ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド #10

ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド @GR_o_t_D

【ゴールドラッシュ・オブ・ザ・デッド】♯10

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「さて、開拓者諸君。私は君たちに訊きたいことがある」 「な、なんですか……っ？」 ソフィアは蒼白な顔で、かろうじて銃を構える。ふむ、と頷くゾンビ。　1

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「……と、その前に自己紹介がまだだったな。私は挨拶を忘れない紳士でね。さて、お初にお目に掛かる。私は六公爵が一人、大ガレス。君たち開拓者がつけてくれた通り名では『白亜の忌手』。同胞のフライングデッドたちからは大ガレス卿と呼ばれている。好きな方で呼んでくれたまえ」　2

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「……ご丁寧にどうも。そのゾンビのお貴族様があたしたちに何を訊きたいと？」 「大地の巫女はどこかね？　新たな金脈が目覚めたということは、この辺りにいるはずなのだが、見つからなくてね」　3

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「……そうですか、六公爵が大地の巫女を追っているって伝説もやっぱり本当だったんですね。ここまできたらもう疑う余地もありませんでしたけど……。たとえばあたしたちが大地の巫女の居場所を知っているとして、教えると思います？　あなたたちにさらに強大になられちゃ困るんですよ」　4

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「ふむ、残念だ。私もあまり仰々しいことは好まないのだが……それなら仕方ないな」 大ガレス卿がスッとその右手を掲げた。 ウィルの背中に悪寒が走る。ダメだ、あの手を振り下ろさせてはいけない！ 「やめろ、腐れ野郎――ッ！」　5

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忍力を振り絞って影の触手を断ち切った。だが、間に合わない。白の手は振り下ろされてしまった。その瞬間、夜空に木霊し始める無数の負の声。ケヴィンが叫ぶ。 「な、なんだありゃあ……っ！　あああ、空だ、空を見てくれ……っ！」　6

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まるで闇のような曇天。その雲間から無数のフライングデッドが姿を現した。 何百、何千、いやそれ以上の数がいる。そのすべてが負の感情を垂れ流し、ブラックヒルズタウンの上空を席巻した。 「あ、ああ……っ」 故郷の村と同じだ。　7

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ウィルが絶望に身を震わせるなか、ゾンビ共は一斉に人々を襲いだした。 街の至るところで人々が喰い殺され、ゾンビとなって復活し、また新たな人間を襲いだす。そしてその習性に従い、最初に襲うのは身内である。父が娘を襲い、妹が兄を襲い、嫁が夫を襲い、女友達が男を襲う。　8

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親しい者同士の凄惨な喰らい合いが始まっていた。これを地獄と呼ばず、なんと呼ぼう。 「こんちくしょうッ！　臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前！　飛燕分身の術ッ！」 「ウィル、何を……っ!?」 「分身を放って街の人たちを助ける！」　9

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「たった六人しかいないのに無理ですっ。数が違い過ぎる！」 「はは、私の同胞を傷つけられるのは困るな、忍者。彼らには大地の巫女を見つけるという仕事があるのだ。雷の精霊リッジデールの悲鳴ッ！　受けよ、裁きの雷撃を！」　10

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「――っ!?」 ゾンッ！　電撃が本体のウィルの身体を貫いた。ウィル、爆散！ 「あ、ああああっ！　旦那が消し炭にされちまったぁぁぁっ！」 「いえ、違います！　よく見てっ！」　11

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「ん!?　あ、あれは……丸太!?　旦那がやられたと思いきや、電撃に焼かれたのはただの丸太だ！　これは一体如何なる奇跡!?　誰にも予想しえなかった事態じゃねえかっ！」 「――忍法、変わり身の術。さあ良い声で鳴けよ、六公爵」　12

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ウィルは大ガレス卿の背後に出現。積年の怒りを込めて拳を握る。 「喰らえ！　今度こそ、ＳＡＹ――」 ゾンビはフッと笑った。 「光の精霊クラクストンの微笑み」　13

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大ガレス卿の姿がかき消えた。行き場を失くした黄金の拳が、虚空に光を走らせる。 「消え、た……っ!?」 かすかな輝きと共に大ガレス卿の姿が再び現れる。だがそれは本体のウィルのそばではない。分身体の一人の前に、六公爵は出現した。驚愕する分身体。　14

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「馬鹿な!?　お前は今、本体の俺の前にいたはず……っ！」 「なんのことはない。ただ、光の速度で動いただけだよ」 その白き手が分身ウィルの頭を掴んだ。 「熱風の精霊フレッチャーの憂鬱！　そおおら、蒸し焼きだぁぁぁぁぁぁッ！」　15

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「ぐあああああああっ！」 全身の水分を一気に蒸発し尽くされて、一人目の分身体が消滅。 「再び光の精霊！　続けて水の精霊チルトンの涙！　水責めだぞぉぉぉぉッ！」 「は、早い!?　この俺が反応出来ないだと!?　ごばっ、ぐぼぼぼぼぼぼぼ……ッ！」　16

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水の球体に閉じ込められて二人目も消滅。 敵の到来を察した三人目と四人目が頷き合った。 「くるぞ、三人目の俺！」 「理解してるさ、四人目の俺！　分身体で一番仲が良い俺とお前で、合体忍法だ！」　17

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ウィルたちは迎撃のため、目にも留まらぬ速度で九字を切り――その途中で首が刎ね飛んだ。一瞬遅れて、スパンッと斬撃の音だけが響く。 「光速で動いているのだよ？　そんなノロマな亀さんで間に合うはずがないだろう？」　18

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「――でもここまで密着すれば、速度なんて関係ないよな!?」 五人目のウィルが大ガレス卿を羽交い絞めにした。その腹には点火済みのダイナマイト。 「裏奥義！　忍法、即身大爆破の術。――俺に構わずいけえ、六人目の俺！　一人でも多くの開拓者を救うんだッ！」　19

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「五人目、すまない……っ」 「へへ、良いってことよ」 にやりと笑って、五人目が爆発。ドドンッ！　闇夜に爆炎が広がった。 六人目のウィルと本体のウィルが同時に呟く。 「「やったか……っ!?」」　20

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煙が風に流されていく。そこには――以前、泰然と広がる六枚の翼！ 「おお、翼のコリがとれたぞ！　実に快適なマッサージだった」 「馬鹿な!?　ダイナマイトの大爆発だぞ!?　なんであれを喰らって平然としてられる!?」 「それは君らの攻撃に――愛がないからさ」　21

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大ガレス卿の姿が消える。途端、膨張する六人目の身体。 「な、なんだ!?　俺の身体が内側から、ぐ、ぐぐ、ぎゃあああああっ!?」 体内から爆散！　六人目は花火の如く夜空に散った。 その残光を背にして、ふわりとゾンビは戻ってきた。優雅に薔薇を愛で、微笑む。　22

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「今のは炎の精霊と光の精霊の混合ワルツだ。雑草も死に際ぐらいは着飾りたかろう？　冥途の土産だ。礼はいらんよ」 ……六人の分身体が瞬殺された。ただただ圧倒的だった。　23

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