All-Round Military Humanoid Engine with Artificial feeling Device 3rd M A N - N E U R interface emulated
2014-04-01 19:22:00若きライオンは老いたるに打ち勝つだろう、 一騎討ちによる戦いの野で。 黄金のカゴの中の両目を、「彼」は引き裂くであろう。 両雄の一方、そして死す、酷き死。―――ノストラダムス、百詩篇第1巻35番
2014-04-01 19:25:15人は、何か大きな事件が起こった時、その日付を重要視する珍しいいきものである。人は、大きな事件の起こった日付に、あたかもリフレインを起こしたように、その事件について語らいあったり、ものによっては黙祷をささげたりする。
2014-04-01 19:26:22しかし、日付そのものにどれほどの必然性があるだろう?毎年思い出されなければならないほどに大きな事件ならば、常に語られるべきであり、犠牲者は常に悔やまれるべきだ。そうではないか?
2014-04-01 19:26:39男、ヘンリー・フラッグは、そのように考えていた。彼について箇条書き式に説明すると、アメリカ合衆国空軍所属のF-15Cのパイロットで、作戦中コードネームはカンファー2、敬虔なクリスチャンであったが、先述のように合理主義的な所があった。
2014-04-01 19:30:29その日―――9月であったが―――彼は朝早く叩き起こされ、スクランブル発進し、ニューヨーク上空を旋回していた。ビッグアップルで何が起こったのか彼は知る由もないが、物語にパイロットが登場したとき、あえて操縦桿を握らせない道理はないのだ。
2014-04-01 19:34:05『こちらスカイアイ、衛星写真によると、貿易センタービルに現れた謎の"ロボット"は依然にらみ合ったまま静止している。引き続き編隊で哨戒せよ』『カンファー1、了解』「カンファー2、了解」『カンファー3、』そこで通信が途絶えた。
2014-04-01 19:37:18『こちらカンファー1、カンファー3応答せよ』応答はない。カンファー3機のヴァイタルサインは消えていた。ヘンリーがカンファー3機のいた方角を向くと、炎上しながら落ちる二つの機影が見えた。二つ?
2014-04-01 19:38:52ヘンリーは何かを直感し、旋回円の中心、貿易センタービルの方を見やった。そこへ真黒い植物のツタのような何かが掃除機のコードめいて引き戻されていった。ツタの先端には鉤爪の生えた手があり、これまた真黒い剣が握られていた。まるで黒曜石の塊を研いで造られたような、深い輝きをたたえていた。
2014-04-01 19:42:29カンファー3を一刀両断した暗黒の触手は、向かい合ったロボットの一機、黄色と黒の機体の影から伸びていた。もう一方の機体は白と赤で、こちらは手足のほかに一対の翼を備えていた。
2014-04-01 19:44:38だが、その二つの影は、一瞬にしてヘンリーの視界から消え去った。「何……」次の瞬間、前方のカンファー1機が異様に傾いた。「な!?」慌てて旋回、衝突を回避するが、ヘンリーは自分の目が信じられなかった。黄色と黒のロボットが、カンファー1機の上に乗っていたのだ!
2014-04-01 19:49:03更なる常識を超えた光景が待っていた。紅白の方が一瞬でカンファー1機の真正面に現れ、手に持った大鎌でF-15ごと黄色と黒のロボットを真っ二つに切り裂いたのだ!
2014-04-01 19:51:17…否!黄色と黒のロボットは紅白のロボットの上をとっていた!そして紅白の肩をストンピング!摩天楼に落ちてゆく、両断されたF-15と天使じみたシルエット!その黄色と黒の、背中に漆黒の剣を星形に五本挿した人型の背後で、二つの塔、世界貿易センタービルが、灰色の血煙を吹き上げ崩れていった。
2014-04-01 19:56:18ヘンリーは思った。この黄色と黒の、こいつは、悪魔だ。"悪魔"がこちらを睨んだかと思うと、背中の剣を両手に持ち、こちらに投げてきた。驚いたことに、投げた剣の後部からはロケット噴射らしきものが出ている。
2014-04-01 20:00:29ヘンリーは酸素マスクの下で苦笑した。これなら自分の管轄内だ。訓練通りにフレアを撒き、バレルロール機動をとると、二本のミサイル剣は面白いように逸れていった。その時、ヘンリーは思い出した。
2014-04-01 20:02:58ヘンリーは、黙示録が嫌いだった。人がなすすべもなく死んで行くのが嫌いだった。人を救うための教えとしてはあまりに不釣り合いな異教徒の結末が嫌いだった。空軍に入ったのも、蝗の群れに我一番にナパーム弾を撃ち込むためではなかったか?なぜ今の今まで忘れていたのか!
2014-04-01 20:04:52旋回の途中、減速したすきに、遥か下の悪魔の影から手が伸び、空中の一振りをつかんで機体を斬り上げられた。失意にまみれながら、ヘンリーはベイルアウトした。
2014-04-01 20:13:51強烈な上昇Gになんとか耐え、パラシュートが開くと、遥か下の摩天楼から飛び上がってくる白い閃光があった。地面に突き落とされていた、白いロボットだ。あの機体が天使かどうかは解らないが、この闘いを最後まで見届けよう。ヘンリーはそう思い、そうした。
2014-04-01 20:15:57