一連の会話を、提督は執務机の一画に鎮座する端末を通してリアルタイムに観ていた。あらゆる武装や装備が深海棲艦との戦いを想定して厳しく制限される中で、提督用のこの端末だけが現在出撃、遠征している艦隊の様子を確認できる唯一の手段である。 #座礁艦隊
2014-04-16 21:49:02映像の入力は艦隊構成員である艦娘の目、妖精さんの目、艦載機のガンカメラなどで、音声は同様に艦娘や妖精さんの耳、艤装や艦載機のマイクなどである。それらはなんら機械的な加工をなされていないが、未知の手段で映像や音声を端末に送る。しかも視聴しやすいように自動調整されて。 #座礁艦隊
2014-04-16 21:53:17さらに、敵艦隊を発見した場合、その構成が簡易的に表示される。敵味方のどの艦が何を撃ったとか、どういう位置関係でいるとか、戦況をおおまかに把握できるのだ。この端末とそれに付随する機能は、妖精さんのオーバーテクノロジーがあからさまに用いられている唯一の代物であった。 #座礁艦隊
2014-04-16 21:57:07ただし、これにも例の対深海棲艦戦闘規則が適用される。接敵していない今なら艦隊と直接話を交わすことができるが、敵艦隊と接触したならばそれも制限され、提督は大まかな陣形を指示した後はほぼ観ているだけとなる。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:00:07提督という立場に求められるのは指揮能力ではなかった。戦闘に入るまでの事前準備を入念に過不足なく行う几帳面さと注意力、そして棋士のように戦況を先読みする能力であった。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:05:35一回の出撃は短くても数時間、長ければ数日かかる長丁場だから、人間である提督は集中力が続かない。朝生中佐も日常のデスクワークをこなしつつ、戦闘時に注視できるよう集中力を温存する。湾岸とアラビア半島の半分以上を統括する鎮守府の仕事量は多いが、彼女はそれをほぼ一人でこなす。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:08:28提督の居住地は鎮守府であるから、まるで専業主婦のようだと朝生中佐は思った。百人以上の大所帯を切り盛りする肝っ玉母ちゃんの心持ち。とはいえ、それほどハードワークでもない。秘書艦の初雪は"ごほうび"の時間を差し引いてもよく働いてくれる。他にも手を貸してくれる艦娘は多い。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:11:49椅子に背を預け、息をつく。「秘書艦は好みで選べ」と、かつて自分を指導した教官は言った。初雪タイプは引きこもりかと思うほど消極的な性質であることは知っていたが、そこに惹かれた。"ごほうび"はそんな初雪を動かすために色々試した中で初雪自身が気に入ってしまい、続いている。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:17:16「最初は親子のキスのつもりだったんだけどなあ」 と、執務室でひとりごつ。ケッコンカッコカリしてから劇的に変わったような気がする。悪い気持ちは不思議としないが。自分はサディストであると共にバイセクシャルだったのかしらん。それはそれで、まあ、楽しそうだ。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:24:14提督には変態しかいない。そんな話を幾度となく聞いた。すぐそこの――と言ってもおよそ3000キロ離れてはいるが――スエズにある鎮守府では提督が日常的に秘書艦の、パンツを食べているという。自分も似たようなものだろう。毎日秘書艦とキスしてる。舌を絡ませるフレンチ・キスを。 #座礁艦隊
2014-04-16 22:31:41書きたい話が多すぎる。けど、順番に順番に。木曾が陸に上がるきっかけとなった紅海での事象"イベント"海域の話も、あれだけじゃなくていつかやりたい。
2014-04-16 22:49:08提督「多摩改二とはまかいじが似ているように、浜風とはまかいじもまた似ている」 多摩「落ち着くにゃ。多摩に改二は来てないにゃ。あとはまかいじは列車でぜんぜん似てないにゃ」
2014-04-16 23:16:53座礁艦隊読み返したら古鷹ばあちゃんの参加した深海棲艦との初戦って、それ指揮した提督全員ケンペイ天狗案件なんじゃねえのと思った・・・。仕方がなかったとはいえ。
2014-04-16 23:24:34提督「球磨ぽーん♪ 球ー磨ぽん♪ 球ー磨ぽん♪」 球磨「ラーメンズネタだと分かっててもなんかムカつくクマ」 提督「球磨ぽーーーん!!」
2014-04-16 23:57:05いけない。物思いにふけってしまった。画面では初雪と長波が鼻をかんでいる。速度を落としているが、航行ルートに変更はない。手元のタブレットにオマーン湾の海図を出し、直近数日の接敵座標を重ねる。戦闘結果から取り逃がした艦をピックアップ。 #座礁艦隊
2014-04-17 12:20:26大破で逃がした敵艦も除外しない。さらに各艦隊の航行結果から、すり抜けた敵艦隊がいる場合を想定してそれも勘定に入れる。これからの出撃スケジュールの予定航路も。そのうえで初雪たちの航行ルートを決めていた。当然であるが、味方の情報はオマーン湾で活動する全鎮守府のものである。 #座礁艦隊
2014-04-17 12:26:01他の鎮守府も同じようなことをして作戦要項を決めている。初雪の艦隊はもちろん、今現在出ている全艦隊の戦果がリアルタイムに反映されるから、定期的に確認することが推奨されていた。これによってフレキシブルかつ的確な作戦行動が取れるというわけだ。 #座礁艦隊
2014-04-17 12:34:26もちろん四六時中提督が張り付けるわけもないので、補佐として艦娘に提督を代理させることが許可されている。当然ながら艦隊指揮経験の深い艦娘が望ましいが、そのような艦はたいてい高練度であるため、 出撃させずに提督の椅子に座らせる環境を用意できる鎮守府は多くない。#座礁艦隊
2014-04-17 12:41:49秘書艦は遠征任務の出来ない第一艦隊旗艦を兼務して常に出撃ルーチンに組まれるから、提督の代理はしづらかった。鎮守府の中には規定外ではあるが秘書艦と旗艦を分けていたり、秘書艦を複数置いていたりするところもあるが、海軍直属鎮守府であるここではそのようなことはできなかった。 #座礁艦隊
2014-04-17 13:37:03規定外がまかり通っていることからも、秘書艦と第一艦隊旗艦を兼務させるこのシステムは不合理であることは明らかだ。おまけに装備の開発主幹も兼ねているから、開発したい装備によっては秘書艦を一時的に変える必要も出てくる。で、この変更手続きが地味に面倒なのだ。 #座礁艦隊
2014-04-17 13:43:02が、幸いというかいい加減というか、秘書艦と旗艦の兼務がなされていれば上は何も言ってこなかった。だから朝生中佐は装備開発担当を別に置いた。たとえば艦載機関係の担当はいま出撃している赤城である。砲は陸奥、魚雷は木曾、などという具合だ。それでも何が出るかは妖精さん次第だが。 #座礁艦隊
2014-04-17 13:48:40提督の代理に関しても、待機中の艦娘に任せた。これは純粋に指揮経験が豊富で練度の高い艦娘がいるという理由だが、この指揮経験の積ませ方にも朝生中佐は一計を案じていた。いま木曾が行っているような出撃中の指揮の引き継ぎを、ほぼ毎回、わざと行わせたのだ。 #座礁艦隊
2014-04-17 13:54:02出撃中の出来事に関しては誰も口を挟まないから、秘書艦変更手続きを行わないこれはかなり効率的で有効であった。副次的な効果として、プライドの高い戦艦や正規空母に指揮を取らせて満足させることにも繋がった。駆逐艦を秘書に置いている鎮守府ではぜひ励行させたい行動であった。 #座礁艦隊
2014-04-17 13:58:00