【第二部-拾】由良と夕張 #見つめる時雨

夕張×由良
4

夕張視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

夕張です。今、私は由良の部屋に来ています。私は少し前までこの部屋で由良と同室だったのですが…訳あって今は個室を使っています。理由ですか?私、機械いじりが好きなんですよ。それに熱中しちゃうと深夜まで起きてることはザラだし、由良に迷惑かけちゃうから、提督にお願いしたんです。

2014-04-17 21:30:24
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私が部屋を追い出さ…移動したので、由良は現在この部屋を一人で使っています。私が使っていたベッドには由良のクッションやぬいぐるみが置かれていました。あのぬいぐるみって夕立ちゃんかしら?村雨ちゃんにもらったとか言ってたっけ。いいなぁ、かわいい。

2014-04-17 21:35:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

由良は今、机に向かいながら本を読んでいます。何の本を読んでいるのでしょう、ここからでは見えません。見えるのは由良の背中と、由良のトレードマークである大きなポニーテール。この前、あれを首に巻いてみたいと言ったら、ふくらはぎを蹴られました。相変わらず、私には容赦ないです。

2014-04-17 21:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…そろそろ足が痺れてきたかも…。さっきから私はずっと正座をさせられています。何でって、それは…。 「ねぇ、由良ぁ…。まだダメ…?」 そう聞くと、由良は壁の時計に目を向けました。そして冷たく言い放ちます。 「まだ10分しか経ってないじゃない。私が何分待ったか知ってる?」

2014-04-17 21:45:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…60分、です…」 「はぁ…ホント、機械いじりに夢中になって約束忘れるなんて、信じらんない」 「ごめんなさい…」 私は今日、由良と街へ夕食に行く約束をしていました。でも、それが…その…そういうことでして…。 「あと50分」 ええ!?由良、私が悪かったからぁ…許してぇ…

2014-04-17 21:50:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…心配した私が馬鹿みたいじゃないの」 「…え?」 「なんでもない」 由良はそう言うと、再び机の方を向きました。部屋に時計の針の音だけが、虚しく響き渡ります…。 「由良ぁ…」 …ついに返事もしてくれなくなりました。悲しい…。

2014-04-17 21:55:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…あれ?由良のポニテのリボンが少し緩んでるのが見えました。由良のは纏めている量が多いだけに、一度解けたら大変です。…直してあげないと…私はそう思い、手を伸ばしました。でも、足から腰を浮かせたところで…強烈な痺れに襲われました。 「…あっ!?」

2014-04-17 22:00:56
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私は前に倒れこみ、更に弾みで由良のリボンを掴んでしまい…それは一気に解けました。由良の髪を纏めているリボン全体が少しずつ緩んでいき…やがてブワッと広がりました。あ、ああ…。 「ちょっと…一体何をやってるのよ…」 由良の怪訝そうな目が、私に突き刺さります…。

2014-04-17 22:05:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

私は、足の痺れから全く動けずにいました…。た、助けて…。 「…夕張は本当に何がしたかったの?」 由良がしゃがんで、倒れこんでいた私の手からリボンを回収しました。 「まったく…結び直しじゃない。これ、結構大変なんだからね」

2014-04-17 22:10:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ごめん…由良のリボン、解けそうになってたから…」 「それでいっそ全部解いちゃえって?」 「今のは事故!事故なのよ!私はただ直そうと思ってぇ!」 由良がふぅんと呟きながら、ベッドに腰をかけました。 「ごめん!ホントにごめん!お詫びに由良の髪纏めるの手伝わせて!」

2014-04-17 22:15:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…まぁ、いいけど…」 「ホント!?ありがとう!」 由良は心底呆れたような顔をしていました。でも、やらせてもらえるだけ、マシです。これで断られたら本当に居場所がありません。由良はベッドの端に座り、私を見ていました。 「…どうしたの?やってくれるなら、早く来てよ」

2014-04-17 22:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…えっと…、起こして下さい…」 …由良が目を覆いました。 「ああ…何で私、こんなのと…」 ブツブツ言いながら、由良は手を貸してくれました。細くて冷たい手。強く握ると折れてしまいそうです。そうして、私は由良の隣に腰を下ろしました。

2014-04-17 22:25:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「はい、じゃあお願いね」 由良が私にリボンを預け、私に背を向けました。そういえば、これをするのも久しぶり。由良の髪ってやっぱり綺麗ね。こんなに長いのに、髪の先端まで艶々。それに、とってもいい香りがします。 「…ちょっと、早くしてよ」 「あ、ごめん」

2014-04-17 22:30:26
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…由良の髪、そんなに好き…?」 「え…あっ…」 気が付くと、また手が止まっていました…。だって、すごい手触りいいんだもん…。 「…うん、好き…かな」 「…そう。でも、ちゃんとやってよね。それとも、最初から触るのが目的?」 「めめ、滅相もないです!」

2014-04-17 22:35:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…私に対して結構キツいけど、私は知っています。由良は本当に心を許した人にしか、髪を弄らせないってこと。だから、こうして由良の髪に触れていると、今でも私をそんな風に思ってくれてるんだって、嬉しく思います。…このまま抱きつきたいな…。怒らせちゃうのは目に見えてるけど…

2014-04-17 22:40:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

由良の髪を束ね、リボンを丁寧に巻いていきます。…もしかして、由良も今の私と同じことを考えてないかな、なんて期待している自分がいました。…可能性は、0じゃない…よね。…思い切って、言ってみることにしました。 「ねぇ、由良…私達さ、また…」

2014-04-17 22:45:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

そこまで言いかけたところで、由良が口を開きました。 「夕張の部屋が綺麗になったら、考えてあげる」 「うぐ…」 由良の意地悪い笑みが、目に映りました。 「あ…あれは…」 「せめて使わないものは捨てなさいよ。いつか部屋で生き埋めになるわよ?」

2014-04-17 22:50:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「そ…そんなに酷くないってば!」 「そうなの?じゃあ、今から部屋に行ってもいい?」 「…ごめんなさい」 また由良の溜息が聞こえてきました。うぅ…でも、こんなに言われていても、由良の髪は綺麗に纏め終わった私を誰か褒めて…。 「終わった?ありがとう。相変わらず、手先は器用ね」

2014-04-17 22:55:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

自分でも、綺麗に出来たと思います。久しぶりでも、意外と何とかなるものね。 「じゃあ、あと50分ね。頑張って」 「…ええ!?」 「誰が免除してあげるって言ったのよ。ベッドの上でいいから、ほら、正座」 由良に指示され、向かい合わせになって正座しました。…由良の犬になった気分…

2014-04-17 23:00:45
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…ねぇ、そんなに見ないで欲しいな、なんて…」 由良がさっきから、ずっと私の方を見てきます。さっきまでとは正反対…。堪らず目を逸らせていましたが、一瞬だけまた由良の方を見ると、バッチリ目が合いました。 「恥ずかしい?」 私の顔が赤くなってるの、わかってて言ってるでしょ…

2014-04-17 23:05:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「さっき夕張が言いかけたことだけど」 私の心臓が飛び跳ねました。 「由良のこと、そんなに好き?」 由良が下から覗き込むようにして、私に顔を近づけてきます。ちょ…ちょっと待ってぇ…!? 「あっ!?」 後ろに引こうと思ったら、再び足の痺れが私を襲いました。

2014-04-17 23:10:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

そのままベッドに仰向けに倒れ込みました。下がベッドで本当によかった…。 「…って、ちょっとちょっと…!?由良!?」 由良が私を組み伏せるように覆い被さって来ました。由良が、私を見下ろしています。私の体は完全に硬直していました…。 「ねぇ、由良のこと、そんなに好きなの?まだ」

2014-04-17 23:15:20
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「ま、まだも何も…私は…」 私は、フラれた側だもの…。というか、由良は一体何考えてるの…!?困惑する私を見て…由良が苦笑しながら言いました。 「…由良は夕張のこと、嫌い」 グサッと、私の心に何かが刺さりました…。いえ、わかってました…。でも、こうもはっきり言われると…あぁ…

2014-04-17 23:20:21
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「由良のスペースにどんどん機械置いていくし、言ってもゴメンゴメン言うばっかりで片付く気配ないし、むしろ増えていくし、夜中まで起きてるし、今日だって由良との約束忘れて、機械いじりに没頭してるし…大っ嫌い」 …ごめん、ごめんなさい…すみません…私のライフはもうゼロです…。

2014-04-17 23:25:21