんだか痛快な思いで見ていた。ああ、こんなことでよかったのか、青葉を古鷹ねーさんに会わせるには。青葉が諦めたように肩を落とした。

2014-04-01 01:45:23
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「……わかりましたよ……古鷹さんに会って、謝ってくればいいんですね……?」 青葉の言葉を聞いて、叢雲が怪訝そうな顔をした。 「誰が謝れなんて言ったのよ?」 「……え?」 「順序が違うでしょうが。あんたが古鷹に言うのは、『ありがとう』よ。青葉それすら言わないで逃げ回ってたんでしょ」

2014-04-01 01:49:50
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青葉が、再びぽかんと口を開けた。まるで、今までそんなこと考えもしなかったとでも言うように。 「必ず行きなさいよ。……古鷹、喜ぶわよ」 じゃあね、と言い残して叢雲が執務室に入っていく。吹雪と初雪もそれに倣った。私はにやっと笑って青葉を見た。 「これで、逃げ回れなくなったわね?」

2014-04-01 01:53:43